【BMSG特別インタビュー】MAZZEL・HANAのマネージャーへ訊く、躍進を続けるBMSGの秘密

アーティストの「才能を殺さないために。」そんな理念を掲げ、急成長を遂げる音楽業界のスタートアップ企業BMSG。今回は、MAZZEL・HANAの注目グループを担当する現場マネージャーであり、部門責任者でもある木田順平氏と那須多恵子氏に、現場のリアルとアーティストマネージャーという職業の本質について語ってもらった。マネジメントの仕事に求められるのは、決して「特別な才能」ではなく、現場で培われる後天的な気配りや熱意。そして、アーティストの夢を信じ抜く情熱だという。BMSGが持つ独自の組織文化や、アーティストとスタッフの強い信頼関係がどのように築かれているのか。エンタメの現場で働く人、これから業界を目指す人にとって、真のやりがいと覚悟に触れる貴重なインタビューとなっている。
(取材日:2025年5月8日 インタビュアー:Musicman編集長 榎本幹朗)
プロフィール
木田 順平(きだ・じゅんぺい)
1990年生まれ。︎︎大阪府出身。関西大学卒業
2013年に芸能プロダクションに新卒入社。アーティストマネージャーの基礎を経験したのちに、TVメディアの窓口・調整部署に移動し所属アーティストの出演情報の整理・分析・調整の業務に従事。その後再びアーティストマネージャーとしてソロおよびグループアーティストのマネージャーを歴任。
2023年にBMSG入社。現在はMAZZELのチーフマネージャー兼担当部門の部長としてアーティストおよびスタッフのマネジメントに従事。
那須 多恵子(なす・たえこ)
1989年生まれ。︎︎東京都出身。早稲田大学卒業
2016年から5年間、韓国グループの日本マネジメントを担当。アーティスト来日時のスケジュール管理やプロモーション活動、イベント企画などの業務に従事。
その後芸能プロダクションに転職後、グループアーティストのマネージャーを歴任。スケジュール管理・現場帯同、媒体・イベントへの出演交渉のほか、リーダーとしてマネジメントスタッフの育成管理に従事。
2024年にBMSG入社。現在はHANAの担当部門の部長としてアーティストおよびスタッフのマネジメントに従事。
ジレンマを抱えながらBMSGへ入社
──まず自己紹介から。木田さんはBMSGに入社して何年ですか?
木田:2年と3ヶ月くらいですね。
──マネジメント部長として入社?
木田:最初は役職はなく現場のマネージャーとして入社しました。当時会社としてどう考えていたのかは分からないですが、そこから3、4ヶ月くらいで部長職に就きました。
──前職でもアーティストマネージャーを?
木田:はい。新卒から芸能プロダクションで11年間、 マネージャーとして働いていました。
──今、おいくつですか?
木田:今年で35歳になります。
──働き盛りですね。働き過ぎというのはありますか?
木田:日々一生懸命やっています(笑)。
──(笑)。次に、那須さんはBMSGに入社して何年ですか?
那須:2024年4月なので1年と1ヶ月です。
──BMSGは設立5年目でとても勢いがある会社ですね。創業メンバーは何名?
木田・那須:最初は日髙が一人でやっていました。現在は85名くらいです。
──音楽業界の会社としてはかなり大きくなってきましたね。先週、カンファレンス※を拝見しました。
※(BMSG、ビジネスカンファレンスで「GROWTH5」発表 )
木田・那須:G&Gですね(Greeting & Gathering ’25)
──印象で恐縮ですが、しっかりした方々がスタッフとして集まっていると改めて感じました。Musicmanでもアーティストニュースを日々出していますが、BMSG関連のニュースは反響が本当にすごいんです。それはアーティストのパワーが1番大事なのかもしれないですけど、それをサポートしているスタッフの方々にずっと興味がありました。那須さんは、元はどちらの会社に?
那須:前職は韓国系の芸能プロダクションにいました。
──やはりマネージャーで。
那須:はい。
──新卒で業界に入ってからマネージャーをずっと?
那須:新卒時はもうひとつ前の会社にいて、韓国アーティストの日本マネジメントを4年半ほど。当時からスケジュールを調整したり、現場に帯同するという仕事をしていたので、それもマネージャーとカウントするなら最初からやっていますね。
──那須さんがBMSGに入社するきっかけは?
