block.fm 2周年 — ダンスミュージック総合情報サイトにリニューアル DJ、プロデューサー ☆Taku Takahashi インタビュー

インタビュー フォーカス

☆Taku Takahashi
☆Taku Takahashi

「ダンスミュージック」という軸からブレないことを徹底的に心がけた


ダンスミュージックのリスナーに絶大な人気を誇る「block.fm」が先日2周年を迎えた。それに伴い「インターネットラジオステーション」から「ダンスミュージック総合情報サイト」へと大幅にリニューアルを実施、RADIO機能を引き継ぎながらも、よりユーザービリティやコンテンツが充実し、デザインも刷新された。
海外ではダンスミュージックを起点としたモンスターイベントが定着し異様な盛り上がりをみせる中、今後国内のシーンはどのように展開していくのだろうか。
そこで、今回はシーンにおいて大きな存在感を示し続け、block.fm主宰者である☆Taku Takahashiにロングインタビューを敢行。block.fmの役割から、国内のシーンや若手のDJ事情、風営法について、アーティストとマネタイズにまつわる話にいたるまで、幅広く語って貰った。
(取材 Takuya Yashiro、取材・文 Jiro Honda)

PROFILE
☆Taku Takahashi


DJ、プロデューサー。1998年にVERBALとm-floを結成。
ソロとしても国内外のアーティストのプロデュース、Remix制作を行う。
レーベル「Tachytelic Records」、「TCY Recordings」、ダンスミュージック総合サイト「block.fm」主宰。

 

  1. 「何が必要か?」が見えてきた意味のある2年間
  2. ダンスミュージック好きのライフスタイルを少しでも豊かにしたい
  3. block.fmの目標は「みんながイベントやパーティーに遊びに行くようになる」こと
  4. シーンがあるからこそ、自分も続けていける
  5. 入場料を払って見に来て貰うだけの価値をもっと見出すべき
  6. 本当はアーティストがビジネスの話なんてしなくていい状況が理想なんですよ(笑)

 

「何が必要か?」が見えてきた意味のある2年間

——block.fmが2周年を迎えられて今回リニューアルとなりましたが、2年間運営をなさってみていかがでしたか?

☆Taku Takahashi:おかげさまでこうして2年間続けられたというのは、自分にとってはすごく意味のあることだと感じています。その反面、理想の状態にはまだちょっと足りないと思っていて、もっとユーザーが使いやすくDJ、クリエーターのみなさんにとっても、自分たちの情報をblock.fmを利用してもっと届けやすいものにしたいんですね。それで、このリニューアルの機会にそういったところをより強化しようと。

——なるほど。

☆Taku Takahashi:正直、運営してみて気づくことがいっぱいあるんですよね。今後も恐らく運営していく中で、「もっとこうしていこう」という風になっていくと思うんです。

だから「何が必要か?」ということが色々と見えてきた2年間でしたね。ダンスミュージックにここまで特化したWebメディアは今まで日本になくて、この2年間でダンスミュージック、エレクトロニックミュージック専門の月刊誌が遂になくなってしまったという状況の中でも、block.fmが残っているというのは、やはりダンスミュージックが大好きな人たちがいて、そこにDJ/クリエーターの志がリンクしているからだろうと思います。もっと言えば、ダンスミュージック全体でさらにマネタイズできる形を作っていかなければいけなくて、それは今後、私たちの重要な課題ですね。

——リニューアル後はどのように展開されていくんでしょうか?

☆Taku Takahashi:今回のアップデートは3段階に分かれています。まず12月2日にサイトのベース部分に関する最初のアップデートを行いました。

今はダンスミュージックでも情報がとても多くなっていますが、block.fmは日本の他のダンスミュージックサイトと連携して色々な情報が集まるようにしています。今回の一連のアップデートで重要視しているのは、それらの情報に対するユーザーのアクセスのしやすさです。

その新しいストラクチャーですが、まずはダンスミュージックのジャンル、例えば、よくクラブへ行っている人はあるDJが何をまわすかというのが分かりますが、「このジャンルが好きだけど、どのDJがそれをまわすか分からない」という場合もあったりするので、そこを紐付ける仕組みもしっかりとしています。

日々更新される情報は、ラジオ番組情報だけでなく、ダンスミュージックのニュース、イベント、リリース、オススメ曲等がフィードスタイルでどんどん順番に掲載される仕組みになっています。

blockfm
—デザインも刷新された block.fm トップページ

さらに、ジャンルとニュースはソートできるようになっていますので、cookieが残っていれば、前回アクセスした最後の状態でまた新たに閲覧スタートできます。ここまでが、まずステージ1になります。

