AI司会の番組放送、半年間リスナーはAIと気づかず

オーストラリアン・ラジオ・ネットワーク(ARN)のラジオ局CADAが、AIホストによるラジオ番組の制作を、開示せずに半年も継続していたとして批判を受けている。ただ、オーストラリア通信メディア局によると、現時点では放送コンテンツにおけるAIの使用について特別な制限はなく、その使用を公表する義務もない。オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙などが伝えた。
ヒップホップ、R&B、ポップスを4時間にわたって流すラジオ番組「Workdays with Thy」では、AIが生成した声と実在の人物の似顔絵が使われている。CADAのウェブサイトも番組自体も、司会者(Thy)がAIであることを公表していない。
この番組の所有者であるARNメディアは、AIホストの声と似顔絵は同社の財務部門に所属する実在の従業員をモデルにしていると説明。声の生成にはElevenLabs(イレブンラボ)のAI技術が使われた。
2024年11月に放送を開始したこの番組は、少なくとも7万2,000人にリーチしているとみられる。
オーストラリア声優協会のテレサ・リム副会長は、ARNメディアがAIホストの起用を公表しなかったことを非難。AI表示に関する法整備の必要性を示す事例だと述べた。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「AI司会の番組放送、半年間リスナーはAIと気づかず、「AIだと公開すべきだった」とラジオ局が批判を浴びる事態がオーストラリアで起きている。番組はヒップホップやポップスを中心に流すラジオ番組で、実在の人物のイラストがアイコンに使われ、放送ではAIが生成した声がホストを務めた。いずれそういう時代が来るのはラジオ業界の人間なら予想していたと思うが、やってみたらリスナーから特に文句はなかったということになる。選曲もAIがやれる時代なのもご存知だと思うが、ラジオ広告の作成や広告代理店業もやれるAIもSpotifyが先日発表しており、ストリーミングに押され経営難に陥ったラジオ局がAIを導入して人件費を削減して生き延びようとする将来が予想される」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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