TikTok・YouTube特化型の音楽レーベル「SCRAMBLE PLANET」始動 〜ツインプラネット 矢嶋健二氏&インクストゥエンター 田村優氏インタビュー

インタビュー フォーカス

矢嶋健二氏(写真左)田村優氏(写真右)

ツインプラネットとインクストゥエンターが、共同事業としてTikTok・YouTube特化型の音楽レーベル兼IPプロダクションの「SCRAMBLE PLANET」を新たに立ち上げた。

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SCRAMBLE PLANETは、サウンドクリエイター×イラストレーター×インフルエンサーなど、様々なクリエイターを掛け合わせて音楽コンテンツを創出し、音楽を軸とした動画コンテンツを世界に向けて配信、更なる拡散を目指すという。

今回はツインプラネット 代表取締役社長 矢嶋健二氏とインクストゥエンター 代表取締役 田村優氏の両氏に、SCRAMBLE PLANET始動の経緯やその狙い、そしてトレンドを左右するZ世代の傾向について話をうかがった。

 

コラボ楽曲が「TikTok売れ」でSpotify国内バイラルチャート年間1位に

──まず最初に矢嶋さんの簡単なプロフィールをお伺いしたいのですが。

矢嶋:僕がツインプラネットを作ったのは26歳のときなんですが、22歳から26歳までの4年間はつばさレコーズで働いていました。もともと親会社というか代理店会社があって「レコード会社を作ろう」と作ったのがつばさレコーズなんですが、そのときに川嶋あいという路上アーティストがいて、彼女がすごく売れたんですよ。

当時テレビ番組「あいのり」が人気になるタイミングで、主題歌になり、川嶋あいは「I WISH」でソニーからメジャーデビューしました。I WISHは2人組のアーティストとして活動していて、こちらは顔を出さないという戦略だったんですが、川嶋あいは顔出しして、路上という一番リアルな場所で、1000回路上ライブをやっていました。それで、僕はつばさレコーズの立ち上げから関わっていたことで、たまたま社長になったという感じですかね。

──当時、川嶋あいさんはすごい勢いでしたよね。彗星のごとく現れて。

矢嶋:そうですね。当時、つばさレコーズの社員も平均年齢22、3歳とか、半分は大学生で、みんな音楽業界の未経験者だったんですよ。当時親会社の社長が右も左もわからない僕らをひっぱってくれていました。その社長が考えた戦略は、実際は同一人物の「川嶋あい」が、一人はメジャーアーティストの顔を出さない「I WISH」のボーカルとして、もう一人は路上でいつでも会えるインディーズアーティストの「川嶋あい」として活動すること。共通点は「声」。それが、当時大きな話題ともなり、一気に人気が出ました。その戦略は、僕の企画をつくる上での原点となっていますね。

──それって何年ぐらい前ですか?

矢嶋:2002年、2003年ぐらいですから、18年ぐらい前ですね。僕は23ぐらいとかだったので何もわからずやっていました。

──そして、現在はツインプラネットの代表をされていますが、ツインプラネットはどういった会社なのですか?

矢嶋:弊社は「IPエージェンシー」として、人・物すべてをIP=知的財産と捉え、タレントの鈴木奈々や須田亜香里、ぺえ、よしあき・ミチなどが所属していたり、いわゆる「刀剣乱舞」のような人気のIPを活用してカフェ事業を行ったり、指原莉乃さんや渡辺直美さんのコスメやカラーコンタクトなどの商品開発を行ったりと、様々なビジネス展開をしています。共同IPとしてはアソビシステムと一緒に「新しい学校のリーダーズ」をやったりしています。ですから、自社でやるものもあれば、人気のIPを活用して新しいビジネスにしたり、一緒に作っていったりと大きく分けて3つのビジネスをやっています。他のIPを活用する場合は、「そのIPを活用してこのような企画にしたらどうですか?」と提案して代理店的な仕事もしますね。

──今回、SCRAMBLE PLANETを矢嶋さんと田村さんで始めるきっかけはなんだったんですか?

