ストリーミング詐欺対策、インディーズアーティストが巻き添えに

年間20億〜30億ドル(約3,130億〜4,690億円)の損失をもたらしていると言われるストリーミング詐欺の撲滅に向けてDSP(デジタル音楽配信事業者)などが対策を講じる中、罪のないインディーズアーティストらが巻き添えになっている。敏感な自動検出システムにより、不正をしていなくとも楽曲が削除される事態に直面している。英紙ガーディアンが6月3日伝えた。
複数のアーティストが、特定の楽曲の再生回数が跳ね上がったとして、DSPから操作の疑いがあるとして通告、または楽曲が即時削除されたと報告している。Deezerのように削除要請前に手作業で検証するDSPもあるが、多くのシステムは不正であることを前提とし、不服の申し立ても困難であることから、アーティストたちは諦めるしかない状況となっている。こうした状況が、いずれにせよ収益が少ない主要ストリーミングプラットフォームを放棄し、Bandcampのようなサービスに集中する流れを作り出すとの見方もある。
B2Bディトリビューターの「FUGA」のダレン・オーウェンCOOは、インド、ベトナム、タイ、東欧の一部などがクリックファーム(再生回数などを水増しする組織)の温床になっていると指摘。現在では、不正行為への対処が業務量の50%を占めていると述べた。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「AIなどを使い大量の楽曲を音楽配信にアップロードし、東南アジアや東欧のクリックファームを利用して再生数を取り、音楽サブスクから売上を掠め取る。せこい話だがその被害額は年間20億〜30億ドル(約3,130億〜4,690億円)で世界の音楽ストリーミング売上の1割に達する。さらに音楽配信やディストリビューターがこうした詐欺ストリーミングをAIで検知して削除するのにインディーズ・アーティストが巻き込まれ、不正をしていなくても削除される事態が起きていると英ガーディアン紙が伝えている。AIやスタッフの増強だけでは対応しきれる規模でなく、根本原因のクリックファームを世界的に取り締まっていく必要があり、もはや政治案件・外交案件の段階に入ってきた」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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