 

ダンスミュージック好きのライフスタイルを少しでも豊かにしたい

——それが今回12月2日に行われた部分ですね。

☆Taku Takahashi:ええ。次のステージ2ではログインシステムを導入予定です。これによりジャンルやニュースだけではなく、好みのアーティストに関しても情報を得やすくなります。さらにチェックしているblock.fmのラジオ番組が始まる際のアラート機能があります。要は、Facebookでファンページに「いいね!」したり、Twitterでフォローしているような感じですね。好きなアーティストの情報が効率良く入ってくるようになります。

——ダンスミュージックに関する様々な情報がよりパーソナライズドされて提供されるようになると。

☆Taku Takahashi:まさにパーソナライゼーションなんですね。サイトの全部の情報が送られてきてしまうと、自分の知りたい情報が埋もれてしまいます。どんな情報も人によってはゴミにも宝にもなります。ログインシステムによってその情報のソートをできるようにします。あとステージ2では、もう少し色々なことを考えていますが、それはまだちょっと明かせません。

そして、ステージ3はアプリです。これは私がずっと前からやりたかったことで、ダンスミュージックというのは車の中や家の中だったり、どこで楽しんでも良いものなのですが、やっぱりクラブやフェスとかで聴くために作られている音楽だと思うんですね。そういったところで聴くと純粋に気持ちいいし、ちゃんとしたスピーカーやサウンドシステムがあるところで、みんなが沢山集まって聴くのが一番楽しい味わい方だと思います。DJにとってもそこが一番重要なところだと思いますし、そういうクラブやパーティーへ行く人たちのライフスタイルを少しでも豊かにしていける存在になっていきたいなと思っていたんですね。アプリ化することによって、ユーザーがblock.fmを「今日は寒いから家で楽しむ」ではなく、クラブへ向かったり移動しながら楽しむことが出来るようになる。そういう使われ方が理想ですね。

——生活の中に寄り添っていく感じですね。

☆Taku Takahashi:今の日本にはまさにそれがないんですよね。例えば、海外だとビルボードやその国のナショナルチャートには、ダンスミュージックが結構チャートインしているんです。クリエーターがそれ風に作っているものもあれば、実際にクラブで活躍しているトップDJやプロデューサーがメジャーアーティストをプロデュースしているということが多いんです。

テレビやラジオでもダンスミュージックが流れていますし、イギリスのBBCですと、夜中は毎日ダンスミュージックで、週末になると「ダンスミュージックマラソン」といって、ダンスミュージックの番組ばかりが流れています。常に生活の中にダンスミュージックがあるんですよね。

日本の場合は、シンガーやアーティストが「世界で今一番鮮度の高いものをやりたい」と思っている方たちは多いんですけれども、現場で活躍しているDJがプロデューサーとして引っ張られるということがまだ少ないんですね。そこは徐々に変わってくるとは思うんですが。

taku takahashi

——状況にまだ違いがありますね。

☆Taku Takahashi:ダンスミュージックってめまぐるしく変わって、進化していくんですね。それと一緒にDJもトレンドに対して進化していきますよね。でも今の日本ではそのDJとトレンドの進化の過程をオーディエンス側が一緒に体感できない状況にいるんです。

例えば、1年という時間があったらトレンドとDJのスタイルというのは、別のジャンルへ変わってしまうくらい、すごく大きく変化する場合があります。でも実際は突然変異したのではなく、毎日過ごす生活の中で徐々に変わっていくものです。そういう変化の過程もライフスタイルの中でファンやユーザーも一緒に味わえる、楽しめるというのが、すごく重要だと思っています。

——インターネットラジオステーションからダンスミュージック総合情報サイトへリニューアルということですが、ラジオの部分も新しいタイムテーブルをみると魅力的なラインナップですね。

☆Taku Takahashi:DJのみなさんがこうやって参加してくれて、本当にこれはすごいことだと思います。コンテンツとして50組くらいいる状況になっていて、さらにアフロジャック、カール・コックス、アーミン・ヴァン・ビューレン、ニッキー・ロメロも参加してくれます。音はどちらかというとメジャーなものになると思うんですが、この人たちはそれこそ10万人キャパのフェスでやっているDJですからね。

——海外は規模がすごいですよね。

☆Taku Takahashi:本当にすごいですよね。ダンスミュージックオンリーで、10万人規模ということが世界では起こっているんです。そこに関して日本はまだまだですが、日本人のDJはすごく繊細で良質な新しい音楽だったり、アンダーグラウンドの面白いものを探すその目利きの力はすごく強いんです。

——このキャスティングは全部Takuさんがしているんですか?