田村:実は以前から矢嶋さんと「クリエイターやインフルエンサーを中心とした音楽や映像のプラットフォームみたいな物を作りたい」と話していたんですね。今はTikTokとかすごい勢いで流行っているじゃないですか?そこからいろいろな楽曲やクリエイターが日々生まれているので、そういう人たちやインフルセンサーの人たちを一緒にかけあわせて、色々な音楽やコンテンツを作っていきたいね、という話を去年の11月ぐらいにしていたんです。

──つい最近の話ですね。

田村:そうなんです。本当に昨年の11月とか12月に「やろう」と決まったんです(笑)。SCRAMBLE PLANETは毎回アーティストやコラボ相手が変わるみたいなイメージのプラットフォームです。

矢嶋:SCRAMBLE PLANETは、TikTokクリエイターやインフルエンサーたちとともに、「この曲だけ歌ってみよう」とか、もっと気軽に自由な発想で作品を作っていこうという発想ですね。

昔だったら「私、職業アーティストです。これだけで食べていきます」みたいな人じゃないと片手間にやっているみたいなイメージになったじゃないですか? でも「YouTuberだけれど歌が上手いから1回やってみようか」みたいな企画をやっていくのがSCRAMBLE PLANETです。今、企画をしているのは、ある有名YouTuberが実はボカロが大好きで、もうボカロオタクなんですね。でも、これってYouTubeでは言ってないんですよ。

──公表していないんですね。

矢嶋:そして歌もすごく上手いというYouTuberがいて、田村さんの会社にはボカロPやクリエイターがたくさんいるので、そのYouTuberが好きなボカロPと組み合わせて、SCRAMBLE PLANETから曲を出そうと計画中ですが、そういう色々な組み合わせを作っていくわけです。

──なるほど。アーティストの生き方とか考え方に主眼を置くのではなく「この組み合わせは楽しそうだからやってみない?」という。

矢嶋:そうです。「よかったら、1回やってみる?」みたいな(笑)。そういう面白い人たちがたくさん集まってくる場所がSCRAMBLE PLANETであると。去年から頻繁に「TikTok売れ」という言葉が出てきましたが、その象徴ってやはり音楽なんですよね。例えば、田村さんが手がけているハニワ(HoneyWorks)は、TikTokで知らない人はいないぐらいバズって、再生数は何億再生とかなんですよ。

──すごい再生回数ですね。

田村:そうですね。“夜のひと笑い”というYouTuberがいるんですが、HoneyWorksのメンバーがその“夜のひと笑い”のファンで、「じゃあ一緒に曲を作ってみようか」と作った「ミライチズ」という曲が去年Spotifyの国内バイラルチャートの年間1位になったんです。国内ストリーミング再生回数1億回再生いっていて、去年すごく流行ったんです

矢嶋:それはまさにTikTokが火をつけたんですよね。ですからYouTuberとTikTokの相性もいいですし、HoneyWorksとTikTokの相性もよかったという、それが見事に組み合わさったパターンなんですよね。僕はその偶発的にできたようなことを予定調和で作っていける遊び場所があったら面白いと思っているんです。

──今までレコードメーカーや大手プロダクションがやってきたような、「これ!」と思った才能を長時間かけてコツコツ育成するみたいなことは一切考えていない?

田村:そういう考え方ではないですね。

矢嶋:もう、その子自身にストーリーがあるじゃないですか?無名な子というパターンもあるかもしれないですが、ある程度インフルパワーが強い子だったら、すでにその子のストーリー自体があって、その子が好きな人と組んでみたりとか。もちろん好きはわからないですけど、やはり好き同志が一番だとは思うんですよ。

── “夜のひと笑い”とHoneyWorksもそうですよね。

矢嶋:でも、初めまして同士でも、思いがけない科学反応は起こると思います。そこは本人たちの主体性を活かせる場所にしたいなと思いますけどね。あまり大人がブランディングを考えて「こういう曲でいこう!」とかじゃなくて。

──まさに出合い頭、自然発生的なエネルギーをぶつけていく感じでしょうか。長期的なビジョンというよりも、まずは面白いことが先というか、そういう作り方ですよね。

田村:そうですね。今は海外だとフィーチャリングとかコラボとかすごく一般的になっています。だからそれに近いような感じですし、僕らがSCRAMBLE PLANETという場を提供するという意識はありますね。

 

大人が考えられない自然発生的なストーリーを活かす

──例えば、その企画に対してメジャーレーベルから「次はうちで」と声がかかる可能性もありますよね?

