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タイアップ5曲だと!?がらり、2ndフルアルバム『コントラスト』を語る リリース記念SPロング・インタビュー!

インタビュー スペシャルインタビュー

がらり「コントラスト」ジャケット写真

Musicmanが「音楽業界にぜひ知ってもらいたい」ニューカマーをお届けする番組、Nusicman。2026年1月16日金曜日にセカンドフルアルバム『コントラスト』をリリースされる、がらりさんにSOUND ATELIERへお越しいただきました。

(収録日:2025年12月25日 弊社スタジオSOUND ATELIERにて)

激動の1年を振り返る

Kenta:この1年は激動の年だったのではないでしょうか。

がらり:本当にいろいろな仕事をさせていただいて、実りある1年でした。

Kenta:前回のファーストアルバム『手のひら望遠鏡』から約1年2か月。この1年は他アーティストへの楽曲提供タイアップの連続Spotifyのバイラルトップ50チャートインなど、環境が激変したと思います。セカンドアルバム『コントラスト』を完成させて、率直にどのようなお気持ちでしょうか。

がらり:このセカンドアルバム『コントラスト』は自分の中で挑戦が詰まった作品です。『手のひら望遠鏡』の時は初期衝動を抱えながら組み上げていく形でしたが、今回はタイアップも多くいただき、その一つ一つのオーダーをいかに昇華していくか、自分の世界観と掛け合わせた時にどういうことが伝えられるのか。両方を100%叶えながら新しいものを作るという挑戦が濃密に詰まっています。1年かけて試行錯誤を繰り返しながら、何とか完成にこぎつけることができて、ホッとしています。

Kenta:『コントラスト』を全曲視聴しましたが、タイアップの曲とそれ以外の曲はキャラクターが異なるように感じました。企業イメージやコンセプトにアジャストしていく面も垣間見えた作品です。

がらり:僕の考え方として、タイアップとなると楽曲のメイン視聴者はタイアップ先のターゲット層です。ウェブCMならそのCMがターゲットにしている層、ドラマならドラマを見る人。その時間帯や視聴層の人が何を求めているのか、そこに向けてコミットしていくのが一番大事だと思っています。対象となる層が曲によって違うので、刺そうとしている人、切り取っている感情も曲ごとに異なります。そういうものが現れた結果だと思います。

ファンとの向き合い方、制作姿勢の変化

Kenta:2025年はまさにがらりさんの音楽がさらに世間に見つかった1年だったのではないでしょうか。TikTokでコツコツと努力されている様子を見ておりまして、コメントについては前回「結構返す方だ」とおっしゃっていて、細かく返されているのも拝見しています。ご自身の中で生活や音楽制作に向き合う姿勢に変化は出てきましたか。

がらり:一つ言えるのは、自分の中の燃えるものをぶつけるだけでなく、お客さんがどう受け取るのか、商品として自分がどう受け取られているのかを気にするようになったと思います。『手のひら望遠鏡』という自己紹介的なアルバムを終えたからこそ、より一層その方向にシフトできるようになりました。一つこういうアルバムがあるからこそ、もっと受け取りやすいもの、もしくは逆にすごく攻めたもの、両方もっと幅広く作っていいのだと思えるようになりました。

1曲目「うつろ」のピアノについて

Kenta:アルバム1曲目の「うつろ」について。ピアノの音色は、がらりさんの演奏ですか。それともJIN INOUEさんですか。

がらり:スタインウェイのピアノを使用した音色で、JIN INOUEさんに弾いていただいています。イントロは僕がお渡ししたフレーズを弾いてもらいました。

Kenta:なぜご自身でなかったのか、私はその決断が素晴らしいと思いました。

がらり:プロの方が弾いた方が絶対にいいからです。イントロだけなら僕も似たように弾けるかもしれませんが、あの曲は頭の中ではピアノトリオのセッションをイメージしながら作りました。曲の中盤辺りのアンサンブルが重なっているところ、ピアノのコンピングの感じなど、ちゃんとジャズのフィールを出せる人は僕よりプロのピアニストの方が絶対的なので、一任しました。

Kenta:クリエイターとして判断が分かれる部分だと思いますが、職人に任せるという姿勢を見せられた形ですね。

がらり:もともとそういう考え方です。打ち込みで作っている部分は自分で調整しますが、人の手によってグルーヴ感を出すようなところは、一芸としてやっている人の方が超えられない壁があると思っています。餅は餅屋、ピアノはピアニスト。プロに弾いてもらった方がより良いものが生まれると判断しています。

