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【全文掲載】榎本編集長「機材より宣伝にお金を使いなさい DIYアーティストへのアドバイス」Musicman大学

ビジネス 音楽業界

MC Tama:今日のお題なんですが、何でしょうか?

榎本:「機材より宣伝にお金を使いなさい」というテーマですね。つまりDIY、Do It Yourselfで今って時代、音楽制作できちゃうじゃないですか。楽曲制作まで。しかもそれをTuneCore(チューンコア)とか使ったらSpotifyとかに出せるわけですよ。Apple Musicにも出せるし、すぐ配信できちゃう。CDの時代では考えられなかったことが起こってるわけです。

誰でも音楽は配信できる。今宣伝のツールもあります。TikTok、Instagram、X。「曲できました」と、曲のダイジェスト載せてみる。簡単な音楽ビデオみたいなの撮って載せられる。昔だったらメジャーデビューしなかったら出来なかったことができちゃってる。

MC Tama:確かにそうですよね。

榎本:だけど実際にはそれやっても、再生数が100とか500とか、それくらいしかいかない。こんな楽曲がもう6割以上なんですよ。本当に1万曲単位で毎日音楽って音楽配信に上がってるんです。そんなに今簡単にアップロードできるんで。だけどほとんどは聞かれないで終わっちゃいます。

じゃあどうすればいいんだと。そこで、そもそものアドバイスとして、これアメリカの記事でいいアドバイスだなと思ったんでミュージックマンでも紹介した(「機材より宣伝にお金を使いなさい」インディーズ・アーティストへ助言)ですけど、インディーズのミュージシャンの皆さん、機材にはお金使ってる。でスタジオね、場合によっては借りてお金使ってる。作ることにお金使うけど、宣伝にお金使ってますか?っていう。

そもそも曲アップしただけじゃ何も起こらないですよっていう。だったら別に何のメディアも必要ないっていうか、メジャー契約する必要ないわけですよ。だって今の時代、曲はアップできるんだもん。さっき言ったように宣伝やってくれるから契約するんですよ。

だから同じようにDIYのミュージシャンもちゃんと宣伝に、例えば機材に50万使いましただったら、宣伝にも50万ちゃんと用意しておきなさいっていう、それがすぐに考えられるアドバイス。

MC Tama:それはTikTokとかXとかInstagramとかそういうもの以外で使えってことですか?

榎本:その宣伝費をどこに使えばいいのっていう話ですね。このアドバイスはアメリカの英語の記事なんだけど、アメリカってSpotifyって使ってるとバナー出たりするんじゃないですか。あれは曲の宣伝で音楽もかかってくる時ありますよね、無料で使ってると。あれが個人でも200ドルぐらい払えば使えちゃうんですよ。

あともう一個、プレイリストマーケティングっていうのが大事で、人気のプレイリストに載せてもらうっていうのがすごく大事なんです。そこに載るか載らないかでかなり変わってくる。ここの人気プレイリストを作ってる人たちに「聞いてください」と、「聞いてもらったらお礼します。載せてくれたら、それもお礼します」っていう仕組みができてるんですよ。

有名なところだとSubmitHub(サブミットハブ)っていうのがあって、そこはそういう人気のプレイリスト作成者、人気の音楽キュレーターさん、人気音楽系のインフルエンサーさんにアクセスできるんですね。個人でも払える範囲で。こういうのがあるから、アメリカではこのアドバイスが成立するっちゃ成立するんです。

だけどじゃあ「ここ日本だし、そんなのないじゃん」と。それどうすればいいの?っていうか、そもそも「50万機材に使ったから、もう50万俺ないんだけど」っていう人もいますよね。

そこで僕からのアドバイスがあります。それがタイトルの2で「お金がないんだったら宣伝に頭を使ってください」ってことです。

MC Tama:宣伝っていうのは一生懸命Instagramにアップするとか、いろんな人に「曲作ったんでよろしく」ってコメントするとか、TikTokに何度も挨拶の動画を投稿するとか、そういうことではないですか?

