ユニバーサルとワーナー、AI企業とライセンス契約の締結間近か FT報道

ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)とワーナー・ミュージック・グループ(WMG)が、AI音楽企業とライセンス契約の締結間近のようだ。情報筋の話として、フィナンシャル・タイムズ(FT)が10月2日報じた。
それによると、両社は「AI企業が音楽の使用料を支払う方法の先例を確立する」ため、「数週間以内にそれぞれAI企業と契約を結ぶ可能性がある」という。交渉にはElevenLabs、Stability AI、Suno、Udio、Klay Visionなどのスタートアップ企業のほか、GoogleやSpotifyを含む大手テクノロジー企業グループも含まれている。
交渉の焦点は、AI生成楽曲制作のための音楽ライセンス供与と、大規模言語モデルの訓練に音楽データを利用することにある。
9月には全米レコード協会(RIAA)がSunoとUdioを相手に起こした著作権侵害の訴訟を拡大したばかりで、今回の協議で「過去に使用された楽曲に対する和解金を含むライセンス契約」が成立することが期待されている。
(文:坂本 泉)
榎本編集長
「世界三大レーベルの二頭、ユニバーサルとワーナーがSunoやUdioなどAI企業と近々ライセンスを締結するという記事。世界的なクォリティペーパー、FTの報道なので確度は高そうだ。締結相手にはSpotifyやGoogleなども含むという。SunoやUdioは直近でYouTubeの音楽動画を無断でDLしてAIの学習材料にした疑いで巨大賠償額が予想される裁判を音楽レーベル側と戦っている最中。YouTubeの技術保護を外したことは賠償責任がほぼ確実でレーベル側からするとこれが大きな交渉材料になる一方、無断学習させた点はDMCA(デジタル著作権法)のフェアユース(引用と同じで合法)にあたるという判決も別裁判で出ているのと、mp3の違法ダウンロードと違い具体的被害額の明確化が難しい。またSora2のように既にAIを使った遊びが流行の段階にまさに入ろうとしているなか、ライセンス締結でAIを無法から合法の世界へ連れ出してコンテンツ側がテック側からイニシアチブを取り直す意志も感じる。実際、mp3の違法な聴き放題を、メジャーレーベルは音楽サブスクで合法化する方向で2000年頃に合意し、2008年にSpotifyがサービス員するときはユニバーサルとソニーがバックアップした勝ち経験が音楽産業にはある」ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
関連リンク
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