Kenta:この曲の最初の音を聞いた瞬間に惹きつけられました。しかも6/8拍子ですね。

がらり:6/8拍子に入るまでは一旦テンポがない状態です。最初の方はコードネームをつけにくいようなもの、5度堆積和音と呼ばれる神秘的な和音から始まります。ベースは基本的にFで、そこにいろいろ重ねています。あのイントロは「心が崩壊する音」と思いながら作りました。

Kenta:「うつろ」という世界観について教えてください。

がらり:あの曲はアイデンティティの喪失、積み上げたものが崩れる瞬間、そういう空白に対して輪郭をつけようという曲です。それを表現するために一番いいイントロとなると、あの和音の力を借りるしかないと思い、あのイントロにしました。

Kenta:作曲者とプレイヤーの意思疎通がしっかりできて、あのイントロが作られているのですね。スタインウェイのクラシックな雰囲気のチューニングに、がらりさんの歌が乗る瞬間はゾクッとします。

がらり:そう受け取っていただけてありがたいです。

川谷絵音からの評価について

Kenta:川谷絵音さんの評価についてお聞きしたいと思います。前回のインタビュー直後だったと思いますが、関ジャムで川谷絵音さんが「Vaundyを初めて聞いたときのワクワク感に似ている」「2025年すごいことになる」と絶賛されていました。この言葉をどのように受け止められましたか。

がらり:素直にすごく驚き、そしてすごく嬉しかったです。川谷さんの音楽は大好きで、ゲスの極み乙女が最初の出会いでした。今もずっとポップの最前線をあらゆる角度で走られている方なので、このように受け取ってもらえるのだと感じました。番組内で言っていただいた言葉も、自分で個性だと思っている部分をそのまま評価してくださったように感じて、非常に嬉しかったです。

Kenta:その部分について教えていただけますか。

がらり:「午後二時の通り雨」を評価してくださり、その中でもBメロがびっくりするような展開で、自分のメロディーを持っているとおっしゃっていました。この「自分のメロディー」というのが、僕がどの曲でも一貫させようとしている部分です。僕はメロディの哲学がはっきりしていて、Aメロが始まったらBメロはこう行くべき、サビはこっちに行くべきという感覚が、曲の始まった段階である程度限定されます。美しい展開は決まっているという気持ちが僕の中にあります。

僕が選びがちなのは、みんなが忘れがちだけどこっちの方向もかっこいいよねというところ。ひとひねりがあって、耳に残りやすい上に、鼻歌だけで作曲するような人はたどり着かないであろうタイプのメロディーラインです。いろんな方法で作るから、こっちの道もあるしこっちの道もあるというのが分かっている。そこが強みだと思っています。いろんな可能性を持ちながら、面白い方向、一番映える方向、華やかだったり曲の中で言わんとしていることに寄り添うものを選択できるのが自分の面白いところです。その個性的な部分を拾っていただけたのが嬉しかったです。

Kenta:僕もがらりさんはメロディメーカーだと思います。すごくメロディを探している人だなと、聴いていて分かります。ただ、好きなアーティストにVaundyさんは入っていなかったような気もしますが。

がらり:Vaundyさんは、これを言われてから意識するようになりました。現状ランクとしては全然違うレイヤーにいらっしゃるような感じがしますが、すごい方だと思っています。

5曲のタイアップとポップスとしての新しさ

Kenta:今年は5曲のタイアップが決まる、すごい年となりました。川谷さんが評価したポップスとしての新しさを、今作ではどのように意識して制作されましたか。

がらり:今回のアルバムは特に、時代感を幅広く切り取れたと思います。古いジャズっぽいものから歌謡曲、近年っぽいミクスチャーの打ち込み音楽、ハイパーポップのようなフレーバーもある。音楽史の進化そのものが入ってしまったかもしれないぐらい幅広いです。

一曲一曲の新しさとして、僕というフィルターを通しているからこそ、一つ一つのジャンルに対して新しいメロディーが乗っかっている面白さがあります。それを一つのアルバムにまとめたことによって、こんな聴覚体験はしたことがないのではないかという面白さを埋め込めたと思っています。

