広告・取材掲載

広告・取材掲載

画像生成AI「Stable Diffusion」、方針を転換 訓練データのオプトインとアーティスト補償を呼びかけ

ビジネス 海外

画像生成AI「Stable Diffusion」を手がける英国のスタビリティーAI(Stability AI)のプレム・アカラジュCEOが、フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで、アーティストの権利に関するアプローチにおいて顕著な変更を示した。

同社はスクレイピング(ウェブコンテンツから特定のデータを自動抽出)による訓練素材の入手で著作権訴訟を抱えており、クリエイターへの補償を拒否する同社の姿勢に反発し、元執行役員らが離脱する事態が起きた。

2024年6月に着任したアカラジュCEOは、「アバター」などの特殊効果を手がけたWētā FXのCEOを務めた経歴の持ち主。ライセンスや報酬と並んで、クリエイターのためのオプトイン(著作権者の同意を得てデータを使用する)システムを提案している。同社が既にインターネット上で利用可能な著作権で保護されたコンテンツの大部分を収集していることを考えれば、非常に便利なシステムだ。

アーティストがマーケットプレイスやポータルを開設し、訓練素材としての使用を許可してライセンスし、報酬を得られる仕組みの開発に取り組んでおり、コンテンツの追跡とライセンス供与のため、SpotifyやShazamなどに類似した手法を模索しているという。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「世界の音楽業界ニュースはAI関連ばかりになりつつあり、日本の温度感と乖離が始まっているが、音楽産業にも関わる経営判断が画像生成AIで評価の高い「Stable Diffusion」で起きた。Stability AI社のアカラジュ新CEOは映画「アバター」のSFXなどを手掛けたコンテンツXテクノロジー系の出身だが、AIの学習材料になることをクリエイターがオプトイン方式で選び、報酬を得られる仕組みを整えると発表。これまで大手AIは海賊版を含む「インターネットすべて」を学習材料にして、クリエイター側はオプトアウトしたいなら裁判をするしかないし、その裁判でも事実上オプトアウトできないという状態が続いていた。Stable Diffusionも多分に漏れず裁判を受けるなか、クリエイターへの補償を認めない経営方針に反発する執行役員が離脱する等、社内でも混乱が起きていたところに、こうしたタイプの新CEOが登場したことになる。Sunoなどでもオプトイン形式の権利者用マーケットプレイスが登場するか注目したい」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。

関連タグ