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「バズりたい感覚は乏しい」孤高のアーティスト HAMELNが貫く、商業主義に屈しない“創る”こだわり【NORDER × Musicman コラボインタビュー】

ビジネス

HAMELN - Musicman YouTube撮影スペースにて

Profile

東京を活動拠点に置く、福岡県出身のプロデューサー、ビートメイカー、ラッパー、シンガー。SUSHIBOYS、KEN THE 390、ASIWC、さらには木梨憲武など、様々なアーティストの楽曲制作を手掛け、2018年より、自らも”HAMELN“(ハーメルン)としてソロアーティスト活動を開始。これまでに「CAGE」「No Matter What Happens From Now On」「アルゴリズム・シティ」と、EP3作品を発表しており、作詞・作曲・ビートメイキング・ミキシング・マスタリングに至るまで、全て自身が手掛けている。2025年7月4日には、満を持しての1stフルアルバム「HYBRID」を発表。

アーティストリンク https://linktr.ee/HAMELN


 

──今回はNORDERとMusicmanのコラボレーション企画で、見事選ばれたHAMELN(ハーメルン)さんにスタジオにお越しいただきました。まず簡単な自己紹介をお願いできますか。

HAMELN:HAMELNと申します。もともとはトラックメーカー、プロデューサーとして活動していたのですが、今はラップを含めた歌唱や映像制作まで手を伸ばしています。

── 映像制作というのはプロモーションビデオなどYouTubeでも公開されているものですね。

HAMELN:そうですね。最近出したアルバム「HYBRID」の1曲、「UNBOUND」の映像制作も行いました。

──多彩な活動をされていますね。今回のコラボ企画で選ばれた感想と、どのような経緯で企画を知って参加しようと思われたのかお聞かせください。

HAMELN:自分のように好き勝手に活動しているインディペンデントなアーティストにとっては、知ってもらうこと、外に広めていくような動きというのが疎かになりがちだと思います。そういう時に何かないかと探していたら、ディストリビューターのところでNORDERが紹介されていて、それをきっかけに今回の企画も含めて知りました。

──個人としてオールプロデュースを手掛けている中で、マネジメントまで手が回らないという現状はあると思います。今回こういったNORDERとのコラボで、今後幅が広がっていけばいいですね。直近の活動で特に手応えを感じていることや挑戦されていることはありますか。

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HAMELN:「UNBOUND」では、初めて3DCGに挑戦しました。3DCGソフトの「Blender」を使って、全編3DCGでMVを作ったのですが、作業が面白くて3ヶ月ぐらい曲作りも手につかなくなるぐらい没頭してしまいました。新鮮で面白かったので、これからもやっていきたいですね。

──映像制作というものは、場合によっては楽曲制作よりも時間がかかってしまうのでしょうか。

HAMELN:そうですね。3DCGは3秒作るのにものすごく時間がかかります。それはやってみて初めてわかりました。その3秒を曲の3分間に持っていくのが本当に大変でした。

──次に経歴や活動背景について深掘りさせていただきたいのですが、今とは別名義でヒップホップアーティストのトラックを制作されていた頃のお話から伺ってみたいと思います。

HAMELN:自分のトラックを初めて使ってもらったのはラッパーのKEN THE 390です。「Dream Boy」というアルバムだったのですが、それをきっかけにいろんなアーティストにトラックを提供したり、提供するだけでなくディレクションも含めて活動していました。

そうしている内に自分のアルバムを出してみたい、自分の100%を描いたものを世にぶつけてみたいという野心も出てきて、そういう活動もやるようになっていったら、そっちの方がどんどん面白くなっていきました。裏方から支えていたのが実際に形になっていくことで、自分がやりたいことが見えてきたんだと思います。

──トラックメーカーから転身というイメージでしょうか。

HAMELN:トラックメーカーってサッカーでいうとパスを出すような作業だと思うのですが、自分でも得点を決めてみたいという野心もあって、それがだんだん膨らんでいって今のような活動スタイルになっていったのだと思います。

──常に挑戦されているHAMELNさんですが、どのような作品を手掛けて、その時期に得た経験で現在に活きている点はありますか。

HAMELN:トラックメーカー、いわゆるプロデューサーみたいなポジションでいると、人と人がやっていることなのでデモの段階で70%ぐらいの完成度で存在していないと制作が進んでいかないと思います。自分でやる場合はそのデモが10%ぐらいでいい。自分で全部分かっているので、この後はこうなるから、このぐらいでここを先に進めようとか、自由度は上がったと思います。ただ人とやっているからこそ生まれるアクシデントのようなものもあるので、それが自分一人で全部やっていると起きにくかったりします。なので、そこをいかに想定外なことが起こるように仕向けていくか日々格闘はしているつもりです。