Kenta:おっしゃる通りで、耳がいっぱいになります。ノリノリのトロピカルサマーのような曲、「透きとおる夏」があったり、浮遊感満載の「ZEROの時間旅行」など。システムエンジニア時代のロジカルな文学的な歌詞という一面も感じました。「At Parade」は現代的なアシッドな感じ、クラブミュージック的ですね。

がらり:あれはハウスという感じで、唯一の英語歌詞です。恋愛面でやらかしてしまったという世界観、振られる瞬間みたいなイメージです。

タイアップ楽曲の深掘り

「さあ乾杯!」ドラマ『晩酌の流儀4』エンディングテーマ

Kenta:14曲中5曲がタイアップという、非常に充実した内容です。それぞれの楽曲についてお聞きします。

まず「さあ乾杯!」ドラマ『晩酌の流儀4』のエンディングテーマです。前シーズンはオープニングでしたが、今回はエンディングへの起用となりました。楽曲の温度感をどのように変えたのでしょうか。また「仕事を終えた自分をねぎらう魔法の言葉」という歌詞には、元システムエンジニアとしての経験も反映されているのでしょうか。

がらり:オープニングからエンディングになったことで、このドラマは金曜の夜に放送されるので、視聴者は疲れて寝る前に見る。エンディングだから本当に寝る前の最後に聞こえてくる歌です。ドラマの内容としても、主人公の美幸が晩酌を楽しんで、その満足感の中でかかる音楽。栗山千明さんのナレーションが入りがちなところの裏でおそらく流れるだろうという前提がありました。

ウキウキワクワク感と、うまく解決して、あとは寝るだけという安心感と肯定感を意識しました。「よくできました」という歌詞から始まりますが、結局一番最後に言われたい言葉はこういうことかなと。「よくできました、今夜は何食べよう、誰より偉い私に贈るありがとう」。こういうことをテレビの向こうからでも言われると、絶対ホッとするのではないかと思いました。

ビート感については番組サイドからある程度アップテンポというリクエストがあり、自分の中で考えた結果、シャッフルビートがいい、ジャズっぽいものが似合うのではないかと思いました。急いでデモを書いたら一発でOKをもらえました。温度感としては、ハッピーにこれから始まるぞではなく、ハッピーエンドに向けての助走として聞いていただけるような雰囲気を意識しました。

Kenta前作はオープニングで「酔わせてよ今だけは」というフレーズがあり、来週から仕事があるという含みを感じました。今回エンディングという受け身の立場になったことで、テンポ感も含めてより安心させる優しい歌詞に変化していると気づきました。役割をよく考えて作られた曲だと納得しました。

がらり:Bメロに「がんばりの全部が報われなくても」という歌詞を入れましたが、こういうメッセージはエンディングの方が効くのではないかと思いました。嬉しかったのは、2番のBメロにもそういうフレーバーを入れていて、本当はここまで流れたらより良くなるなと思っていたところ、最終回で使ってくれたんです。全部を流していただいて、その言葉とともに物語の終盤の雰囲気としっかり重なっていました。機能しているという感じで、リンクしてほしいと思って作ったものがリンクしていて、すごく嬉しかったです。

「遠い空には」「ステラ」門出に立つ人への応援歌

Kenta:次にアルバム9曲目の「遠い空には」河合塾のCMに、13曲目の「ステラ」OStechのウェブCMに起用されています。受験生や新社会人といった門出に立つ人々への応援歌を2曲書かれていますが、彼らへ向けて言葉を綴る際に最も大切にした寄り添い方についてお聞かせください。

がらり:絶対に上から目線にしたくありませんでした。頭の中で響いてきた時に自然にその曲が力を与えるような、リスナーに対して「頑張れ頑張れ」ではなく「頑張れる気がする」という方向に持っていきたいと、どちらの曲も思って作りました。

「遠い空には」は河合塾のCMの雰囲気と、受験の大変さを意識しました。勉強もあるし、自分の限界にぶつかったり、それでも越えていかなければならない。遠い空を見つめて、向こうには何かある気がするから今は頑張らなきゃという、清濁併せ飲みながら頑張っていた受験生時代を思い出しながら、リアルに描こうとしました。当時の自分がこの曲を聴いた時に素直に受け止めてもらえるのではないかという気持ちです。