那須:会社を辞めて、マネージャーの仕事をずっと続けるかどうかを1回しっかりと考えるタイミングがありました。
──どういったタイミングで?
那須:本当に働きすぎたんですよ(笑)。いろんなことが重なって。アーティストがやりたいことと、やらせてあげられることの間で悩むことがあったり、そういうジレンマが続いたこともあって、一度立ち止まってみました。
その後、マネージャーを本当に続けるべきか、辞めた後も何ヶ月か考えていました。そしたら、またやりたい気持ちが湧いてきたんです。でもやっぱり続けたいなと考えていた時に、ちょうど日髙の著書や、過度なCD特典商法で廃棄されるプラスチックへの問題提起に対する提言を読む機会がありました。
その時に「この会社だったらアーティストにやらせてあげたかったことができるかもしれない」と感じて「もう一回トライしてみよう」という気持ちになり、応募しました。
──なるほど。次に木田さんがBMSGに入社したきっかけは?
木田:具体的に転職を考えていたわけではありませんでした。そんな中、知人からBMSGがマネージャーを募集をしていると聞き、会社について調べていくうちに「日本の芸能界特有のルールを変えていきたい」という日髙の考えを知りました。マネージャーという仕事は会社とアーティストの狭間で葛藤を必ず経験すると思っていて、日髙が「アーティストの才能を殺さないために。」というスローガンを掲げているところにも、「そういう視点もあるんだ」と魅力を感じ、選考を受けることに決めました。
──日髙さんの志というか、そういうものに共感したのがきっかけ?
木田:共感もそうですし、何よりもリスペクトがありますね。
──日髙さんは10代でこの世界に入って色々と感じるところがあって、自分の後身たちを助けてあげたいという気持ちが熱いなと私も感じていました。入社して何かを変えられる予感は実現していますか?
木田:すぐに変えられるような簡単な話ではないので、その中でも葛藤みたいなところは少なからずありながら、日々やっています。日髙が一貫した考えを持って前に進んでいるところに、みんなで付いて行こうという気持ちで日々仕事に取り組んでいます。
自信を持ったコミュニケーションが取れるようになった
──会社とアーティストの関係においてBMSGならではの特徴というのは何か感じていますか?
那須:BMSGは社長の日髙自身がアーティストなので、他のアーティストの気持ちを分かった上でアドバイスができるんです。私はHANAを担当していますが、私たちはアーティストの相談に乗ったり共感したりはできても、アーティストという立場を100%理解した上で答えを出したりアドバイスすることが難しかったりします。そんなとき、日髙はアーティストとして、経営者として、会社としての答えを出せる。自身もアーティストであるため、嘘なく指導できる日髙の側で働けることで、今までマネジメントとして感じていたジレンマが少し無くなった気がします。
──木田さんにもお伺いします。BMSGに来てからアーティストと会社の間にある葛藤は変わっていきましたか?
木田:アーティストと経営は脳を使うところが違うというか、全く考え方や視点が違います。そんな中、日髙からはアーティスト目線、経営者目線どちらの視点も持った言葉をもらえるので、自信を持って担当アーティストとコミュニケーションができます。
また、日髙はこちらの「will」に対してもしっかり聞いてから答えを出してくれるので、一方的なトップダウンではなく、コミュニケーションがしっかり取れます。そういったところでも葛藤は少なくなりました。
──イベント(Greeting & Gathering ’25)でスタッフとアーティストの一体感を強く感じたのですが、その秘密はそうしたところにあるのかもしれませんね。
現在、85名前後のスタッフがいらっしゃいますが「こういう人が集まっている」「こんな人が活躍している」というのを教えてもらえますか?
木田:あくまで個人的な視点になりますが、日髙が掲げている会社の理念・目標に賛同している人たちが、集まっていますね。“BMSGism”のようなものは、全員の土台としてある気がします。なので、先ほどの“一体感“のようなものが自然と出てくるのかなと感じます。
次にこの会社で活躍している人はみんな真面目で、素直で、丁寧に仕事している。その印象が特に強いです。
──アーティストさんたちと日髙さんからもそうした印象を感じましたが、やっぱりスタッフのみなさんもそういった方々なんですね。那須さんにもお伺いします。内から見てBMSGのスタッフの印象は?
