ユニバーサルのダウンタウン・ミュージック買収計画、EUが本格調査を開始も

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)による米ダウンタウン・ミュージック・ホールディングス(DMH)の買収計画について、EU(欧州連合)当局が本格調査に着手する可能性がある。予備調査で当局の懸念を払拭することができなかったため。複数の関係者の話を元に、ロイター通信が7月16日伝えた。
UMGのインディーズ音楽部門であるヴァージン・ミュージック・グループ(VMG)は昨年12月、7億7,500万ドル(約1,213億5,900万円)でDMHを買収することで合意したと発表。同社はB2Bディトリビューターの「FUGA」や、DIYアーティスト向けの「CD Baby」、音楽出版向け権利管理プラットフォーム「Songtrust」などの資産を保有している。
この買収計画を巡っては、かねて世界各地の独立系音楽業界団体が猛反発しており、欧州委員会はUMGが本社を置くオランダの要請を受け、今年4月に予備調査を開始。7月22日までの調査で、VMGは当局の懸念への対応策を提示することが求められていたが、これに応じなかったという。
本格調査に進んだ場合、11月22日ごろまでに判断が下される見通しだ。
報道について、VMGの広報担当者は、欧州委の決定が発表されていないためコメントはできないとしたが、当初からの2025年後半の取引完了予定に変更はないと述べた。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「TuneCoreのライバル、FUGAとCD Babyを傘下に持つ米ダウンタウン・ミュージックを世界最大のメジャーレーベル、ユニバーサルミュージック傘下のヴァージンが約1200億円で買収する予定だが、これに世界各地のインディーズ系音楽業界団体が猛反発しており、EU当局が4月から予備調査を開始したと4月にここでも記事化したが、今月(7月)までにヴァージンが当局の懸念に対応しなかったことから次の本格調査に入ることになりそうだ。かつて四大レーベルのEMIがソニーミュージックとユニバーサルミュージックに分割売却された際も、独禁法の観点から調査が入り、最終的にEU当局とアメリカ当局が承認した経緯がある。2012年にユニバがEMIのレーベル部門を、ソニーがEMIの音楽出版を買収で決まったが、ソニーは同年、ディストリビューターThe Orhchardも買収。ソニーの読み通りディストリビューター全盛の時代が近年到来し、ワーナーミュージックは昨年、TuneCoreを傘下に持つディストリビューター最大手のBelieve買収を試みるも失敗しているが、これはBelieveが上場株式を自社株買いして非上場化して防衛したのでEU当局は基本的には関わっていない。ダウンタウン傘下のFUGAは日本でスペースシャワーと合弁事業を展開している。時代の変遷を感じる流れだ」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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