歌い方も気をつけていて、歌い上げないように、等身大の鼻歌のような、パワフルすぎない普段の話し言葉のような雰囲気を意識しながら歌いました。

Kenta:究極の寄り添いかもしれませんね。「遠い空には」は映画トップガンのAnthemのような抜け感があると感じました。

がらり:ミックスの力です。ガツンとくるところもありつつ、ぬくもりもずっとあって、ちょうどいい塩梅に仕上げられました。

Kenta:「ステラ」についてですが、ラテン語で星ですね。なぜこのタイトルにしたのでしょうか。

がらり:この曲で言いたいことを考えていた時に、新入社員の希望の見つけ方、どういうことに希望を持っていたかを思い出しました。希望を象徴する言葉が欲しくなり、朝焼けの何かと言いたいと思いました。朝焼けの星のようなもの。でも「星」だと文字が合わないし、キャッチーでもない。一工夫した星にあたる言葉を探しているうちにステラを見つけました。

Kenta:「照らす」という言葉にも引っかかりますね。

がらり:「照らす」「ステラ」、「闇を照らす朝焼けのステラ」という言葉遊びも兼ねています。実は中野サウステラというビルの名前がいいなと頭に残っていて、それが影響しています。

「Answer Me」「正体不明のLADY」ドラマ『AKIBA LOST』タイアップ

Kenta3曲目「Answer Me」と6曲目「正体不明のLADY」は、ドラマ『AKIBA LOST』のタイアップです。サスペンスゲームドラマということで、これまでの爽やかなタイアップ曲とは一線を画す緊張感を感じました。リード曲「正体不明のLADY」で表現したかったことについて教えてください。

がらり:「正体不明のLADY」はドラマの世界に寄り添いつつ、曲全体としては現代社会、今まさにネット上で起こっていること、人々が感じていること、世相を大いに反映したイメージの曲です。「正体不明のLADY」という言葉自体は匿名アイコンのイメージがあり、Xなどで炎上に首を突っ込んで一言を書いていく人のようなイメージを持ちながら作りました。

ドラマの中では神隠しが起こり、そこに引っ掛けている言葉でもあります。曲全体としては、いわゆる陰謀論にハマる人、ネット上の炎上、混乱した社会を描いています。ネット上だけで見ると世の中は本当にぐちゃぐちゃに見えてしまう。いろんな人がいろんなことを言っていて、本当に思っているのか分からないし、論理的なのか感覚なのかも曖昧。正体不明の言論がいっぱい飛び交う世界をそのまま入れ込んで、その中で世界を選んでいくしかないねという内容です。何が正解か分からないけど、混乱した世界の中の疾走感を入れています。

Kenta冒頭の3連のスラップベースが疾走感を象徴している気がします。かっこいいですね。

がらり:意外とああいうイントロは今まで作っていなかったと気づきました。

Kenta:アルバムを通して聴くと、1曲ごとにガラリと景色を変えてくると感じます。引き出しの多さ、まだ誰も聴いたことがないメロディーを常に探しているということが曲から伝わります。アーティストが最も悩むべきところでもあり、しんどいところでもあり、楽しいところでもあるのではないでしょうか。

がらり:一番ないがしろにしたくない部分です。

Kenta:この曲に関しては、Fukaseさん調のラップのように聴こえました。

がらり:それは意外です。あるかもしれません。

Kenta:メロディーの形や勢い、音作りの面でそう感じました。今回ハイファイな部分からローファイな部分を1曲の中で見せていることが多いと思います。「正体不明のLADY」は特にそうですね。

がらり:僕の中では「正体不明のLADY」は、洋楽のMAX、ハイパーポップ、モーニング娘。のような配合なんです。ベースラインの感じは、つんく♂さんがプロデュースしているかのようなアイドルソングのような絡みつき方を持ってきたり、歌もの洋楽のようなアンサンブルやコーラスの入れ方を入れつつ、間奏では新しい世界に行ってやろうという感じで大胆なビートチェンジがあったりします。

Kenta:アルバムを通してもカラフルなのに、1曲の中でも怒涛の展開が来ます。「正体不明のLADY」は2分台なのにこれだけ詰め込めるのがすごいですね。

がらり:頑張れば入れられるんです。

アルバム構成とコンセプト

Kenta:先行配信曲の「Question」から主題歌の「Answer Me」、そしてその先の「退屈な夜に」へと続く流れに、ストーリー的な仕掛けがあるのでしょうか。