那須:エンタメが本当に好きな人が集まっています。木田や私は前職からマネージャーをやり続けていますが、全く違う畑から来る方もいます。だけど共通しているのは「エンタメに救われた」という気持ちを持っていて、今度はそれを提供する一員になりたいという気持ちが強い人たちが集まっているところですね。
そういった同じ熱量を持った人たちと日々働けるのは単純に楽しいですし、日髙が一番熱いですが、そこに共感している人たちの集まりなので、熱い気持ちを持った人が多いです。
一番のエネルギー源はアーティストがステージに立っている姿、それを観ているファンの顔
──BMSGはファンのみなさんも熱い印象があります。これはエンタメを作っている人が全員目指しているとは思いますが、なかなか作れるものではないですよね。HANAさんのチームは何名くらい?
那須:今は5名で動かしています。スケジュールを決めるのは私ですが、メンバーのケアは全員でやりますし、必ずこの役割というものは決まっていません。みんなで協力し合って仕事をしています。
──那須さんはマネジメント4部の部長。木田さんは3部の部長ということですが、3部と4部で違いがありますか?
木田:マネジメントというところで変わりはないんですが、那須と僕でもやり方は違うと思うので「マネージャーに正解はない」と思っています。
──「正解がない」というのは?
木田:最終的なゴールは「担当アーティストにいい景色を見せてあげたい」とか「幸せになってほしい」というところだと思うんですが、それまでのプロセスは違うと思うんです。どう組んでいけばそこに辿り着けるのか、というのは人それぞれ考え方が違うので、それも正解であるという意味になります。
──なるほど。那須さんから見て、木田さんのお仕事はどう映っていますか?
那須:マネジメントは現場仕事が多いので、ふだんは週1で実施している責任者会議くらいでしか会わないんですが「忙しそうだな」と思っていつも見ています。すごく真面目な方で、自分がおちゃらけている分、余計に「みなさん、ちゃんとしているな。ああならないといけないのにな」と思いながら見ています。(笑)。
──木田さんから見て那須さんはどんな印象?
木田:同じ様に会う機会が少ないので、どういう仕事の進め方をしているのか詳しくはわかっていないですが、オフィスで見かけた時は、すごく元気で笑い声が響いているイメージがあります。「ポジティブで明るい方だな」という印象ですね。
──「元気で明るい」というお話しが出ましたが、外から見ていると、マネージャーってやっぱり大変なイメージがあるのですが、どこからそのエネルギーが湧いてくるのですか?
那須:有観客で1回公演をする度に大変さを忘れちゃうんです。マネージャーの仕事は準備8割で、例えば公演の場合、実際の公演までいろんな人とのコミュニケーションがあります。HANAで言うと、ちゃんみなさんとも日髙とも何度も意見交換をします。色々な方が関わっている分、大変なことも多いのですが、HANAがいざステージに上がって「ワーッ」っていう歓声が聞こえた瞬間に全部忘れるんです。それで、エネルギー補給してまた元気になっての繰り返しですね。
でも、基本的にエンタメは作っている人が楽しくないと見ている人も楽しくないと思っているので、大変な中でも楽しめる方法は常に模索しています。
HANAはレーベルがソニーですが、ソニーのA&Rにもすごく仲良くしてもらっていて、一緒に夢を語って、それでも実現しなかったことがあった時は、「ラーメンでも食べるか」って一緒にリセットして。そういう繰り返しで保っています(笑)。
──少しわかる気がします。一つのものをまとめあげて、終わって騒いで、次へ行こうと。木田さんは、仕事で何がエネルギー源になっていますか?
木田:やっぱりアーティストがステージに立っている姿や、それを見ているファンの方々の顔が一番のエネルギー源です。事前準備が大変ではあるんですが、それを見ると、やっぱり楽しい。「一生懸命作ったものが世に出ている」という快感のようなものは土台としてある気がします。那須と一緒で、何かうまくいかないことがあったら、好きなものを食べてリセットします(笑)。
──エンタメが楽しいっていうのはもちろんですが、切り替えられるというのも大事ですよね。「やり切った、次いこう」みたいなものがあるというか。
BMSGならではのマネジメント体制というのはありますか?