☆Taku Takahashi:キャスティングはどちらかというとクラブへ足を運んでいるスタッフですね。もちろん私も決めることには関わっていますが、実際にクラブで遊んでいる人が選んでいるので面白いものになります。taku takahashi

 

block.fmの目標は「みんながイベントやパーティーに遊びに行くようになる」こと

——2年前に始めたときと今とでは、周りの応援してくれる雰囲気とか、block.fmに対する理解度というのは大きく変わってきましたか?

☆Taku Takahashi:それは変わってきていると思います。

——手応えがある?

☆Taku Takahashi:ありますね。まず、徹底的に私たちが「ダンスミュージック」という軸からブレないということを心がけました。それによって、業界内で「block.fmはダンスミュージックを知ってもらいたい場所なんだ」ということがしっかりと伝わりました。

もう一つの軸としてブレなかったのが、基本はスポンサーベースでは運営しているんですが、音楽会社からのスポンサーではやらないということです。例えば、音楽会社がラジオの時間枠を購入することができたとしたら、また他のメディアで起こってしまっているようなねじれ状態というか、自分たちがオンエアしたくないものもオンエアしなくてはいけなくなってしまいます。

もちろん自分たちがオンエアしたいものでお金を出していただけるのであれば、それは最高なんですが、やはりそこをOKにしてしまうと頼ってしまうと言いますか、若干自分たちのジャッジが甘くなってしまう可能性もあるじゃないですか。

——それこそ自分たちの軸がブレかねないですよね。

☆Taku Takahashi:音楽会社とは良い関係を保ったまま徹底して一線を引いて、でも「新譜があったらぜひ送ってください、それがオンエアしたいものであればもちろんオンエアします」というような話をしながら、この2年間で信頼は徐々にビルドアップされてきたと思います。同時に海外からの信頼も強くなっていて、海外から「この曲をかけないか?」と曲を送ってきてもらえるようになりました。

情報を発信する場所として、国内外で認めていただいているのは肌で感じています。ただ、私が1番の手応えとして求めているものは、日本でも10万人のフェスができるような状況にするということです。

——実際海外だとすごい規模ですし、とんでもなく稼ぐDJがいますよね。

☆Taku Takahashi:実際に海外では年収1億どころか、1回のギグのギャラが2000万円とか、そういったDJがいる世界なので。数字を言うとちょっと生々しい話ですが…(笑)。ただ、オーディエンスがいっぱい集まらないとDJのギャランティを上げることができないですし、集客が多くないとハコ、クラブ側も運営するのは辛いです。日本でも興行を今よりもっと大きくできるポテンシャルは持っていると思うので、block.fmがそういう状況を作るきっかけにならなければいけないと思います。

——メディアとしては、他にどういった形で収益をあげていくおつもりですか?

☆Taku Takahashi:興行ですね。block.fmで常に音楽が聴ける環境、音楽の情報を提供し、その上で興行を行うという形です。こういうところまでお話するのは初めてなんですが、そもそもblock.fmの目標というのは「みんながイベントやパーティーに遊びに行くようになる」ということなので、興行で収入になれば、パーソナリティーのDJのみなさんにももっとギャランティをお支払することもできます。

WEBや雑誌、ラジオ、どんなメディアでも、これからは興行と密接に繋がっていかないとマネタイズの部分に関しては極めて難しくなるだろうなと感じています。block.fmでは、ラジオや読み物だったり、これからは動画でエデュケーションもスタートしますし、先ほど説明したようにダンスミュージックのライフスタイルを楽しんでもらいたいんです。

そういったメディアとあわせて、実際に足を運んで楽しめるパーティーやフェスという場所があり、そういうイベントが、他のクラブのパーティーに良い影響を及ぼすというように、全部をつなげていきたいんですね。全てがつながらないとライフスタイルにはなっていかないですから。

 

シーンがあるからこそ、自分も続けていける

——つながりでいうと、DJの世代間においてもTakuさんはburnのコンテスト等で若手の育成を本当に熱心にやられていますよね。

burn WORLD DJ CONTEST 2013 JAPAN FINAL

☆Taku Takahashi:DJの次のスターを生みたいんですね。今、20代でヘッドラインできるDJって国内にいないんですよ。

——若手の台頭するマルチネ周辺でも。。

☆Taku Takahashi:彼らのイベントだったらもちろん人は入りますが、その中のひとりがヘッドラインでソールドアウトさせることができるかというとまだ難しいですね。

そもそも様々なファクターも大事になってくると思うんです。オリコンのTOP10にダンスミュージックのものがもっと入るような状況になるとか。正直、ここ数年でダンスマナーのものでオリコンTOP10に入ったのは、中田ヤスタカ君周りのものとm-flo以外無いんですよね。

taku takahashi

——やはりTakuさんは日本のダンスミュージックのシーンに対する責任感を感じているんでしょうか?