矢嶋:そうなるかもしれないですよね。

──その子たちのストーリーがもっと長く続いてほしいと思っている人が入ってくれば、そういうことにもなると。

矢嶋:ええ。その子も歌手としての意識が芽生えて「やっぱり歌手1本で」みたいなこともあるかもしれませんよね。

──言ってみればレーベルのキャパシティは無限ですよね。

矢嶋:キャパシティは無限ですね。多分、今後もSCRAMBLE PLANETが面白いことをやっていれば、普段グループとして活動している子も「SCRAMBLE PLANETで、ソロでやってみたい」と言ってくるかもしれないですよね。

──SCRAMBLE PLANETに行くと新しい出会いがあるかもしれませんしね。

矢嶋:そうですね。今までずっとアイドルとして活動してきたけれど、実はボカロPが大好きでみたいな子とか、SCRAMBLE PLANETでやるパターンもあるかもしれないです。

──TikTokに出したらジャスティン・ビーバーからデュエットのお呼びがかかったとか、そういうことだって起こり得るわけですよね。

田村:全然ありえると思います。

矢嶋:TikTok自体が世界に広がっていくコンテンツでもあるので、おっしゃる通り可能性は無限大だと思います。

──これがうまくいくと、当然メジャーも似たようなことをやってきますよね。

矢嶋:今メジャーを見ていると、TikTokでちょっとバズったら、やはり「歌出しませんか?」と声をかけていて、昔に比べるとメジャーデビューのハードルはずっと低くなっているんですよ。

──最近はデジタル担当みたいな方がちゃんといらっしゃいますしね。

矢嶋:「オーディションで優勝したらメジャーデビュー」みたいなのって昔あったじゃないですか?でも最近だとオーディションの課程で「TikTokでどれだけバズったか」とかそういった審査もあるんです。それで予選の段階である程度バズっていると優勝しなくてもメジャーデビューが決まってしまうみたいな(笑)。

──「優勝したらメジャーデビュー」というのがすでに古いのかもしれませんね。

矢嶋:もちろんそういうものもあって良いと思うんですが、メジャーデビューのハードルがすごく下がっているのは確かだと思います。というか、メジャーとそうじゃない違いがなくなってきています。だからこそ「私は今日から歌手デビューするぞ!」ではなくて、「ちょっと歌ってみようかな」というフットワークの軽さがあっても良いと思うんですよね。ハニワのメンバーが声をかけて「ちょっとやってみようかな」みたいな曲が、バイラルチャート年間1位になっているわけですから。

──でもレーベルである以上は、もし成功を収めたアーティストが出たら、当然ライブやその後のマネージメントもSCRAMBLE PLANETで行うわけですよね?

田村:できる限りのサポートはやらせて頂こうと思っています。もちろんそれはクリエイターが希望すれば、ですが。

──希望しなかったら降りてもいい?

矢嶋:本人たちはそれぞれのフィールドに戻ったら稼げるわけですよ。だから、良かったらまたやるかもしれませんし、やらないで自分の場所に戻って稼ぐかもしれないし、全ては本人たち次第なんですよね。

──自由ですね(笑)。プラットフォームでありネットワーク、コミュニケーション…。

矢嶋:ある意味マッチング・プラットフォームかもしれないですね。そう言うとちょっと怪しい感じになってしまいますけど(笑)。

──SCRAMBLE PLANETの第1弾はなんですか?