木田:一番感じるのは、日髙が掲げている「才能を殺さない。」みたいなところで、これはアーティストに向けた言葉ですが、裏を返せばスタッフにも向けられている言葉だと思っています。熱意と、ロジックを持って、チャレンジしたいということを伝えると、会社としてチャレンジを手伝ってくれる点は、この会社ならではだと感じます。
──それは恵まれた環境かもしれません。新しいことを提案しても、すぐに「無理でしょう」となってしまう会社もありますからね。那須さんからも、「この会社ならでは」というのを教えて下さい。
那須:一番感じているのは、「芸能のルールより社会の常識」をすごく大事にしている会社というところです。「芸能界ってこういうものだから」で片付けられてしまい、できなかったこと、言えなかったことがたくさんあったなか、そういったことがないので風通しの良い環境でのマネジメント体制が作れています。
周りを見て、気づける人がどんどん成長していく仕事
──ここからは、マネージャーの具体的な日々のお仕事について。
木田:メインは現場の帯同です。いかにアーティストや、やり取りしている先方に、気持ち良く仕事に取り組んでもらうかの環境作りがメインになりますね。
那須:準備8割なので、現場に行くまでの準備が大事になってきますが、もちろん実際に現場に入ってからの時間の管理も大事です。そして、気を回すのがマネージャーの仕事です。周りを見て、気付ける人がどんどん成長していく仕事だとも思います。
──先読みして段取りする力ですね。ところでアーティストの才能が一番活きる形にするのって気の遣い方が特殊というか、単に面倒見が良いというのと少し違う気がするのですが、その辺りはいかがでしょうか?
木田:アーティストもいろんな人がいますが、どのアーティストも人間なので、波はあります。そこをいかにストレスフリーに、気持ち良く、準備の段階を作れるかで、パフォーマンスが変わってくるんだと思っています。コミュニケーション1つでポジティブにもネガティブにもなったりすることもあるので、話すタイミングに気を配るとか、そのくらい細かいことも入ってきます。
那須:HANAに関しては、オーディションが終わってすぐにデビューして、急にいわゆるスターになったわけです。社会人経験すらない中で、本人たちを褒めて成長させることも仕事ですが、間違っていることは間違っていると注意することこそ、私たちにしかできない仕事だと思っています。
例えば、HANAには「楽屋は必ず綺麗に使う」という絶対的なルールがあります。あとは当たり前ですが、挨拶です。気を抜くと段々としなくなっていくのが人間なので、逆にとても厳しくしています。いつかHANAが一人立ちすることがあっても、一人の人間として恥ずかしくない人でいて欲しいな、と言う願いを込めています。
──木田さんもそういう場面はあるのですか?
木田:ありますね。人として大事な部分を伝えないと、なぁなぁになってきてしまうことはあるので、注意という言い方が正しいかはわからないですが、ちゃんと言うことは言うようにしています。
──そういうのは、どのマネージャーでも大事にしていること?
那須:会社によるとは思いますが、BMSGはそういったことを特に大事にしています。私たちも人間なので、叱ったり、否定的なことをいうのはすごく嫌なんです。でも、最終的にこれは何のためなんだっけ、というのを考えた時に、彼ら彼女らのためだったりするので。
──アーティストさんからどんな相談を受けますか?
木田:MAZZELは、デビューして1年経ったくらいから、やってみたい楽曲について、MVについてなどクリエイティブに関する相談が出てきました。デビューして1年は右も左も分からない中で、目の前にある仕事をこなすことに精一杯だったと思うんですが、流れや動きがわかってきた時に、「will」のようなものが出てきて、そういった相談が増えたタイミングでした。
那須:HANAはまだクリエイティブに関する質問はないというか、まだそれどころではないと思います。また、クリエイティブに関しては、全てちゃんみなさんが担っているので、みんなそれを信頼していて、ちゃんみなさんの期待に応えたいと思っています。衣装に関してなどは事前に本人たちの希望を聞くようにしています。
ただ、今までと同じような過ごし方ができないことも多いので、そういう悩みは出てくるんだろうなと思っています。
現場をこなす中で、後天的に身につくスキルの方が重要
──お伺いしていて「とてもやりがいのある仕事なんだな」と感じました。このマネジメントという仕事はどういう人が向いていると感じますか? 特に「BMSGで働くとしたら」というところでお聞きしたいです。
木田:個人的な意見になりますが、マネジメントの仕事って、先天的にスキルを持っている人というよりかは、現場で仕事をしていく中で、後天的に身につくスキルの方が重要だと思います。元気があって、素直で、仕事に対して柔軟に向き合えるというところを、面接させていただく際も特に重要視しています。
──前職がマネージャーだからプラスというよりも、持っている素地の方が大事?