☆Taku Takahashi:責任的なことを感じたりもしますが、やっぱりシーンにおいて個々が頑張っていわゆる「公園」みたいな場所を作らなければならないんですよね。それがblock.fmということです。そもそも、block.fmの「block」は積み木(ブロック)を重ねてお城とかを造っちゃおうという意味での「block」なんですよ。リスナー/お客さんにとってもツールとして欲しいし、DJ/クリエイターサイドにもツールとして使ってもらいたいです。

例えば、私やヤスタカ君だけが業績をあげたとしても、その瞬間はいいかもしれないですが、やはりシーン自体が大きくなっていかないと、最終的には自分の居場所がなくなるかもしれない。シーンがあるからこそ、自分も続けていけるんですよね。

block.fmをみんなが使えるものにしたいという気持ちはすごくあるのですが、私の中ではボランティアや人助けでやっているわけでもないんです。慈善事業というわけではなくて、自分の大好きな音楽をずっと長くやっていきたい、自分が楽しみたいという思いがあるので、シーンの拡大、活性化に取り組んでるんです。

——なるほど。「ネットを経由したラジオ」という点では、Pandora等が海外で普及しつつあるようですが。

☆Taku Takahashi:block.fmではやはりDJが実際に連載としてレコメンドするので、そういう意味ではレコメンドの仕方が違いますよね。人の気持ちが取り払われて、よりアルゴリズムに寄ったデータ主義というのは、現実的ですし一つの手法だと思います。ですが、block.fmでは人間が「私はこの音楽が好きだけど、君はどう思う?」というのをシンプルに発信している環境だと思います。

——block.fmのユーザーは海外を含めるとさらに増えていく可能性がありますね。

☆Taku Takahashi:そうですね。既に国内ではダンスミュージック人口で考えると相当多い割合で聴いていただいていますし、まだ伸びる可能性がすごくあります。アジアや海外エリアも含め、今回のリニューアルやアプリ化で、もっと変わっていくと思います。しゃべりがあって解説や記事があって、という風にオーガナイズされたインターネットラジオ局があまりないんですよね。しかもトップDJが毎週出演するのは、まずアジアにはないです。

——では、今後は多様な言語に対応したチャンネルも作られる予定ですか?

☆Taku Takahashi:実はそれがステージ3に入っているんですよね。日本のDJって6年くらい前まで韓国とか台湾とかによく呼ばれていたんですよ。でも、最近はヨーロッパのDJばかりで呼ばれなくなってしまったんですよね。

block.fmでは、このラインナップだったら絶対アジア圏に響くだろう、というような海外のDJたちも参加してくれているんですね。だから聴いてもらえるところもあるので、日本のDJやクリエイターをもっとアジアに紹介していきたいですね。

 

入場料を払って見に来て貰うだけの価値をもっと見出すべき

——話は変わりますが、風営法違反でクラブの摘発は未だ続いていますね。

☆Taku Takahashi:風営法のダンス規制を緩和していこうという動きは出てきているので、少しずつ世論も変わってきています。

——ダンスミュージックに偏見を持ってしまうような法律があることが、ダンスミュージックがいまいちメジャーにならない理由の一つになっているのでは?

☆Taku Takahashi:法律が先か、悪いことをしてしまう人が先か、鶏が先か卵が先かみたいな話になってしまうんですが、残念なことに、実際に暴力事件が起きてしまったりだとか、DJが覚せい剤で捕まってしまったりだとか、日本はそういう所に対してすごく潔癖な国なので、マイナスイメージが先行しちゃっているんですよね。

私は風営法を改正するべきだと思っています。ただ、単純に改正するだけでは危険だと思うんですよ。先日ナインティナインの岡村さんがDJプレイ中に瓶を投げつけられて怪我をしたというニュースがありましたよね? クラブで瓶に入った飲料とか、凶器になりうるようなものを販売するのは止めた方がいいと思うんですよ。プラスチック容器にするとか。あとは、入り口で必ずしっかりした持ち物検査をやるとか、金属探知器を使うとか、そういった規制をするべきだと思うんですよね。クラブを運営するにはライセンスが必要で、ライセンスを取得するには金属探知器を置かなければいけない、この人数に対してセキュリティは何人いなければいけないとか、そういったしっかりしたレギュレーションを作って朝まで営業する、というようにするべきだと思います。