──いただいた資料の中でラップや歌唱についても意見を伝えてしまうタイプとおっしゃられていたのですが、それはどのような表現のこだわりから来るものなのでしょうか。

HAMELN:強制はしないのですが、可能性の一つとして提示するぐらいの感じです。だいたい納得してもらえることは多いですね。

──もっと自分が100%思い描いた作品を世に放ちたい想いが強くなった、具体的なきっかけやターニングポイントがあれば教えていただけますか。

HAMELN:ひとつの理由ではなく、フラストレーションもあったのかもしれません。自分の作品ではなかったりするので、そういうものが積み重なっていったり、野心もそうですけど、あと性格的にSNSに日常で思っていることをたくさん吐いてしまう方なのですが、せっかくなら作品にしようということもだんだん膨らんでいったり、いろんな複合的な要因があります。

──トラック制作だけでなく、作詞や歌唱、ラップまでご自身で手掛けるようになったことで、制作スタイルや作品の世界観が変化したということはありましたか。

HAMELN:以前「アルゴリズム・シティ」というEPを作ったのですが、それは「自分はヒップホッププロデューサーなんだ」と凝り固まった状態でいると、作らないような作品だったと思います。一人でやるようになって音に関しても対象が自分になったことで、ヒップホップアーティストに対しては絶対作らないなというトラックも作るようになったということはあるかもしれません。

──もともとはヒップホップばかりやりたかったというわけではなく、いろんなことやってみたい想いが胸の奥にあったのでしょうか。

HAMELN:ある程度いろんなアーティストにトラックを提供したり、一緒に制作をしていく中で、だんだん凝り固まってきているなというものがどこかのタイミングで爆発して、もっと自分にできることがあるんじゃないか、枠をもうちょっと跨いでできることあるのにな、そういうものを発揮したい、という気持ちが膨らんでいった結果、今みたいな音楽性になっている気がします。

──制作へのこだわりについて伺います。「作る」という言葉にこだわりがあると思ったのですが、「創造する」の「創る」という言葉に込められた意味について具体的に聞かせていただければと思います。

HAMELN:今ってSNSが社会の中心にあるぐらいの状態だと思うのですが、同時にSNS的な価値観というものが音楽にもだいぶ侵食してきているなと感じます。そこを狙って作ろうとすると組み立てるだけの作業になってしまうというか、それはちょっと面白くないなと思うので、もっと自分が本当にやりたいことをぶつけたいという、まあ・・・性分なのですが、そっちを優先したいなという思いです。

──HAMELNさんってSNSに対するちょっと怒りのようなものが楽曲を聴いていると感じます。例えば「VERSUS」という曲はかなり今お話しされていたようなお気持ちが反映された歌詞なのではないかなと思いました。

HAMELN:ありがとうございます。

──「自分の持っているものを最大限に活かす」とは具体的にどのような様子を指すのかお伺いしたいです。

HAMELN:ヒップホップに出会ったのは中学生ぐらいだったのですが、その時にキングギドラに出会ってヒップホップにハマっていきました。ただそれ以前、というかずっとポップやロックも聴いていたので、自分に影響を与えたものを捨てるのではなく、作品に活かすということをする方がオリジナリティが出やすいのかなと思います。USのヒップホップを上手になぞっている作品もあると思うのですが、それだと聴いていてあまり入ってこないと個人的に思うので、そういうのではなく、もっと自分が個人的に影響を受けた音楽性を組み込んでいくことでオリジナリティになるのかなと思っています。自分の中に自然にインプットしたものから構築していって、これがHAMELNだと言わしめたいというか、それを提示したいというところだと思います。

──キングギドラ以外にルーツというか、ポップスなど他のジャンルの音楽を聞いたりされますか?