田村:第1弾はHoneyWorksと、HoneyWorksが見つけた青森の19歳の音莉飴(ねりあめ)という2人組です。2月3日に楽曲の配信をスタートしまして、ウェブサイトにも動画を出していますが、42万回再生されています(2022年5月27日時点)。

──しかも、2月から4月に放送されていた、テレビ東京の番組「#ウルトラマワス」の番組テーマ曲になっていましたね。

田村:そうですね。矢嶋さんが昨年11月、12月にテレビ東京さんとTikTokクリエイターが出演する番組について話し合っていたんですが、じゃあその音楽を一緒にやらせてくださいということで、第1弾が音莉飴になりました。次の展開としては、先ほども少し話に出た某人気YouTuberの方で、その人に僕らが「誰と一緒にやりたいですか?」とかいろいろヒアリングをして、マッチングをコンシェルジュ的にやるって感じでしょうか(笑)。

──コンシェルジュ!なるほど。

矢嶋:マッチング・コンシェルジュってもうひとつ怪しい言葉になっちゃいますが(笑)、そのYouTuberの方からしたら「そんな有名なボカロPと一緒にやるなんて」という感じなんですよね。

──そこって意外と繋がりがないんですか?

田村:意外に繋がってないんですよ。

矢嶋:全く世界が違いますし、そこをまとめるのって意外とできないんです。YouTuberはYouTuberの世界なので。ですから、そのYouTuberも心が躍っていましたね。変な話、YouTuberってもちろん登録数によるんですが、1案件何百万とかでタイアップを受けているわけですよね。でも歌って特別な力があって、自分がやりたいと思ったら、それは案件じゃなくなって、ちょっとした夢になるんです。

──つまり仕事ではなく趣味や夢になる?

矢嶋:やりたかったことだと、そうなるんです。やはり歌ってどこか憧れがあるんですよね。ですから、それは音楽だからこそできるマッチングなんだと思います。これが服飾だったり別のプロダクトだったら多分できないと思います。

──ライセンス料の話になってしまったり。

矢嶋:そうです。条件の話になって「いや、その条件では無理です」となると思うんですよ。

田村:逆に、ボカロPがYouTuberにオファーするというのも一方であるんですよね。好きなYouTuberやインフルエンサーと仕事をしたいから「この人に歌ってほしい」ということも結構あります。そういった相互の組み合わせで、最初は2か月に1回くらいのペースで配信リリースしていこうと思っています。

 

絶対当てようと思っても当てられないのがTikTok

──何人かレコード会社の方々に話を聞くと、みんな「TikTokとどう付き合っていいのか分からない」っておっしゃるんですよ。「YouTubeはなんとなくわかってきたんだけど、TikTokってどうすればいいの?」と何人かがおっしゃっていました。

矢嶋:よく田村さんとも話しているんですが、TikTokって絶対当てようと思っても当てられないと思うんです。それはまさに色々なレコード会社の方々が言うように、当てにいって当たるもんじゃないと思っているんです。本当に「この曲が当たるの?」みたいな感じなんですよ。

田村:確かに(笑)。

矢嶋:たった 1万円で作ったミュージックビデオが、なんでこんなに再生されるのか、みたいな。ですから僕らは「ライトにやっていこう」と話していて、つまり10本やって1、2本当たったらいいんじゃないの?って思っています。

──良い意味で力を入れない?

矢嶋:「当てにいくぞ」と力んで狙うよりも、そっちのほうがいいなと思っています。もちろん、ある程度の土俵は用意します。例えば、指ダンスできる子を仕込んだりとか、バズるような音楽を作ったりとかはもちろんあるんですが、必ずしもそれが絶対正解で、当たる法則だとは限らないので。そうなるとやはり本数が重要で、先ほど言ったように2か月に1回はやりたい、もっと言えば本当は月1でやりたいと話をしています。年間12本やったら1、2本くらいは可能性があるかもしれませんから(笑)。

──年間12本と言わずに、やろうと思ったらもっとできるんじゃないですか?