木田:もちろん経歴があるというのは、仕事の流れや段取りを分かっているという点で強みには変わりありません。ただ、現場に帯同していくうちに、そういったことは身についてきます。なので、素地が大事なのかなと感じています。
──那須さんはいかがでしょう。どういう方と一緒に働きたいですか?
那須:同じマネジメントでも、人によって様々な経験があるんだと感じています。「マネージャーをずっとやってきました」という方でも「これはやってきている」「これはやってきていない」というのはあるので「日々、学びだ」と思いますね。会社によってやる仕事の範囲が違うので、特に「これができないとダメ」というのはないです。ただ、エンタメが好きな方が一番だなっていうのと、周りが見られるっていうのが一番の強みにはなると思います。
「アーティストに対してなんでもやってあげる」という訳ではないですが、「これがあったらきっと助かるんだろうな」ということを実際に行動に移せる人はすごく向いていると感じます。一言で言うと「気持ちのいい環境作り」ができるか。そこが非常に大事になってきます。
──世間一般で言う「お世話好きな人」とは違う?
那須:そういう人も向いているとは思いますけど、アーティストは大事なチームメイトであり、パートナーではありますが、家族でも友達でもないので、その関係性を理解できることが大事になってくるかと思います。そこの線引きができないと、自分が一番辛くなってしまうんですよ。
ある程度「お世話好きな人」であり、プラスでその関係性を理解できるか、アーティストをちゃんとアーティストとして見られるかどうか、が大事になってくると思います。
木田:難しいですよね。上手く口では説明できないですが・・・(笑)。
那須:一番難しいところかもしれないです。
──アーティストをアーティストとして扱うのが難しいっていうことですか?
木田:距離感の保ち方というか、頭では分かっているんですが、一緒にいるとどうしても感情が入ってきてしまうので。それこそ、毎日顔を合わせていて、家族や友達より会う頻度が高くなる。言葉にすることが難しいですが、甘やかすことと、教育とのバランスとでも言うのでしょうか。私たちも人間なので本来、言いにくいことは言いたくないんですよ。そこのバランスの取り方が難しいというニュアンスかなと思います。
那須:すごく難しい。やっぱり情が入ってしまうんですよ。
──その葛藤って難しいですが、大切にしておきたい部分ですよね。
木田・那須:そうですね。バランスがすごく難しいですが、完全に割り切るという訳ではないところでしょうか。
ここ1、2年で会社として大きく変化したタイミング
──ちょうどBMSGは5周年だと思いますが、入社した時から「こういう風に変わってきた」というのがあれば教えて下さい。
木田:私が入社した時の社員20名程度から4、5倍に増えて、いい意味で会社らしくなりました。以前は部署を兼任している責任者が多かったのですが、各部署に責任者が立ってチームとして機能しているので、そういった意味ではここ1、2年ですごく変わりました。
──「会社らしくなった」というのは、部署が増えたり会議をする機会が増えたとかそういうこと?
木田:それこそ人事チームができたり、CSや法務など今まで無かったポジションが生まれて、細かいところまで会社組織としての機能が出来上がってきたというところです。
──マネージャーと聞くと、特殊な仕事のように聞こえる人もいると思いますが、集まったときはどんな会議をしているのですか?
那須:とは言っても、ごく一般的な会議ですね。
木田:アジェンダを作って、アジェンダ通りに進行するというような。
──「これはエンタメ業界ならでは」というようなものは?
木田:ブレストが一番当てはまる気がします。「こういうことやったら楽しいかも」というレベルでアイデア出しをします。どこの会社も企画をする部署は同じ気もしますが、幅が広いというか、いろんなところにアイデアを広げられるので、そこが一番エンタメ業界らしい気がします。
──那須さんは、HANAさんを担当されていますが、唯一の女性グループで、一般的な会社で当てはめるならば新規事業のようなものかと思いますが、どういう経緯で任されたんでしょうか?
