チケットマスター、秘密のキックバック契約が発覚 独禁法違反の訴訟に痛手か

ライブネーション・エンターテインメント傘下のチケットマスターが、エンターテインメント会場の運営・開発を手がける米オークビューグループ(OVG)と秘密裏にキックバック契約を結び、OVGのパートナー会場にチケットマスターを独占的に使用するよう働きかけていたことが分かった。
このキックバックの取り決めは、OVGのティム・レイウェイク前CEOに対する談合疑惑に関する米司法省(DoJ)の調査の一環で明らかになった。同省が公開した6月5日付の文書では、チケット販売会社の名称は明かされていないが、チケットニュースやビルボードなどはチケットマスターと特定している。
OVGは、契約一時金2,000万ドル(約29億3,000万円)と年間750万ドルを受け取っていたとされる。
この取り決めは、OVGのパートナー会場には開示されておらず、DoJはこの秘密の関係によってチケットマスターが国内全土の多くのアリーナのチケットを独占し、業界全体の競争と透明性を損なったと主張。DoJは昨年5月、反トラスト法違反の疑いでライブネーションおよびチケットマスターを提訴しており、非公表のキックバック契約が発覚したことは同省に有利な材料となる。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「米チケットマスターが談合で会場からキックバックを要求していたことが明るみに(TicketNews)。チケットマスターは日本で言えばぴあのような存在だが、米国での売上占有率は約60%と圧倒的な存在。同社にとって都合の悪いことに、親会社であり世界最大のコンサート会社であるライブ・ネーションと共に米司法省から独禁法違反で提訴されている最中だったことだ。近年、アメリカのチケット単価は2022年からインフレ調整後でも80%近く上昇しており、チケット単価頼みの成長は限界に達しているなか、こうした事態が発生した。ストリーミング(アメリカで音楽サブスク成長鈍化)とライブ頼みで成長してきた先進国の音楽産業にとっても節目と言える事件と言えそうだ」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
関連リンク
- 米司法省公式
- MBW:NIGHTMARE FOR LIVE NATION? QUESTIONS ASKED AS DOJ DISCOVERS TICKETING ‘KICKBACKS’ IN OVG BOSS BID-RIGGING PROBE
- DMN:Tim Leiweke’s Bid-Rigging Indictment Is Just the Beginning: Oak View Group Also Pocketed Millions In Kickbacks from Live Nation/Ticketmaster, DOJ Documents Reveal
- TicketNews:Secret Ticketmaster kickbacks uncovered in OVG bid-rigging case
- ライブネーション、50億ドルの集団訴訟に直面 司法省の提訴受け
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