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トランプ米大統領、 AIサミットで「マイクロライセンシングは『不可能』」と基調講演

ビジネス 海外

トランプ米政権は7月23日、「AI競争に勝つ:米国のAI行動計画」を発表。28ページにわたる計画書には「AIイノベーションの加速」「米国のAIインフラの構築」「AI外交・安全保障の国際的な主導」の3つを柱に、90以上の政策行動が盛り込まれ、その大部分は知的財産(IP)以外の話題にとどまる。Digital Music News(DMN)が伝えた。

著作権問題や権利者への補償については明示されておらず、代わりに、テクノロジー分野への規制緩和、AIインフラ構築の迅速化、連邦レベルでの統一された規制を目指すことに重きが置かれている。

一方、トランプ大統領は同日、投資系ポッドキャスト「All-In Podcast」などが主催するAIサミットの基調講演で、AI訓練に使用される全てのコンテンツに対するマイクロライセンシングと個別支払いは「不可能な仕事」だと表明した。

「あなたが読んだり勉強したりした全ての記事や本、その他のものに対して料金を支払わなければならない状況では、成功したAIプログラムを期待することはできない」と述べ、利用する知識全てに支払いを要求することは、(特に制限の少ない中国と比較して)米国のAI開発を競争力のないものにしてしまうと主張した。

もちろん記事の複製や剽窃はできないが、現在の解釈では、書籍や記事から学ぶことは著作権法に違反しないと付け加えている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「トランプ大統領が「AI競争に勝つ:米国のAI行動計画」を発表した際、AI企業がすべての学習素材(コンテンツ。音楽も含む)と契約して作品ごとに支払うのは「不可能な仕事」だと表明。いわゆるマイクロライセンシングを否定した。マイクロライセンシングとは著作物の契約・利用・支払いが極めて簡易に行える仕組みのこと。度々ここでお伝えしてきた通り中国とのはんはけ覇権競争で、アメリカ政府はコンテンツの保護よりAIの進化を優先する方針を取っている。AIの進化は質の高いデータの学習量で決まる。その際、音楽産業などが求める著作権物の利用許諾をAI企業に求めるのはAIの進化の邪魔であり、覇権競争の邪魔であるという判断だ。アメリカの歴史を鑑みれば大統領がトランプ氏でなくてもその方針を取っただろう。既に米司法も著作物のAI学習は(元が海賊版で無い限り)無許可でも合法という判決を出し初めている。印刷、レコード、放送、インターネットの登場と音楽家はその度に技術的な挑戦を受け、音楽産業はイノヴェーションを繰り返して新しいビジネス基盤を作ってきた(拙著参照)。AIも歴史的な節目を音楽産業にもたらそうとしているのかもしれない。つまり、本番はこれからだ」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。