ユニバーサル ミュージックの最高デジタル責任者「アーティスト向けAIツールで市場拡大を」 国連AIサミット

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)のエグゼクティブバイスプレジデント兼CDO(最高デジタル責任者)を務めるマイケル・ナッシュ氏が、ジュネーブで開催されたAIに関する国連最大のサミット「AI For Good」の基調講演を行なった。英国の音楽業界メディアMusic Weekが7月8日伝えた。
ナッシュ氏は「AIによる技術革新の範囲は前例のないものとなるかもしれないが、世界の文化を形成するのはアーティストだ」と述べ、自社の理念はアーティストを中心に話を進め、アーティストの権利と利益を守り、新たな創造と商業の機会を作り出すことだと説明。著作権は堅持されなければならないと強調し、一部のAI企業の反著作権の前提は「ひどく欠陥がある」と指摘した。
一方で、アーティストの手に新しいツールが渡ることで、マーケットが拡大するようなアプローチであるべきだと主張。「AIの革新は音楽文化をけん引し、そうすることでこの地球上の生活の質にさらに大きな利益をもたらすことができる」と述べた。
UMGはかねて、SoundLabs(ボイスクローン技術)やMoonvalley(動画生成技術)といった「倫理的」AIを開発する企業との提携を進めている。
明らかに「AIバンド」だとして世界的に報じられている「Velvet Sundown」の台頭については「全ての報道を通じた露出のおかげで、Spotifyで100万人のリスナーを獲得しているが、それでも同プラットフォームの上位1万組のアーティストに入ることはできない」とコメント。同社の消費者調査の結果、音楽へのAIの応用に関心を持つ人の77%が、依然として実在するアーティストが最も重要だと答えていると明らかにした。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「国連のAI関連サミット「AI For Good」の基調講演でユニバーサルミュージックのナッシュCDOが基調講演。AI時代におけるアーティスト中心の経営方針を語った。同社は大手AIと著作権の裁判とライセンス交渉を同時に進めつつ、YouTubeとAIで提携してアーティストAIをライセンスしたり、ボイスクローンのSoundLabsや動画生成のMoonvalleyと提携してアーティストのプロモーションツールに活用するなど積極的な対応も進めている。ユニバーサルミュージックはmp3ブームの際、いちはやく自社で音楽サブスクを立ち上げたり、ジョブズとiTunes Music Storeを進めたり、Spotifyの基本無料をいち早く認めて株式を取得するなどテクノロジーには前向き。波紋を呼んだVelvet SundownについてもAIバンドという前提で回答しているが、この基調講演はローリングストーン誌が修正記事を出した7/5の3日後であることも補足しておく」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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