史上初。3大メジャー、「倫理的AI」開発のKLAY Visionとライセンス契約締結
米国のAI音楽企業KLAY Visionは11月20日、3大メジャーレーベルおよびそれら出版部門と、それぞれ個別のAIライセンス契約を締結した。
具体的な提携内容については明かされていないが、今回の合意は「KLAYがAIの可能性を活用しつつ、アーティスト、作家、権利者の権利を尊重しながら、ファンの音楽体験を進化させるための条件を定めるもの」だと主張。KLAYは、全ての独立系レーベル、アーティスト、出版社、作家とも提携できるよう取り組んでいるとしている。
KLAYはかねて「倫理的なAI」の開発に取り組んでいるが、プラットフォームのローンチはいまだ実現していない。2024年にはユニバーサル ミュージック グループ(UMG)と戦略的提携を結んでいる。
メジャー各社は今回、KLAY経営陣の「比類なき経験」を強調。同社には、かつてソニーBMGミュージックエンタテインメントでグローバル・デジタルビジネスおよび米国セールス担当プレジデントを務めたトーマス・ヘッセ氏(共同創業者、最高コンテンツ・商業責任者)のほか、ミュージシャンのアーリ・アッティ氏(創業者兼CEO)、Google DeepMindでAIモデルの開発を率いていたビョルン・ウィンクラー氏(最高AI責任者)、元Spotify主任研究員でThe Echo Nestの創業者でもあるブライアン・ホイットマン氏(最高技術責任者)が在籍している。
(文:坂本 泉)
榎本編集長
「極秘プロジェクト起動の匂い。三大メジャーが市場初めて揃って同時に音楽生成AI企業と包括契約。AI企業の名はKLAY Visionで、昨年10月、ユニバーサルミュージックが同社と包括ではない契約をしたが、その時点でKLAY社はステルス・モード。ただその前後にユニバはAI関連で革新的なサービスを展開すると予告していた。今回の発表でKLAYは「プロンプトベースのミーム生成エンジンではなく、偉大なアーティストを称え、その技術を高める全く新しいサブスクリプション製品」と説明があったが、詳細は不明のままだ。昨年6月、私の連載でAI自体がCDやレコードと同じメディアになる「AIアーティスト」の時代が来ると書いたが、このAIアーティストとはSunoを使って作品を発表するクリエイターではなく、アーティストが自身をAIに複製してAI自体を作品としてリリースする未来図だ。三大メジャーが新技術で新サービスを起動と聞くと音楽サブスクの秘史を思い出す。かつてファイル共有のNapsterが席巻した2000年、当時のメジャーレーベルは共同して音楽サブスクを起動することで合意。翌年、対立してソニーとユニバーサル中心のPressPlay、ワーナー、BMG、EMI中心のMusicNetが立ち上がった。しかし当時はレーベルにITを知悉する人間がおらず、カタログも分裂してしまい失敗に終わる。サブスクはSpotifyが登場するまで超ニッチだった。今回のKLAYはレーベル交渉に元SMEグローバル部門プレジデント、AI開発にDeepMindの音楽担当、最高技術責任者に元Spotifyの主任研究員という布陣で、3大メジャーが足並みを揃えているところから、AI時代到来にあたり、過去の失敗を繰り返さない強い意志を私は感じる」ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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