Spotifyがお騒がせAIバンド「The Velvet Sundown」の複数曲削除 英国レコード産業協会、AI楽曲タグ付けの必要性を訴え

Spotifyで月間150万リスナーを獲得した新人「AIバンド」の「The Velvet Sundown」の台頭を受け、英紙ガーディアンは7月14日、英国レコード産業協会(BPI)のソフィー・ジョーンズ最高戦略責任者(CSO)が、AIのみで作られた楽曲への「明確な」表示を呼びかけていると報じた。
同バンドは同日、新たにアルバム2枚をリリースしたが、Spotifyではこのうち1枚のアルバムを含む複数のThe Velvet Sundownによるアップロードが削除された。Spotifyは同バンドの騒動についてコメントを控えているため詳細は不明だが、各方面からの批判を背景に、取り締まりに動いた可能性がある。
The Velvet Sundownは当初、AIバンド疑惑を否定。しかし、7月6日にSpotifyのバイオグラフィーを更新し、「人間の創造的な指示によって導かれ、AIのサポートによって作曲、発声、視覚化された合成音楽プロジェクト」と明記して、AIの使用を認めた。
ジョーンズ氏は「AIは人間の創造性を高めるものであって、取って代わるものではない」という信念を強調。「そのゆえ、われわれは英国政府に対し、著作権を保護し、AI企業に新たな透明性義務を導入することで、音楽著作権の使用許諾と権利行使ができるようにするとともに、AIによってのみ生成されるコンテンツの明確な表示を求めている」と述べた。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「彗星の如く現れ、月間150万再生をSpotifyで記録したAIバンド、Velvet Sundownの1枚のアルバムを含む一部の楽曲をSpotifyが削除。7月3日に同バンドの広報を名乗る男が「実は自分は偽物」と告白し、彼のコメントをバンドのAI疑惑と共に掲載したローリングストーン誌を嘲笑ったがその後、これまでAI疑惑を否定していたバンドはSpotifyのプロフィールを改変してそこでAIの使用を認めた。その時点では専門家がSunoの利用を指摘しつつも、ジャケ写が明らかに生成AIによるものという以外の確証がなかったが今回、生成AIですべて作成した楽曲の配信を認めないSpotifyが同バンドの複数曲を削除したことで、かなりの度合いで生成AIを利用した楽曲だったことが傍証された。国際AIサミットでユニバーサルミュージックの幹部がVelvet SundownのAI利用を前提に質疑応答していたが、英国レコード協会(BPI)幹部もAIのみで作られた曲はその旨を明示すべきとVelvet Sundown問題に対しコメント。音楽業界では、2023年春にドレイクとザ・ウィークエンドの新曲を騙るAI生成曲が物議を醸して以来のAI騒動となったわけだが、冷静に見るとこれだけ生成AIの実用が進んだこの2年で100万再生を超えたAI曲はこの2曲程度だったことから、ボタン一発で生成するだけでヒット曲を量産する実力はどうやら今のAIにはないようだ。ただ私の連載で扱ったように、個々人の音楽の嗜好をコピーしたリスナーAIが登場すれば話は変わってくるだろう2️⃣年れい」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
関連リンク
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