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インディーズが詐欺師の標的に 本物のミュージシャン名義でAI音楽がリリース

ビジネス 海外

音楽ストリーミングサービスで、公式アーティストページにAIトラックが掲載されるケースが相次いでいる。実績のある(しかし特に「スーパースター」ではない)アーティストが詐欺師に狙われる傾向が着実に強くなっており、亡きアーティストの「新曲」が突然カタログに掲載される事態も起きている。公共放送BBCが8月23日伝えた。

フォーク・シンガーソングライターのエミリー・ポートマンは、リリースしていない新作の感想がファンから届いたことを機に、不正なAIトラックが自身の名義でリリースされていることに気付いた。配信プラットフォームに削除を申し立てると、複数社が迅速に対応したものの、Spotifyは削除に3週間かかったという。

Spotifyは、同名の別のアーティストの曲が誤って追加されたもので、通報後に削除されたと説明。ポートマンはその主張の正当性に疑問を呈している。

ここ数週間で偽の楽曲が投稿されたフォーク・ミュージシャンには、ウィルコのフロントマンであるジェフ・トゥイーディー、ファーザー・ジョン・ミスティ、サム・ビーム(アイアン&ワイン)、テディ・トンプソン、ジェイコブ・ディランらがいる。

リリース元は全て同じようで、同じスタイルのAIアートワークが使われ、クレジットされているレコード会社3社のうち2社は明らかにインドネシア語という。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「TOTOのSpotify公式にAIトラックが無断でアップされた報道があったが、その後も主にインディーズアーティストを中心に同様の事件が起きているようだ。AIに曲を大量に生成させて音楽配信にアップし、AIに大量再生させて売上をかすめ取るストリーミング詐欺の被害額は3500億円前後と日本の音楽ソフトウェア売上を超える勢いになっているが、Spotifyのアーティストページを乗っ取るのは新手の手法と思われ、対応が求められている。疑惑のAI曲のリリース元を見るとインドネシア語になっているというので調べたが、同国がストリーミング詐欺の拠点となっている報道は見つからなかったものの、インドネシアにクリックファームがあってSNSの回数稼ぎに利用されているとCBSが報道しているのが見つかった。クリックファームはストリーミング詐欺の中心プレイヤーで、かつてはバナー広告やYouTubeを標的にしていたが、Xや音楽サブスクも標的にするようになっている」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。