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Spotify、「ゴーストアーティスト」がプレイリスト支配

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AIバンド「The Velvet Sundown」の騒動も記憶に新しいが、Spotifyのムード・ミュージックなどのプレイリストには「ゴーストアーティスト(架空の名前で活動するアーティスト)」による楽曲が多く含まれている。音楽データ分析ツールを手がけるChartmetricが8月19日伝えた。

Spotifyがキュレーションするプレイリスト「Peaceful Retreat」に含まれる全100曲(8月5日時点)のうち、85曲は認証アーティストバッジを持っているものの経歴の記載などがなく、クレジットされた実在の人物に直接たどり着くことができるのは5曲のみだった。

音楽ジャーナリストのリズ・ペリー氏の著書「Mood Machine: The Rise of Spotify and the Perfect Playlist」によると、ゴーストアーティストはストリーミング・サービスによって開発された、特定のムードに特化した「完璧な」音楽を作るためコンテンツ戦略の一環。Spotifyによる呼び名「パーフェクト・フィット・コンテンツ(PFC)」が定着している。

PFCは通常、既存曲をライセンスするのではなく、ストリーミング企業が雇った作曲家らが特定の指示に従って制作・演奏した楽曲でプレイリストを埋める。

PFCクリエイターのヨハン・ロールは、650近い別名義で曲を発表。ロールの2,700種の楽曲は計150億回以上も再生されており、ブリトニー・スピアーズの総再生数よりも多く、アンビエント・ミュージック最大のアーティストであるエイフェックス・ツインの15倍近くとなっている。

Chartmetricは、ゴーストアーティストやAIが生成した音楽を明確に表示するインターフェイスを備えることが重要だとしている。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「ゴーストアーティストという職業をご存知だろうか?ヨハン・ロール氏は650の名義を持つ「ゴーストアーティスト」で、作成した2700の楽曲は総再生数150億以上ととんでも無い数字を持つ隠れた売れっ子。だが不正をしているわけではなく、Spotifyなどから依頼を受け楽曲を納品しており、それはムード音楽などの公式プレイリストで活用されている。ゴーストアーティストの実入りはそれほどよくない。Spotifyなどから制作会社に買い切りで依頼が来るので、下請けのクリエイターは前払いのみ、あるいは僅かな印税率がセットというかたちだからだ(昨年末のEDM誌など)。私も就寝中は睡眠用のプレイリストをかけっぱなしという口なので、彼ら隠れたクリエイターたちに感謝したい気持ちだ」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。