HAMELN:宇多田ヒカルさんも聴いていましたし、岡村靖幸さんとか、ちょっとブラックミュージックの匂いがするけど、大衆にも広く受け入れられているようなアーティストは大好きで、今も聴いています。USの匂いのするトラックであっても、歌い方や乗せ方を日本の音楽から受けた影響を踏まえて乗せてみたりという方法を、7月にリリースした「HYBRID」というアルバムで形にしたつもりです。

──スペイシーな印象も受けましたし、非常に実験的なアルバムになっているなと思いました。リスナーに届ける上での共感性やトレンドとの向き合い方についてのバランスをどのように思っていらっしゃるのかお聞かせください。

HAMELN:バランスを取ろうという感覚が乏しいです。共感されたいとか思い始めると、やっぱり組み立て始めてしまいます。本当に向いていないんですよね・・・体質というか。共感されたいとかバズりたいとかやってみたことあるんですけど、本当に脳みそが回らなくなる、手が動かなくなるんです。

なので日常で感動したことだったり、音楽に限らず絵とかたくさん見ようとしてみたり、この絵に合う音楽ってどんなだろうとか、そういうのを日常を積み重ねていくことで、今一番気持ちいいキックの音はこれだとか、そういうのが見えてきます。そのキックに合うハットはとか、スネアはとか、そういうのを積み重ねていくと自分の好きな曲が出来上がるので、それを世間にぶつけたいという想いですね。これだけ人がいるんだから、一人ぐらいには届けばいいと思っています。一人誰か良いって言ってくれたら、自分の中では成功です。「とにかく多くの人に共感されたい」という感覚は乏しいかもしれないですね。

──HAMELNさんにとってその一人というのは貴重で大事な存在ですね。

HAMELN:さっきも言った通り、日本のポップやロックも聴いていたので、そういうのが自然に多分出ていると思うので、そんなに何かいびつな形の音楽にはならないとも思っています。なんだこれはみたいなことにはならないだろうという自己認識もあります。

──SNS的な価値観の音楽にすり寄っていこうとすると、創作視野が狭くなってしまうのかもしれませんね。

HAMELN:ちょっと自分は手が動かないですね。

──リスナーの方からはご自身の作品についてどのようなフィードバックを受けたりすることがありますか。

HAMELN:作品のキャラクターが毎回違うので、これはすごい気に入ってくれているなという人が次の作品ではポカンとしてしまったりとかはあります(笑)。DMやYouTubeのコメント欄で「もっと評価されるべき」みたいに書いてあるとすごい励みになりますし、「まだ1000回再生のうちにこの曲を知れた私は勝ち組」とかいうコメントもあったりとか、そういうのは嬉しいなと思います。

──HAMELNさんご自身の作品で、ここが自分の魅力だなというところがあればお聞かせください。

HAMELN:作品ごとにしっかりEPやアルバムのその匂い、統一感、そういったものを作品ごとにしっかり分けていきたいというのがあるので、そういうところはユニークなのかもしれないです。曲が溜まったからアルバムだ、みたいなことはあまりしたくないです。

──コラボレーションと今後の展望についてお伺いします。今回のNORDERとのコラボレーションに関して、今後はもっと積極的に行っていきたいということですが、HAMELNさんが考える理想的なコラボレーション像をお聞かせください。

HAMELN:僕は一人でやっている分、DMやメールで直接クリエイターの方、イラストレーターの方にジャケを発注したりということをやっているのですが、NORDERが一つ入ることによって、そういうのも円滑になっていくかなと思うので、そういう面で積極的に利用していきたいなと思っています。アーティストでいうと、今SNSに自分も含め音楽をアップしている方ってたくさんいると思うので、そういう投稿を見聞きして、偉そうに一方的にオーディションしています(笑)。

──先ほどのジャケットの話とつながりますが、「アルゴリズム・シティ」や「Night Ride」、素敵なジャケットだなと思ったのですが、あれもHAMELNさんがこの人に描いてほしいという感じで依頼されたのですか。

「惑星ログアウト」

「流星プライド」

「アルゴリズムシティ」

HAMELN: 「アルゴリズム・シティ」や「惑星ログアウト」「流星プライド」のジャケットは、島田つか沙さんというイラストレーターの方で、企業広告からアイドルさんのグッズから様々に手掛けられている方なのですが、そういう方に直接自分でオファーして描いて頂いたり、「Night Ride」はアメリカでイラストを描いている方に英語翻訳を使ってやりとりしながら制作してもらったりしましたね。

──NORDERを使うことで、今後そういうところをより円滑に運びたいと。「本当に自分が作りたいものだけを作りたい、それで数字が出なければそれでいい」というスタンスは、商業的な側面を考えると非常にチャレンジングだなと思うのですが、この想いを貫くモチベーションの源泉はどこにあるのかお伺いしたいです。

