ひと月でリスナー50万人超えのバンドにAI疑惑、広報担当者がAI音楽生成プラットフォーム「Suno」の限定的使用を認める

明らかに実在しないバンドとみられる「Velvet Sundown」が、Spotifyでいきなり月間50万人以上のリスナーを獲得したことで注目されている。バンドの広報担当者で準メンバーを名乗るアンドリュー・フレロンは、ローリング・ストーン誌に、曲の制作にAI音楽生成プラットフォーム「Suno」を使用したことを認め、自らを「アート・ホークス(芸術的詐欺師)」 だと考えていると明かした。
Velvet Sundownは、6月に2枚のアルバムをSpotify、Amazon Music、Apple Musicなどでリリース。これまで誰も聴いたことがなく、デジタルの足跡のようなものもなかったバンドが、1カ月に満たないうちにSpotifyで多くのリスナーを獲得したが、音楽、メンバーを含め、全てが生成AIによって作られた可能性が指摘されている。
同バンドはXの公式アカウントでAIの使用を強く否定し続けていたが、フレロンは「トローリング(挑発して注目を集める行為)というマーケティングだ」と説明。以前は誰も気にしていなかった自分たちが、今やこうしてローリング・ストーン誌のインタビューを受けていることを挙げ、「それって悪いこと?」と述べ、「われわれは今、偽物が本物のものより大きな影響力を持つ世界に生きている」と話した。
当初、AIは音楽のブレーンストーミングにのみ使用されたと主張。最終的に、少なくともいくつかの曲をSunoで生成し、Sunoのペルソナ機能で曲全体で一貫したボーカルを維持していることを認めた。Spotifyのリスナー拡大のため、プレイリスト操作を行なったかなどは、関与していないので答えられないとした。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「Spotifyでいきなり月間50万リスナー(今見たら100万超え)を獲得した謎のバンドVelvet Sundownが、実はアルバム全曲を生成AIのSunoを活用して(プロンプトでまるっと生成したのではなく「活用」)作っていたことが話題になっている。元々、音楽で生成AIが話題になったのは2023年4月、生成AIでドレイクとザ・ウィークエンドの架空のコラボ曲「ハート・オン・マイ・スリーヴ」がSNSでバズったのが始まりだったが(拙著「AIが音楽を変える日」連載第0回参照)、その後、生成AIの楽曲は大量に音楽サブスクにアップロードされるもそれを再生するのはクリックファーム(AI等で大量に再生して再生使用料を掠め取る集団)で、生成AIで実際に人気を取るアーティストが出てこなかった。昨年にはオーストラリアでAIが司会の番組放送を流していたラジオ局があったが、リスナーは半年間、AIと全く気づかず議論を巻き起こしている」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
広告・取材掲載