榎本:それ空回りしてます。頑張るって言うと「そうなのかな?SNSでマーケティングするの頑張る。いろんな人に「聴いて」ってコメント出しまくる」「それならタダでもできる」と思っちゃう人多いかもしれないんだけど、違います。

それが次、ミュージックマンで紹介した「戦略的に楽曲をリリースしよう:DIYアーティストへの助言」っていう記事があるんですけど、これですね。5つのステップに分けて何やるないといけないかっていうのがあります。

まず、曲をポンと上げちゃダメです。もう1ヶ月前か2ヶ月前からやらないといけないことがあります。まず、プレセーブキャンペーンっていうのを使わないといけない。それを構築していくんです。

曲を出しますっていう時に、いきなりポンと出てこないんですよ。その前に「曲を出すぞ出すぞ出すぞ」って期待感を高めていくようなコンテンツを置いていかないといけない。

MC Tama:なるほど。

榎本:例えばそのプレビュー、曲の一部ですね。ちょっとだけ出してあげるっていうティーザーって言いますよね。映画界では当たり前ですけど、それは今の時代自分たちでもできるんじゃないですか。

あとはシャウトアウトって言って、宣伝を伝えていく。あとはインセンティブを提供する。これ聞いてたら、こういうのプレゼント。ちょっと簡単なもんだけど、抽選で50人に僕のTシャツサイン入れで送らせてもらいますとか、分かりやすいプレゼントつけとくとか。

こういうことを少なくともファンには伝えとく。SNSとかファンは100人はやっぱりもともといてほしい。100人はちゃんと自分のことを気にかけてくれるファン、コアファンっていうかね。単純にXで100人いるとか、そういうことじゃなくて、ライブ100人ぐらい来てくれるんだったら、それがいれば何とか始められます。種として育てられるんで。

そこまでは何とか、それ以前に頑張ってもらわないといけないんだけど、その人たちに今言ったようなプレビューを見せるとか、シャウトアウトを伝えるとか、プレゼントみたいなインセンティブをあげる。

それだけじゃなくて、コンテンツもプレリリース用のコンテンツっていうのを作っていきます。例えばこれTikTokでよく人気見るようになりましたけど、舞台裏コンテンツ。例えばトラックを作ってるところのプロセスを見せるとか、こういう風に考えながら作ってるところとか、演奏して重ねてるとか、「はい出来上がり」みたいな。最近TikTokでありますけど、出てますね、ああいうもの。

あるいはその作った時のドタバタっていうか、メンバー同士との「こうした方がいいんじゃないか」とか「よし、できた」とかあるじゃないですか。そういうリアクション系のやつとか、そういうスタジオでのわちゃわちゃしてるやつを撮っとくとか。そういうのをリリースまでにポンポンポンと定期的に出していくんですよ。Instagramとか、Xでもそうだし、TikTokとか。

それが2番目で、3番目はこれ大事なんですけど、期待感があるんですけど、期待っていうのはどうやったら期待されるかっていうと、焦らすんです。

MC Tama:恋愛みたいなね。

榎本:その通りです。恋愛と同じだと思うんですね。強力な10秒のティーザーを用意してくださいっていう、ティーザーってさっき言ったやつなんですけど。ティーザーって有名なところだと、鬼滅の刃、今公開中で大ヒットしてますけど、映画っていきなり始まらないじゃないですか。その前にちょっと切り抜いたところ、「面白そう」っと思える部分を切り抜いて、それに何かコメントとか「すごい」とか作った人のコメントとか。別に鬼滅以外でもあると思うんですけど、あれですよ。

