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音楽業界の累計資金調達額、25年1〜8月は6,000億円に迫る 通年で前年超えも

ビジネス 海外

2025年の音楽業界の累計資金調達額(「業界隣接」分を除く)は、現時点で既に40億ドル(約5,913億円)の大台に達する勢いとなっており、通年では2024年の累計額(46億ドル)を上回る可能性が高い。独自のデータを基に、Digital Music News(DMN)が8月13日伝えた。

同社は、業界内および業界周辺の資金調達に関するデータベース「音楽産業資金調達トラッカー」を展開。「コア(中核)」と「業界隣接」(※AIのアンソロピックや短編動画アプリTrillerなど)で区分している。

7月以降では、AI搭載のDAW「Mozart AI」を手がける英アルトス(Arthos)が73万ドルを調達。ワーナー・ミュージック・グループ(WMG)は米投資ファンドのベインキャピタルと、最大12億ドルの音楽カタログ買収に向けた合弁事業を立ち上げた。音楽フィンテックのbeatBreadは1億2,400万ドルを確保している。

資金担保証券(ABS)の発行を通じた資金調達を含めると、2025年の音楽業界の資金調達額は60億ドル以上に達する。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「2025年も3分の2を過ぎようとしているが(早い…)、ここまでの世界の音楽業界の資金調達額は40億ドル(約5,913億円)の大台に乗り、余裕で昨年を超えそうだ(DMN)。大きかったのが音楽フィンテックのbeatBreadが1億2400万ドル調達。ストリーミング再生数をAIが予測して、それを元にインディーズアーティストが資金調達できるプラットフォームだ。他に作詞作曲の楽曲カタログがストリーミングとSNSに対応して絶好調で、記事にある通りワーナーが投資会社と音楽カタログ買収の12億ドルを確保している。音楽への投資ブームがあったのは20世紀末、ネットが登場したときに音楽配信が投資対象で人気を集めたがファイル共有で爆散。次に大きかったのはSpotifyの登場で、楽曲のレコメンデーションエンジンやプレイリスト関係に投資が集まったが、Spotifyに買収されたThe Echo NestやSonyが売却したGracenoteなど以外はかなりの死屍累々だった。今回の投資ブームは手堅い音楽カタログと世界的には堅調なストリーミング再生数が担保になっているのでリスクは低いと投資主は考えているのだろう。ABSとはこの場合、楽曲カタログなどを担保に証券化したもの。不動産などで使われる資金調達方法だが、音楽カタログが巨大ビルと等しい扱いを受けるようになったというのは音楽不況を通り抜けてきた身からすると隔世の感がある

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。