全米レコード協会、音楽生成AI「Suno」の訴訟を拡大 新たに「ストリーミングリッピング」主張

音楽生成AI「Suno」を相手に起こした著作権侵害の訴訟を巡り、全米レコード協会(RIAA)は9月19日、米裁判所に修正訴状を提出。SunoがYouTubeから楽曲を違法に取得し、AIモデルの訓練に利用したとして、同訴訟を拡大した。
原告は、Sunoがトレーニングデータに含まれる著作権保護された音源の多くを「ストリーミングリッピング(ストリーミングプラットフォームから取得したコンテンツをダウンロード可能なファイルに変換する行為)」の手法を用いて、YouTubeから違法にダウンロードしたと主張。YouTubeの技術的保護手段を回避したことで同プラットフォームの利用規約、およびデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に違反したと指摘した。
RIAAは現在、侵害された作品1点につき最大15万ドル、および技術的保護手段の回避行為1件につき最大2,500ドルの賠償を求めている。
RIAAは昨年6月、ライセンス契約なしに著作権で保護された音楽を訓練に使用している疑いがあるとしてSunoを提訴。レコード会社の著作権で保護された録音物を使用したことをほぼ認めたが、フェアユース(公正な利用)を主張している。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「音楽生成AIで人気No.1のSunoに新たな告訴。YouTubeにある多くの著作権付き音楽を無断で学習させていたと米レコ協から訴えられた。大手AIは「インターネットすべて」を学習材料にしており、そこには海賊版サイトも含まれていたが、今回は動画の技術的プロテクションを外してダウンロードして学習させていたことが著作権法違反(DMCA)に相当する。元ネタの音源を坩堝のように混ぜ合わせるAIの音楽生成は元ネタを判別するのが技術的に困難と言われていたが最近、元ネタを追跡し影響度を数値化するフィンガープリント技術も登場しており、音楽生成AIを巡る裁判は新たな局面を迎えつつある印象だ。賠償額は技術的保護手段の回避行動1件に付き最大2,500ドル、侵害された作品ひとつにつき最大15万ドルで、かける数万本となるととんでもない賠償額となる。何度か触れたが、かつてファイル共有を発明したNapsterは天文学的な賠償額で破産している」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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