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米著作権管理団体MLC、作家8割超が未請求の使用料あり メタデータ企業Muso.AI分析

ビジネス 海外

米著作権管理団体MLCのデータベースに登録されている作家の83%が未払いの著作権使用料を抱えている——。同国の音楽メタデータ企業Muso.AIの分析を基に、Digital Music News(DMN)が10月6日伝えた。

それによると、MLCデータベースに登録された5,000万曲以上の楽曲のうち過半数が録音作品と紐付けられておらず、MLCに提出された2億2,400万件超の録音作品の70%以上が不一致。これは、システムが特定の録音音源(ISRC)を対応する楽曲と作家(ISWC)に結びつけられないため、約2兆7,000億回のストリーミングから発生した使用料が未請求のまま「ブラックボックス」にとどまっていることを意味する。中には、ヒット曲で数百万ドル規模のロイヤリティー支払いが滞っている可能性もあるという。

この問題解決に向けてMuso.AIは、楽曲メタデータと著作権使用料の支払い状況(または未払い)を確認するカタログ監査サービスを市場投入。楽曲のクレジット情報をMLCデータベースと照合し不一致を特定することで、迅速かつ包括的な損害報告書を生成する。

(文:坂本 泉)

榎本編集長

「米著作権管理団体MLCに属する作家の83%が著作権料を受け取れていない可能性。MLCと直接連携している音楽データ企業Muso.AIの分析で分かった。MLCは2018年の音楽近代化法(MMA)成立に基づいて新設された主に音楽配信における作詞作曲の著作権料の徴収・分配を専門とする著作権監理団体。日本のJASRACに相当するASCAPなどとは別の役割を持つ。この83%未払いという一見、信じられない状況は、音楽配信が使う音源のデータ識別子(ISRC)と、楽曲と作詞家作曲家のデータ識別子(ISWC)がうまく整合しないという、音楽業界の知る人ぞ知る頭の痛い課題、メタデータ問題から由来している。メタデータの整理整頓はAIで一発処理できるものではなく、musicmanでもインタビューしたMusic Story社のような専門会社も存在する。83%というのは売上の83%が不明という意味ではなく、売上ベースではBillboardのデータを任されているLUMINATE社が、私との対談の際に「10〜25%」と推測している。なおMLCは政府機関CRBが定めた法定楽曲利用料を許諾交渉不要で利用できるので音楽配信事業者(DSP)が重宝してきたが、Spotifyがオーディオブックと音楽サブスクのバンドルを始める際、音楽側に不利な楽曲使用量をCRBが裁定したのに反発して主だった音楽出版社がMLCを飛び越してSpotifyとの直接契約を選び出している」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。