がらり:ある程度あります。アルバム『コントラスト』は、気分の上がり下がり、心の明暗、心の浮き沈みをアルバムを通して体験できるようにしています。暗い気分になって明るい曲が来て、また暗い気分になる。暗いと明るいという単純な二項ではなく、様々な方向の軸があります。

人生は矛盾だらけで、アンビバレントな気持ちがどうしても交錯します。感情面でもそうだし、普通に生きているだけでも右に行きたいのに左に行ってしまったり、みんなが幸せになりたがっているのにみんなで不幸になっていたり。上下、左右、高さ、過去と現在、いろんな方向のコントラストがあり、それが曲の中で進む中にあります。タイトルでもクエスチョンからアンサーという形になっています。

明確に一人の主人公の気持ちが動いていくというよりは、人間の気持ちを並べた時にこう並べると一番コントラストが生まれるという、そういうものです。

Kenta:曲順も作った順番とは違うのではないかと予想しています。並べた時にたまたまこうなったのか、並べていくうちにつながりを見出したのか。問いかけが続いて、「Answer Me」でいろんなところに「正解はどっちだ」と問いかけていますね。

がらり:意図している部分と意図していない部分はありますが、2曲ごとのペアは結構意識しています。1・2曲目、3・4曲目、5・6曲目、7・8、9・10、11・12、13・14曲目が明確にコントラストになるようにしています。

1曲の中で昼と夜が来るような「透きとおる夏」と「ガラスの靴」、この2曲を真ん中に置きつつ、その前後で世界観が変わりながら、後半辺りの「さあ乾杯!」で第一部が終わって、コーダ的に後半が始まるような動きが全体としてはあります。

Kenta:コーダという楽譜の音楽用語が出てきましたね。華やかなエンディングを表現していますね。

 

なぜ『コントラスト』なのか

がらり:このアルバムで肝心なのは、ハッピーエンドにしたくないと思いながら作ったことです。最後の曲が「夢遊病」なのもそうで、「ステラ」で得た確信が「夢遊病」でためらいに変わるようなものです。『コントラスト』というコンセプトを持ってきたからには、人生の矛盾を全部受け入れた上で何とかしていこうよという形にしたかった。「いろいろあるけど大丈夫」という単純な話にしたくなくて、「いろいろあるな」というところで一つ置く。無責任にどうにかなるよと言うわけではなく、世の中って本当に大変ですねという共感を得ることを狙っています。そのための並びと、そのための言葉が続いています。

Kenta:すごいこだわりですね。これを聴いてからアルバムを聴くと全然聴き方が変わります。

がらり:光と影だし、コントラストという言葉自体は明暗を指しますが、僕の中ではこの『コントラスト』は感情のコントラスト、嬉しいと悲しいなど。例えば「うつろ」からの「逃避行」は喪失からの逃避という軸になっています。明確な白から黒以外にもコントラストを生むものはたくさんあります。「さあ乾杯!」の前が「遠い空には」で、学生と社会人という捉え方もできます。様々な角度でコントラストを生んでいます。

Kenta:ジャケット写真でもコントラストを生み出していますね。静と動というか、人々が行き交う交差点で一人佇む緑色の服を着たがらりさん。

がらり:がらりさんだけにピントが合っていて、周りはボケています。ここにも仕掛けがあります。そして交差点、横断歩道は白と黒のコントラストとともに歩くものですので、人生はそういうものですよねという、少しこじつけもありますが、そういうふうに受け取っていただければ。

トータルプロデュースへのこだわり

Kenta:今作でもSNSコンテンツなどご自身で手掛けられています。ジャケットは写真家の方に任せているということですが、楽曲制作だけでなく見せ方までトータルプロデュースし続けるのは、どのようなこだわりがあるからでしょうか。

がらり:消極的な答え方をすると、やらざるを得ないからやっている部分もあります。ただどうせ自分でやるなら、曲の歌詞や歌い方やアレンジが全部同じ方向に向かって作っているのと同じように、自分というコンテンツが目に触れた瞬間に生み出される気持ちも同じようなものにしたい。「ステラ」だったら希望を感じさせるような雰囲気をショート動画の中でも見せていきたいし、簡素なMVでも曲の中で示そうとしている何かに寄り添った映像表現を、自分のできる範囲で見つけていこうとしています。ざっくり言うと、真面目に作ろうということです。