那須:「No No Girls」からずっとやってきて、入ってすぐにオーディションが始まって、気付いたら「いま」という感覚です。ただ、会社側としては採用の時から、HANAを担当するイメージで私を採用したんだと思います。
私にとっても女性のマネジメントは初めての試みでもあるんです。実は「男性のマネジメントの方が向いているのかな」と感じていたところもあり、「女性のマネジメントができるかな」と正直、少し不安ではありました。
──やってみて、女性メンバーのマネジメントはやっぱり大変でしたか?
那須:それが、すごく楽しいんですよ(笑)。もちろん大前提として、メンバーが素晴らしいというのはありますが、オーディションからずっとやってきたのもあり、みんなともすごく話しやすいですし、率直に楽しいんです。男性のマネジメントとは違った楽しさも感じています。
アーティストの夢を実現するためのマインドとは
──募集職種について教えて下さい。
木田:対象部門は全職種に近いです。職種は違えど、目的や目標のようなものは全ての職種で共通です。アーティストの成長や、新しい景色を見ていきたいというところでしょうか。ただ、その目的に対しての道程や方法は違うので、部門とその人の適正が合う形で配属となると思います。
ただし、土台として絶対に必要なものとしてBMSGの考え方、理念に対する共感です。そして、エンタメが好きというものがあった上で、その人自身のキャラクターや、キャリアを総合的に見て、選考が進んでいきます。
──会社として積極的に募集を進めているタイミングですか?
那須:はい。既存のアーティストの担当はもちろんですが、新たに「THE LAST PIECE」が進んでいます。他の動きも今後、必ず出てきます。
──今いるアーティストが新しいステージに入っていくし、新しいアーティストのプロジェクトもどんどん進んでいるんですね。
木田:人が少なくて足元ばかり見て目線を上げられないタイミングが続くと、新しいことに目を向けられないというか。リソースをしっかりと補充するということが、会社にとっても非常に重要ですし、マネージャーの採用が最優先ではあります。マネージャーだけは絶対に外注できませんので。
──「才能を殺さないために。」というスローガンについてもう少し。アーティストの理想を達成していくにあたり、どんな心がけが必要ですか?
木田:「気合い・根性・パッション」です(笑)。似たような言葉のように感じるかもしれませんが、ニュアンスは少し違うと思っています。「気合い」は、アーティストの可能性を信じて「絶対にこの人たちといい景色を見るんだ」と信じて疑わないこと。「根性」は嫌なこと、辛いことがあっても、決して折れない心。「パッション」は、やっぱり愛と熱量を持って、その人のために、ということで行動する。
──それはカンファレンス(Greeting & Gathering ’25)ですごく感じていました。日髙社長、スタッフ、アーティストのみなさんがそうしたものを体現していると感じていたので、まさにその通りなのではないでしょうか。
木田:ありがとうございます。
──やる気というのは、どこかで切れるじゃないですか。だけど「これを実現したいんだ」という信念や「こういう景色を一緒に見たい」っていう愛情、そういうものって、疲れていてもどこかで復活してくるものですよね。実際は大変な事がたくさんある中、それでも続くというのは、そういうものがあるのかなと感じていました。那須さんはいかがですか?