HAMELN:今、効率やハウツーみたいなのがすごく溢れすぎていて。そういうものが本当に音楽にも侵食してきてしまって、こうすればもっとバズるよとか、それだけじゃないとは思うのですが、そういうものに振り回されながら音楽を作るということにやりがいを感じないので、やっぱり性分なのですが、自分の好きなものだけを作りたいと思っています。

別にチャレンジしようとも思っていないというか、好きな音楽を作るため、残すためには何でもやるし、みたいな気持ちでいるので、何でもいいから音楽で生きていくんだとか、とにかく数字だという感覚ではないので、それよりも自分が本当に作りたいものを作ってくたばっていこうという方が優先順位として高いです。

──納得の得られる回答です。「100%自分の世界観を反映したライブ空間づくりをしたい」という野望についてなのですが、具体的にどのような世界観をそういう空間で表現したいとお考えでしょうか。

HAMELN:ライブは需要があればやりたいという感じです。これもいろいろ積み重ねていかないと全然無理だと思うのですが、ちょっと内容は自分の中だけの秘密なのですが、一般的な形式のライブみたいなものではなく、もっとあるんじゃないかなと思っていて、そういうのを自分がこう積み重ねていけた先にはやりたいなという野望はありますね。

──今日のインタビューを通して、改めてHAMELNさんの作品を聞く方々にメッセージをお願いします。

HAMELN:お互いに同調圧力に屈せずに好きなものを追求して、探求していきましょう。

──次に今後の活動予定やリリース情報で、これは小出しにできるよみたいなことがあれば何か告知していただければと思います。

HAMELN:さっきまで言っていたことと少し違ってくるかもしれないのですが、もうちょっとエンターテイメント性のある作品を作りたいなという気分になっています。自分の性格的に明るく楽しくみたいなことは多分作れないと思うのですが、もっとあると思うので、そういうものも作りたいなと思っています。あともっとコラボレーションも行えたらいいなと。

──具体的にコラボレーションというのはどういった方々が想定されているのでしょうか。

HAMELN:さっきも言ってしまったのですが、SNSとか見ていると、フォロワー数とか関係なく、いい声だなこの人みたいなアーティストの方っていっぱいいらっしゃるんですよね。そういう方と一緒に曲を作れたら、もっと表現の幅が広がるんじゃないかなと思っています。

──それこそ数字だけでは判断できないところですよね。自分の耳と勘でお声掛けして、より良い作品を作っていくと。最後の質問になるのですが、HAMELNさんにとってNORDERをどのように使っていきたいかお聞かせください。

HAMELN:アーティスト活動を知ってもらうことにデメリットはないと思います。今日のこういう機会もNORDERがあったからですし、組織に縛られたくないんだけど広める努力をしていきたいという人にはすごく重要なツールなんじゃないかなと思っているので、今後も活用させていただきたいと思っています。

──いわば個人マネージャーみたいなツールですね。これはどんどん積極的にアーティストの方取り入れていかれたらいいんじゃないかなと思います。今回はヒップホッププロデューサーのHAMELNさんにお越しいただきました。どうもありがとうございました。

インタビュアー
久保健太(Kenta)
 
兵庫県神戸市出身のギタリスト、YouTuber、音楽業界サイトMusicman.co.jpのキュレーション番組「Nusicman」のメインVJ。
Charに憧れ、高校2年生の頃からギターを熱心に学び始める。他にJohn Mayer、Jeff Beck、Jimi Hendrixから影響を受けた。高校卒業後、レコーディングやラジオ出演、ミュージカルなど様々なイベントに参加。サポートギタリストとしてもインディーズからメジャー・シーンまで幅広く活動。2014年には小田和正FECBのギタリストである稲葉政裕の後押しを受け、東京へと活動の場を移し、著名ミュージシャンとの共演やセッション活動を行う。「Pop Guitarist – Kenta」としてYouTubeチャンネルを開設し、ギターレッスン、楽曲制作の他、楽器ブランドやMusimanの動画制作者としても活動の場を広げている。

ポッドキャスト概要:

Musicman Podcast — 業界の“今”を深掘り

「Musicman大学」は世界の音楽業界の最新トピックスを解説。講師は『音楽が未来を連れてくる』の著者、Musicman編集長・榎本幹朗。「Talk&Songs」は月間500組ものアーティストニュースを担当するKentaが選ぶ、今聴くべき楽曲と業界人必聴のバズった曲を解説。

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プレイリスト概要:

記事連動セレクション — エピソードと繋がる楽曲たち

月間500のアーティスト記事から厳選した楽曲と、業界人必聴のバズ曲をプレイリストで。最新シーンの決定版!

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@musicman_nusicman