Kenta:その真面目さが伝わって100万回再生に達しているわけですね。

がらり:ちゃんと伝わっているのだと思います。

Kenta:これをどんどん大きくしていく考えでしょうか。

がらり:大きくすることを狙わざるを得ません。SNSでの評価が現代のアーティストの人気の実情に良くも悪くも縛られつつあります。聴いている側の人もバズっているかどうかを見ていると痛いほど感じています。バズりこそ正義みたいな雰囲気はTikTokの中だけでなく、コンテンツを眺めている側やオファーする側の人もそういうところを気にしているようです。向き合い続けるしかありません。大きくしたいとかではなく、大きくしないと話にならないというレベルに来ている感覚があります。

Kenta:それはがらりさんにとって残念なことですか。

がらり:時代の雰囲気だと理解しています。アーティスト本人やそのアーティストを取り巻く人々の見せ方のセンスが、楽曲作り以上に、本人がどう受け取られるかというところまでプロデュースする必要がある。商品としてのアーティストという空気感が形成されて久しいです。悲しいというか、受け入れざるを得ない世の中です。変な言い方になりますが、人類が服を着始めて久しいように、服を着るのは当たり前です。それに近い形で、アーティストはSNSのコンテンツとしての見え方をコントロールするしかない。どう見られるかという目線を気にせざるを得ない状態だと理解しています。

新しいジャンルを作れた手応え

Kenta:好きなアーティストにガーシュウィン、YUI、フジファブリックまで挙げられていますが、今回のアルバムで自分にしかない新しいジャンルを作れたという手応えはありますか。

がらり:『手のひら望遠鏡』の時は、曲それぞれの中心に自分の言葉とメロディを掛け合わせて生まれてきたものがありました。今回のアルバムは詩先で作ったもの、曲先で作ったもの、ある程度アレンジを固めてからトップラインを乗せて作ったものなど、作るプロセス自体が広くなっています。いろんな作り方を試すことによって出てくるものに幅が出て、コントロールできる幅が広まりました。

自分にしかない新しいジャンルというより、アルバムとして昇華した時に、ここまでいろいろなもの、いろいろな概念、いろいろなサウンド感を提示できたことが手応えです。サウンド面だけでなく、例えば「ZEROの時間旅行」の中で話している内容は今まで歌われたことがないのではないかと思いますし、「うつろ」のような世界観も、ここまで落ちていく曲は歌詞の世界であまりなかったような気がします。作家的な面でも冒険ができたと思っています。

ファンへ向けて

Kenta:この『コントラスト』というアルバムを持って、どのような景色をファンの方に見せていきたいですか。

がらり:より開けた世界を見せたいです。タイアップもいただいている中ですが、それでもまだまだだと思っています。でもそのまだまだではない状態がいよいよ近づいているのではないかという感じがあります。もっとリアルな形でも皆様にお届けできたらいいなと思っています。

Kenta:ライブなどということでしょうか。

がらり:ここはちょっとクエスチョン(?)で。

Kenta:本日は、シンガーソングライターのがらりさんにお越しいただきました。ありがとうございました。

がらり:ありがとうございました。

▼2ndアルバム「コントラスト」YouTube再生リスト

 

▼前回のインタビュー・フル動画 (収録日:2025年12月25日 弊社スタジオSOUND ATELIERにて)

インタビュワー
久保健太(Kenta)
 
兵庫県神戸市出身のギタリスト、YouTuber、音楽業界サイトMusicman.co.jpのキュレーション番組「Nusicman」のメインVJ。
Charに憧れ、高校2年生の頃からギターを熱心に学び始める。他にJohn Mayer、Jeff Beck、Jimi Hendrixから影響を受けた。高校卒業後、レコーディングやラジオ出演、ミュージカルなど様々なイベントに参加。サポートギタリストとしてもインディーズからメジャー・シーンまで幅広く活動。2014年には小田和正FECBのギタリストである稲葉政裕の後押しを受け、東京へと活動の場を移し、著名ミュージシャンとの共演やセッション活動を行う。「Pop Guitarist – Kenta」「Kenta|Originals & Singing 」「Kenta|Guitar」の3つのYouTubeチャンネルを開設し、ギターレッスン、オリジナル楽曲制作や洋楽カバーの他、海外にも独自のアプローチを仕掛け、楽器ブランドやMusimanの動画制作者としても活動の場を広げている。

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