矢嶋:チームを作ったわけではなくて、それぞれ兼任しながらやっているので専任のスタッフが誰もいないんですよ(笑)。ですから今のところSCRAMBLE PLANETは会社ではなくて、2社のプロジェクトという位置づけです。

──事業部とかチームにしちゃうと、「なんとしても当てなくちゃ」ってなりますものね。

矢嶋:そうです。ですから、企画が当たっていったら会社にしてもいいかもしれないですし、それ専任の人が出てくればいいんじゃないのかなと考えています。法人化とかチームとか、その形を作ってからやろうとするとスピードが遅くなると思っているんですよ。あと、先ほどから話に出ているテレ東のTikTokクリエイターをフィーチャーした番組の開始に合わせようというのもありましたしね。

──なるほど。ダメでも大して損はしないみたいな感じですよね(笑)。

矢嶋:そうかもしれないですね。盤を作って、衣装を作ってとか、そういうこともないので数も作れるという。

──今の時代だからこそできることですよね。そこにキチンと照準を当てているお2人はやはりすごいです。

矢嶋:いやいや。やはりTikTokがあったからというのが大きいです。YouTubeって好みのものを見つけるのってなかなか大変なんですよ。TikTokだといろいろオススメが出てきて、見つかりやすいですね。

──YouTubeってもっと真面目あるいはアカデミックだと思います。

矢嶋:TikTokはもっと手軽な感じですよね(笑)。

──YouTubeって何か知りたいことがあって観たりとか、そういう検索の仕方もありますよね。

矢嶋:まさにそういうことですよね。調べるためにYouTubeを観るみたいな。TikTokはどうしても音楽やダンスが中心になりますね。あと動画もショートなので、発信するユーザーも気楽なんです。ですから動画の投稿数も多いですし、いろいろな人がライトにできるというところが、TikTokの特徴だと思います。多分YouTubeで僕らのことだけをやろうとすると、なかなか再生リストに出なかったり、そこに辿り着くのが大変だと思うんですよ。

──確かにそうですよね。

矢嶋:ですから、まずTikTokできっかけを作るというか、TikTokが玄関メディアとなって、もっと聴きたいなと思ったらYouTubeに行ってフル尺を聴くというのが今の流れですね。

──あと視聴者も時間がないからさっさと観たいですものね。時代のスピード感もどんどん早くなっていますし。

矢嶋:みんな忙しいので、YouTubeもだいだい1.5倍速とかで観たりとか。音楽はさすがに1.5倍で聴くことはないですけど(笑)。ですからTikTokでショートで聴かせて、興味を持たせて、YouTubeでしっかりとファンにさせるというのが、わかりやすい流れかと思います。

──それでも足りない人はライブを観に来てくれみたいなことですね。

矢嶋:ただ、TikTokクリエイターはフォロワーの数に比例して、ファンの数ではないこともありますね。TikTokクリエイターはリアルでイベントやっても人はあまり来ないという方もいます。その動画が好きというだけで、TikTokの中で満足しちゃって、別に会いたいわけじゃないというか。あるTikTokクリエイターの子が、それこそ何百万もフォロワーがいるのに、本を出してイベントをやったら19人しか来なかったと話していました(笑)。

──そういうこともあるんですね…。

矢嶋:ですからフォロワー数イコール人気の数とも言えない部分もあるのが難しいところです。TikTokはYouTubeよりも簡単にフォローしやすいですしね。

──TikTokはメタバースのほうが合っているかもしれないですね。

矢嶋:確かにそっちのほうが相性いいかもしれないですね。わざわざ会いにそこまで行かないといけないみたいなのはダメみたいです。

──あと、露骨にお金が絡んでいそうだったり、大人が裏で糸を引いているような雰囲気って、若い人たちには伝わりますよね。

田村:そう、ちょっと商業っぽいのだと、なかなか難しいんですよ。

矢嶋:いわゆるZ世代の子たちって、大人が作った予定調和のゴールに対してイケてるって思わないんですよね。ですから、もっと自然な流れのほうが気楽に受け入れられると。

──そういう気楽なノリと、すごく作りこんでいるものと両極端になっているかもしれないですよね。

田村:だからこそ僕らもより間口を広げてやっていかないといけないんだろうなと思っています。

──間口を広くとおっしゃいましたが、どのジャンルの人もみなさんTikTokはやっている印象があります。

田村:みんなTikTokerなんですよね。あと、TikTokを見ている人と、ボカロを聴いている人の境がなくなってしまって、Z世代の表参道を歩いているオシャレな人と、オタクの人たちの境もないというか。

