IFPIなどクリエイティブ産業の連合、EUの汎用AI行動規範を非難「法律本来の意図に対する『裏切り』」

何百万もの著作者、実演家、出版社、プロデューサー、その他の権利者団体を代表する欧州のクリエイティブ産業団体の連合が7月29日、欧州連合(EU)の「AI法」の実施規則を批判する声明を発表した。法律本来の意図に対する「裏切り」だと主張し、実施規則の再検討を求めている。
このクリエイター連合には、国際レコード産業連盟(IFPI)、著作権協会国際連合(CISAC、シサック)、国際音楽出版社連合(ICMP)、欧州のインディーズ音楽業界団体「IMPALA」などが含まれる。
EUでは2024年にAI法が発効。この一環として、欧州委員会は今年7月、域内企業が同法を順守するための手助けとなる「汎用AI(GPAI)行動規範」とこれに付随するガイドラインを公表した。
クリエイター連合は今回、GPAI行動規範とガイドライン、およびEU AI法第53条(透明性と安全性)に基づくトレーニングデータの十分詳細な要約を開示するためのテンプレートに対する不満を表明した。策定に当たり権利者コミュニティーが誠実に関与したにもかかわらず、最終的に公表されたものはクリエイティブ産業が一貫して提起してきた核心的な懸念に対処できていないと主張。「バランスの取れた妥協案ではなく、生成AIの文脈における知的財産権の有意義な保護を提供する機会を逸したものであり、EUのAI法そのものの約束を果たすものではない」と述べた。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「日本なども参加するIFPI(国際レコード産業連盟)も含む著作者、実演家、出版社、プロデューサーなど欧州の音楽産業団体が集結して、EUのAI法の運用ガイドラインが「裏切りだ」と声明を出した。昨年、発効されたAI法に関連して先月7月、企業がどのように同法に対応すべきかガイドラインをEUは発表したのだが、音楽産業側との度重なる協議を無視して音楽など知的財産を保護するよりAIの学習を優先する内容になっていた。これはEUに限った話ではなく、DeepSeekショックを機に中国のAIに危機感を持った各国が覇権競争のために知財保護よりAIの成長を優先する政策を次々と取っていることと軌を一にする。AIが国力、軍事力、経済力を決める時代に、コンテンツ産業にいちいちお伺いを建てていては競争に負けて国家の覇権を失うという危機感が働いており、何度も書いてきたが、音楽が政治的なスーパーパワーのぶつかり合いに巻き込まれる時代に入っている」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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