IFPIトップ、インドのストリーミング収入拡大の必要性を訴え 同国で複数のオフィシャルチャート立ち上げへ

国際レコード産業連盟(IFPI)のビクトリア・オークリーCEOは8月20日、インドの音楽産業は世界的な成長の次の波をけん引する「並外れた可能性」を持っているものの、そのためには大きな課題に取り組まなければならないと警鐘を鳴らした。インド最大の音楽会議「オール・アバウト・ミュージック」の基調講演を元に、Music Business Worldwide(MBW)などが伝えた。
同氏は、インドの音楽ストリーミング・ユーザーは国内人口の13%に当たる1億9,200万人で、このうち有料会員はわずか2,000万人だと説明。生成AIの悪用やストリーミング詐欺、広告付き無料ストリーミングの圧倒的優位などが、同国の録音原盤市場の持続可能な成長を脅かすリスクだと指摘した。
発展に向けた重要な優先事項として、「有料ストリーミングの成長」「コラボレーションの強化:レーベル、プラットフォーム、クリエイター、政府が協力し、ストリーミング詐欺対策やAIのセーフガード構築」「地域の多様性を支持」を挙げた。
これに伴い、IFPIはインドで複数の公式チャートを立ち上げる計画で、現地のパートナーなどと協力していると明かした。これらチャートには初めて国内外のレパートリーが含まれ、さらにインドの音楽風景の幅広さを反映するようデザインされた、現地語専用の公式チャートも用意されるという。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「音楽サブスクの普及が先進国でほぼ終わり、サブスクの成長領域はインドを代表とするグローバルサウスほか新興国となっているが、そのインドに着目すると課題が山積ということが分かる。約14億7000万人と世界一の人口を誇るインドだが、音楽ストリーミングのユーザー数は人口の13%で、有料会員は人口の1.4%ほど。三人にひとりが有料会員の先進国から比べると相当かけ離れているが、なにせ人口が世界一なので1.4%といっても2000万人と日本の有料会員数を1年ほどで超える勢いだ。ただ、月額も安くインドのSpotifyは1.4ドルほど。苦戦するのは貧困以外の面でも、CDやラジオ・テレビを通り越してまずYouTubeで音楽を無料で楽しむ習慣が定着したことも大きい。しかしかつて先進国もMP3の席巻で音楽は無料で楽しむのが当たり前の状態になり、そこにスマホと基本無料のSpotifyが出てきて状況を変えた。現にSpotifyのインドでの再生数は前年比2000%以上と好調で、YouTubeもYouTube Musicと合わせたフリーミアムモデルが効いて新興国で伸びている。他に何度か取り上げてきたストリーミング詐欺対策も課題だとIFPIのオークリーCEOは指摘した。ストリーミング詐欺の世界の被害額は日本の音楽ソフト売上を超える規模になっており、新興国に拠点があることが分かっている」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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