ああいうのと同じ、すごく強力な引きになるようなティーザーを頑張って作って、頑張って工夫して。別にTikTokね、皆さん僕らの世代よりもいっぱい見てると思う。別にお金使ってないでしょ?TikTokの皆さん。使ってる人もいますよ、すっごい豪華な映像作ってる人もいるけど、工夫でしょ?いろんな工夫してる。

自分の好きなアーティストさんとか、あるいはTikTok頑張ってるアーティストさんいるじゃないですか。最近だったらサカナクションの山口さんとかいるんで、そういうのを見て勉強して、いいなと思ったのを自分なりにやってみるでいいんで。すごく響いたやつあったら、それ勉強して「俺だったらこうやったら響くかな」みたいな感じで、ちゃんと勉強して。

MC Tama:つまり頑張るって言っても、ちゃんと頭使って努力する、調べるとか知識をつけるとか、そういうことをしなきゃいけないってことですね。

榎本:まずは真似してみることで。そう、真似でもいい。まず研究するって大事だから。音楽作る時だって、まず大好きなものを研究したから、それから作れるようになったでしょ?真似してるうちに自分のオリジナリティって出てきたじゃないですか。同じことが大事なんですよ。プロモーションっていうのはクリエイティブな世界なんで。

いろんなティーザーをできればいろんなパターンできるといいんですけどね。いろんなティーザー作ってるアーティストさん、TikTokでいっぱい見つかるんで、そういうの見て勉強してください。

MC Tama:なるほど。

榎本:で、4番目。リリースカレンダーを作りなさいというアドバイスがあります。リリース2、3週間前からどこで自分たちのSNS、ファンの皆さんに伝えるかとか、どこでティーザーをここに置くとか、ティーザーいくつか作ったら一番強いやつはどこら辺に置くかとか、そういうことを考えながらやらないといけません。

で、当日です。「はい、アップしました」、ダメです。それじゃあ。そこで盛り上がるイベントを作っておきましょう。

MC Tama:そうですね。

榎本:一番いいのはその当日にライブ開けるのが一番いいですよね。それが一番熱が上がるから、ファンがシェアしてくれて広がってくると思うんだけど、それできないんだったらライブ配信だってあるじゃないですか。あるいは最近だったらコメントしながらみんなで集まりながら配信するっていう仕組みもあるんで、そういうのをどっか探してやってみる。自分の曲だったらやりやすいと思うんで。最近TikTokもライブあるし、どこでも自分のファンがフォロワーが一番多いところうまく使って、それやったらいい。

ここまでがリリース当日です。

リリース後もこれで終わっちゃダメです。どんどん火を広げていかないといけない。継続しないといけない。ビジネスの言葉でリテンションって言葉があるんですけど、ご存知だと思うんですけど、リテンションしないといけない。どういう風にするかっていうと、ドキュメンタリーをそれまでに作っておいて、ドキュメンタリーを分割して出していく。どういう風に作っていったかとか、あるいはライブやってたんだったら、そのライブの様子とかを撮っておくとかして出していく。そういう風にやっていかないといけないです。

音楽ビデオを頑張って作れたんだったら、音楽ビデオを分割して。音楽ビデオを最終的に出すのはリリース当日じゃないですか。完成版から、ティーザーで使わなかった部分以外も、うまく使って出していって。「ここのとここだわったんだよ」とか、そういうのをコメントつけてもいいですし。そういうふうにリリース後もちゃんとコンテンツを用意しておきましょうっていう継続的なコンテンツを発表していく。

もう一個、本当に基本的なことで、これDIYのアーティストさんがやらないがち、いい加減にしがちなのが、例えばSpotifyとかApple Musicってプロフィールを入力するとかあります。あれが適当すぎる。

MC Tama:なるほど。

榎本:適当すぎると、アルゴリズムが反応しません。アルゴリズムってSpotifyで勝手に曲かかってくるんじゃないですか。Apple Musicでも。ああいうのが働かないんでプッシュされないです。TikTokもそうですよね。僕らもTikTokやってるけど、ちゃんとアルゴリズムに引っかからないと人のところに届かないから。そもそも。