那須:私たちが、彼女、彼らのファンであるというところでしょうか。そのままの意味というよりは、彼女、彼らのいいところを一番近くで見られている人たちっていうのが、私たちなので。それを信じていますし。才能を一番に信じている人たちとして、いつでもアーティストの素晴らしい点を恥ずかしがらずに言えるようにしていたいなとは思っています。
私たちマネージャーにとって、売り込みというのが一番の仕事ではあると思うんですが、それは「愛」がないと絶対にできないんです。そして、理解していないとできません。
適当に仕事していたって、自分の中に入ってこないですよね。なので、「一番のファンでいよう」ということは常に意識しています。これは、私だけではなくて、HANAのチームの人たちは、今でもHANAが歌うと感動して泣く。「毎日見てるよね(笑)!?なんで(笑)!?」っていう(笑)。
でも、そういう「熱意」や「愛」というのは、彼女たちを成長させるとも思いますし、彼女たちの自信にも繋がる。私たちが好きでいて、味方でいることが、何よりも彼女たちの力になる。それで、ファンの方々や、見てくれている人たちに恩返しする環境を作れるものだとも思っているので、そこは忘れないようにしたいです。
それと同時に、この気持ちはマネージャーだけではなく、MD担当、SNS担当、FC担当の方も含めた、BMSGのみんながアーティストに対して持っているものだとも思います。もちろん、このアーティストへの「愛」は日髙が一番持っているので。それを日々普通に見ている私たちは、親の背中を見て育つといった言葉もありますが、その日髙をリスペクトして、かっこいいな、と思って仕事をしています。なので、自分の中にも自然と身についてくるんです。そういう全てがいい循環になっているんだと思います。
──難しい質問かなと思っていたのですが、おふたりの回答から「BMSGism」をすごく感じました。
那須:一番忘れないようにしたいことですし、それと同時に、チームのメンバーにも忘れてほしくないと思っていることです。
──今後の目標や描いているキャリア像をお聞きしてもいいでしょうか?
木田:今はMAZZELと一緒に成長して、ちゃんとステージアップしていくことが目標で、自分のキャリアとしてちゃんとは考えられていないというのが正直なところです。
──とにかく、今を全力でやっている?
木田:そうですね。
──那須さんは?
那須:私はここに入るときに、「プロデューシングもいつかやってみたい」みたいなことを言って入ったんです。ですが、ネガティブな意味ではなく、私がやるべきことではないなっていうことに気が付きました。ちゃんみなさんや日髙はアーティストであって、その経験が素晴らしいものを作っていると思うので、それは私にはできないなと感じたんです。
私は、いただいたこのポジションで能力を発揮していきたいと思っています。まずは、本当に丁寧に仕事をしていきたいなというのは一番思っていますし、目標でもあります。正直、今は目の前のことでいっぱいいっぱいなので、そういうことを1つ1つ乗り越えていった先に、気付いたら、もっとHANAがすごくなっているだとか、BMSGに色んな人がいるっていう状態であったらいいなと思っています。
──最後に、この記事を読んでいる方へ伝えたいことは?
木田:「芸能のルールよりも社会の常識」のような普通っぽいところが、BMSGの一つの大きな特徴になるのかなとも感じています。変な意味ではなくて、今いる環境に疑問を感じていたり、本当はもっとこうしていきたい、という気持ちを持った方。そういう方にこの記事が届けばいいなと思っています。
──何かしら自分の意思や、やりたいことがある。だけど環境の要因だったりで、できずにいらっしゃる方へ?
那須:はい。その上で、BMSGの考え方とマッチする方にぜひ届いてほしいです。うちの会社もまだ完璧ではありません。理想を語って、そこに向けて動いている、という状況なので。叶っているという状態ではないので、多少ギャップはあるのかもしれません。ですが、少なくとも現状に疑問や違和感を感じている方にこの記事が届いてほしいと感じています。
──エンタメなり音楽に愛情を持っていて、愛情があるからこそ「もどかしい。変えたい」という気持ちを持っている方?
木田:私や那須が抱えていた葛藤を持っている方であり、次の私たちのようなポジションを目指す方がマッチするんだと思います。働く中で感じている疑問や葛藤を乗り越えていく新しい環境としてBMSGを見てもらう。そういったところでしょうか。
──大袈裟かもしれないですが、革命のようなものを求めている方?
木田:「革命」のような業界を変えるみたいなところは目的としてではなく、結果としてあるものだと思っています。色んな形のアーティストがいる中で、BMSGはアーティストの才能を信じて、適切なサポートをしていく、というところでやっています。
新しい、特殊なことでバズるだとか、何か目立つといったところではない。今、本質的に正しいと思っていることや「この業界では正しいと思われているけど、それって本当かな?」っていうところも含めて。よく日髙も言っていることですが「エンタメは社会との設地面が広い」という特性があり、そこをしっかりと吸い上げられるような環境がBMSGなのではないかなと思っています。
──マネジメントという仕事のやりがい、そしてBMSGに集うアーティスト、ファン、スタッフみなさんの情熱の秘密が少し分かった気がします。まだ見ぬBMSGの新しい仲間にこの記事が届くことを私も願っております。本日はありがとうございました。
(了)
広告・取材掲載