——一度マイナスなイメージがつくと、覆すのには苦労します。

☆Taku Takahashi:よりコンプライアンスが求められる社会になってきていますしね。でも、実際ロックも「こんなのを聴いていたら、ろくな大人になれない」って言われていたじゃないですか? でも、60年代70年代は今ほどコンプライアンスが強くなかっただけで。もちろん、法律は国民を守るためにあると思うんですが、実際に国民の利益を損なっているものもありますよね。

——色々な問題が入り組んでいますよね。

☆Taku Takahashi:法律の問題は大きなファクターであるとは思うんですが、個々がどうやったらもっと面白いことをお客さんに提供できるか、ということを意識することも大切だと思います。DJブームというのが以前ありましたが、そこからもう時間も大分経っているので、曲と曲をつなげるという伝統的なDJのスタイルももちろん大事ですが、次のレベルの見せ方やプラスアルファに取り組んで、もっと個々のDJたちが入場料を払って見に来て貰うだけの価値を見出していかないといけないと思いますね。世界では既にお金を払うだけの付加価値を実際に付けて行っているので、そういうところも重要なんじゃないですかね。

あと、イベントでも海外のTomorrowlandは10万人規模で、チケットもそれに見合うだけの価格ですが、VIPやVVIPチケットも用意されているんです。大金持ちのニーズ、パーティーを騒ぎたい人のニーズ、それぞれに応えることのできるように工夫されていますね。

Tomorrowland 2013 | official aftermovie

 

本当はアーティストがビジネスの話なんてしなくていい状況が理想なんですよ(笑)

——若いクリエイターやDJって自分たちのまわりでそこそこ楽しめいればいいかな、というような雰囲気もある気がするんですが、その辺りについてはいかがでしょうか。

☆Taku Takahashi:やはり若手のはっきりした成功例がまだないですからね。ネットでダンスミュージックを作って一部で盛り上がった後、メジャーと契約して何十万枚も売れるとか、興行でソールドアウトになるとか、世界をサーキットできるようになるとか、そういった成功例やゴールがないですし、だから何となく居心地のいい環境にとどまったままになるのかもしれないですね。

若い人たちに夢のある場所をきちんと見せることのできていない、私を含め大人と先輩アーティストに責任があるんじゃないかなと思いますね。海外では先ほども言ったように1時間のセットで1,000万円稼ぐ人が実際にいますからね。

世代的にガツガツしている性質ではないということも関係していると思いますが、中にはゴールがなければ自分たちで作るんだというぐらいの人たちもいるので、私自身も海外を意識しながら活動して世界とつながって、そのつながりをさらに若い人たちにつなげていけるような環境を作っていきたいですね。そういう意味でもblock.fmがあるのとないのではすごく違いがあると思います。

——メディアがあるからこそできることもありますものね。また、Takuさんはアーティストとしてもビジネスやマネタイズのことなど、ともすればタブー視されがちなことも積極的に発信されますよね。その根底にある意識というのは?

☆Taku Takahashi:そのマネタイズという言葉ですが、タブーな雰囲気があるのはマネタイズ=迎合というイメージがあまりにも定着しているからだと思うんですね。でも、マネタイズは決して迎合ではないですし、私が言っているのは「自分たちがやりたいことでお金を稼げる環境をしっかり作っていこう」ということなんです。自分たちがやりたいこと=お金が稼げない・諦める、ということの方が良くないことだと思うんです。海外の人たちはそういう環境やシステムを実際作って色々なことができていますから。

——「音楽」と「お金」が結びつくとネガティブな反応があったりもします。

☆Taku Takahashi:もちろん色々な感じ方があると思います。ですが、私の感覚では「好きなことでお金を稼げる状況を作ろうとする行為の何が悪いんだろう?」と思います。どうしてもそういう風潮が強くなってしまうのは、今の日本では好きなことでお金を稼げる状況というのがますます難しくなってきているからだと思いますね。

——でも、Takuさんの発言は音楽シーンに刺激を与えていると感じています。

☆Taku Takahashi:いや、本当はアーティストがビジネスの話なんてしなくていい状況が理想なんですよ(笑)。アーティストのまわりに知恵を持った、良い意味で悪いオジサンというか(笑)エージェントがいて、しっかり環境を作り出せているのが理想なんです。残念ながら日本にはそういう状況がないんですよね。

何をやっても批判されますし、私自身も色々批判はしますからね(苦笑)。私は自分の信じたことを言っていくしかないですし、そこは腹を括るしかないなと感じています。

taku takahashi

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