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英政府のAI著作権法案、両院が真っ向から対立 クリエイター支持の風潮高まる

ビジネス 海外

英国議会で、AI企業による著作物の無断使用を可能とする法案「データ(使用とアクセス)法案」の審議が白熱している。貴族院(上院)で政府の提案に反対するデータ法案の修正案が可決されるも、政府が過半数議席を占める庶民院(下院)で否決。貴族院は6月2日、4度目の「ノー」を政府に突きつけた。 

公共放送BBCは「どちらも一歩も引かず、歩み寄りの兆しも見せていないのは極めて異例」と指摘。むしろ、政府に反対する人々への支持は高まっているという。 

英政府は昨年12月、権利者がオプトアウト(データをAIの訓練用データとして提供しないことを選択できる機能)を行使しない限り、テック企業がAI訓練に著作権で保護された素材を自由に使用できるよう提案。クリエイティブ業界から猛抗議が上がっている。 

これに対し、映画監督で貴族院の無所議員であるビーバン・キドロン氏は、同法案に透明性の要件を追加した修正案を提出。著作権所有者が自分の作品が、いつ、誰に使用されたかを確認できるようにすることで、盗用されなくなるという論理に基づいている。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「AIを巡り音楽が政治案件になる時代が来ている。英国議会でクリエイターの許可なしに音楽等をAIの学習材料にできる法案が提出され、上院で可決、下院で否決と真っ向から対立。エルトン・ジョンも議会に招聘され、それは犯罪的でありそんなことをすれば政府は「完全な敗北者になる」と証言した。ディープシー・ショック以来、共産党政府のバックを得てなりふり構わずAIを成長させる中国企業に対する先進国のテック企業は危機感をつのらせており、AIがかつての石油や半導体のように国力(というか武力。ウクライナ戦争のドローン戦で現実になった)を決めると見ている政府もそれに同調。一方、音楽ファンが多数となる国民側はミュージシャンやクリエイター側に立つという構図ができてきた。アメリカでも同様の事案が発生しており、日本でもほどなく起こるだろうが国民に不人気となるので基盤の弱い今の石破政権ではおそらく同様の法案は提出されないだろう。

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。