[訂正あり]ひと月でリスナー50万人超えのバンドにAI疑惑、広報担当者がAI音楽生成プラットフォーム「Suno」の限定的使用を認める

明らかに実在しないバンドとみられる「Velvet Sundown」が、Spotifyでいきなり月間50万人以上のリスナーを獲得したことで注目されている。バンドの広報担当者で準メンバーを名乗るアンドリュー・フレロンは、ローリング・ストーン誌に、曲の制作にAI音楽生成プラットフォーム「Suno」を使用したことを認め、自らを「アート・ホークス(芸術的詐欺師)」 だと考えていると明かした。(7/9 記事下部コメントにて訂正あり。)
Velvet Sundownは、6月に2枚のアルバムをSpotify、Amazon Music、Apple Musicなどでリリース。これまで誰も聴いたことがなく、デジタルの足跡のようなものもなかったバンドが、1カ月に満たないうちにSpotifyで多くのリスナーを獲得したが、音楽、メンバーを含め、全てが生成AIによって作られた可能性が指摘されている。
同バンドはXの公式アカウントでAIの使用を強く否定し続けていたが、フレロンは「トローリング(挑発して注目を集める行為)というマーケティングだ」と説明。以前は誰も気にしていなかった自分たちが、今やこうしてローリング・ストーン誌のインタビューを受けていることを挙げ、「それって悪いこと?」と述べ、「われわれは今、偽物が本物のものより大きな影響力を持つ世界に生きている」と話した。
当初、AIは音楽のブレーンストーミングにのみ使用されたと主張。最終的に、少なくともいくつかの曲をSunoで生成し、Sunoのペルソナ機能で曲全体で一貫したボーカルを維持していることを認めた。Spotifyのリスナー拡大のため、プレイリスト操作を行なったかなどは、関与していないので答えられないとした。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「[訂正]報道元のローリングストーン誌が訂正記事を出したことを本日7/9に確認した。バンドの広報を名乗るフレロン氏はバンドと無関係であり、「デマを流した」とMediumに投稿。名前も偽名で、SNSで存在の希薄だったバンドの公式アカウントになりすましたと説明した。Velvet SundownのSpotifyのアカウントにリンクされているXにも「Sunoでバンドが音楽を制作したことを「確認」したフレロン氏はバンドとは無関係」という投稿があった。さらにストーン誌にXから「私たちのプロジェクトが引き起こす興味は理解しています。そして私たちは謎を解こうとしているわけではありません」とDMがあったという。ということで本記事を訂正してお詫びする。結局、Velvet Sundownの身元も確認が取れておらず、これで様相が明らかになったと確定した印象も無いので(Spotifyのバンドの公式バイオには「(このプロジェクトは)AI時代における著作権、アイデンティティ、そして音楽そのものの未来の境界を問い直す、継続的な芸術的挑発です」と記入された)、続報があればお伝えするつもりだ。」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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