MC Tama:なるほどね。

榎本:でプロフィールをちゃんと書くのも大事だし、そこにXとかTikTokでタグって付けるんじゃないですか。ああいうようなタグみたいなメタ情報っていうのがあるんです。メタデータって言うんですけどね。どんなジャンルか。それもただ「J-POPです」じゃなくて、「女性ボーカルでギターが強いフォークで、これ通知なんです」とか、「BPMはこれくらいです」とか「シンセサイザー使ってて、どういう歌詞なのか」。歌詞も入力しておいたほうがいいです。

入力できる。これだけでもやってほしい。つまり基本的なこと。プレセーブキャンペーンでティーザーを作っておく、当日にちゃんとイベントを置く、ポストあとでもちゃんとコンテンツを置いておいて広めていく、そもそも最初にメタデータをちゃんと入れとく、登録するときに曲を。っていうのをやらないで、「俺こんなに頑張って曲作ったのに誰も聴いてくんない。もう俺ダメなんだ、やめよ」。これはもったいない。

一番基本的なことはまずやってから諦めてください。まず頑張るっていうのは宣伝も頑張らないといけないんだけど、皆さんプロの宣伝マンじゃないんだから、まず基本中の基本だけやってくれればいいんですよ。だってそれ以外は本来はミュージシャンの仕事じゃないから。別にそこまで頑張らなくてもいいんだけど、最低限やらなきゃいけないことってあるから、そういうの参考にしてもらいたい。

MC Tama:まずはスケジューリングですね。

榎本:そうですね。大事なのがプロモーションプランって立てるんで、僕は音楽メディア側の人間だったんだけど、そしたらこのプロモーションプランだから「ここで特集組んで差し上げよう」とか「そしたらここでインタビュー取れるな」とか、そういう風に僕らの場合だったら組んでたんですけど、それをやらないといけないですね。

これあの、Spotifyでデータの魔術師って言われてる人がSpotifyのアルゴリズムって、どうやって動いてるんですかと。Spotifyのアルゴリズムに引っかかるためにはどんな工夫が必要なんですかと、すごい知りたいっていう質問に対する答えがもう究極の答えだったんですよ。

「そもそもいい音楽を作ってなかったら、何にも起こりません」と。その他のこと頑張っても。

MC Tama:まあでもそれは当然じゃないですか。

榎本:ただみんないい音楽頑張って作ろうとしてるんだろうね。当然ありますよね。そのつもりでミュージシャンになって頑張って曲作ってるわけだから。それは最高の曲じゃないかもしれないけど、誰かに響くための曲を作るよう頑張ってるわけじゃないですか。だけど響かない。

その時に思い出してもらいたいこと。これ宣伝に関わることなんで、アーティストはさっき言ったように宣伝マンじゃないから、A&Rマンじゃないから、それは最低限のことしかできないけど、最低限のことはさすがにやっといたほうがいいんだけど、そもそも曲の書き方、宣伝につながっていく書き方が必要なんですよ。

それが、ストーリーなんです(続く)。

プロフィール

榎本幹朗(えのもと・みきろう)

1974年東京生。Musicman編集長・作家・音楽産業を専門とするコンサルタント。上智大学に在学中から仕事を始め、草創期のライヴ・ストリーミング番組のディレクターとなる。ぴあに転職後、音楽配信の専門家として独立。2017年まで京都精華大学講師。寄稿先はWIRED、文藝春秋、週刊ダイヤモンド、プレジデントなど。朝日新聞、ブルームバーグに取材協力。NHK、テレビ朝日、日本テレビにゲスト出演。著書に「音楽が未来を連れてくる」「THE NEXT BIG THING スティーブ・ジョブズと日本の環太平洋創作戦記」(DU BOOKS)。『新潮』にて「AIが音楽を変える日」を連載。