矢嶋:「私ファッション好き」って子も実はボカロが大好きとか、イラストレーターが大好きみたいな感じですよね。

田村:ツインプラネットさんにはモデルの人とか、いろいろな方が所属しているんですが、そういう人もアニメを観ていますし、すごくきれいなモデルの方とかも「ボカロ好きです」とか。Z世代はそうなっていますね。

 

SCRAMBLE PLANETでより当たる組み合わせを作りたい

──Z世代の子供たちって、iPadでYouTubeを観ているかと思いきや、プレイステーションやNintendo Switchでゲームをやって「アオキというよくわからない日本人DJが出ていてすごかった」とか言うわけですよ。「それ、スティーヴ・アオキだよ」みたいな(笑)。いつの間にかゲームを通じてDJのライブを聴いているという。

田村:みんなそうですよね。だってフォートナイトでマシュメロとかトラヴィス・スコットが出てきて、それを小学生が観ていたわけじゃないですか?だから本当に、謎のデジタルネイティブになっているんですよ(笑)。

──謎のデジタルネイティブ(笑)。

田村:今は生まれたときからiPadに触れられるわけですからね。そういう環境になったというのがありますよね。

──そうなるとTikTokで音楽を見つけるのは、彼らにとっては当たり前過ぎるんでしょうね。

矢嶋:そうなんです。多分、インディーズとかメジャーということすらわからないと思うんですよ。この曲がどこのレーベルか、とか関係ないじゃないですか?単純にいいと思ったものを聴くだけなので。

──昔の音楽業界は、ラジオ局にレコード盤やCDを持っていて、曲をかけてもらうためにお願いしていたわけじゃないですか? あの時代から考えたら随分変わってきていますよね。

田村:確かにそうなんですが、今、テレビ東京さんと番組を一緒にやらせてもらっていますけど、ラジオ局の人とかたくさんの媒体と、是非いろいろな形でご一緒したいなとは思っています。

矢嶋:今はメディアとの組み方ひとつとっても多様化している状態で。このラジオだったら絶対に売れるとか、このテレビだったら絶対売れるということもなくなってきていますしね。ただ組み方次第では、そのIPを最大化してくれる要素は持っていると思います。

──先日、テレビ東京「#ウルトラマワス」番組内のオーディションをやっていましたよね。これはどういったオーディションだったのですか?

田村:これは「#ウルトラチャレンジ」というタグをつけて、TikTokに投稿してもらった中から、僕らや番組の人たちが選ぶというオーディションです。

矢嶋:このオーディションも新しいと思うんです。ようは「#ウルトラチャレンジ」と書いてくれたら、僕らは観るので、あまり応募するという感覚じゃないんですよね。ですから、色々な人たちから応募があって、課題曲じゃない投稿をしてくれている人とか、歌じゃなくて踊っているだけとか(笑)。

──(笑)。

田村:そういった謎の人もいっぱいいるんですが、そこも含めてすごく面白いんですよね。

矢嶋:オーディションに参加する子たちもハードルが低いと思います。事前に応募項目を書いて、何かに投稿してとかじゃないので。それで顔を出したくないということだったら別に出さなくても良いですしね。

──今までやっていた投稿の延長でできますし、気軽に応募できますよね。

矢嶋:そうですよね、プロフィールゼロで歌だけですから(笑)。もちろん選考が進んだらプロフィールはもらいますけど、まず入口のハードルを低くすることは意識しました。そこでハードルを上げたら、単純にカラオケへ行って応募用の動画を撮っている人と変わらないですからね。

──面白いです。で、いざマッチングさせるとなったときがプロとしての技ですね。

矢嶋:多分そこが僕らの強みだと思いますし、他ではできないマッチングをやっていくことが、このSCRAMBLE PLANETの特徴になると思います。予測できなかった組み合わせや、普段絶対に書いてくれない大御所の方に遊び感覚で曲を書いてもらうとか、そういうことがSCRAMBLE PLANETだったらできるのかなと思っています。

田村:SCRAMBLE PLANETからヒットが出るとより楽しくなると思いますし、ずっと続けられると思っているので、より当たる組み合わせができたら良いなと思っています。

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