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トランプ米政権、著作権局トップを解任 AI訓練で著作権保護の素材使用に懸念示した直後に

ビジネス 海外

トランプ米政権が5月10日、著作権局のシラ・パールマター局長を解任したことが分かった。パールマター氏は前日に、ライセンスなしの素材でのAI訓練が著作権侵害に当たる可能性を指摘した報告書をまとめたばかりで、同政権の要職にあるイーロン・マスク氏の考えと対立していることが影響したとの見方もある。米政治系ニュースサイトのポリティコなどが伝えた。

報告書には「膨大な数の著作権保護された作品を商業的に利用し、既存の市場でそれらと競合する表現力豊かなコンテンツを制作すること、特にそれが違法なアクセスによって達成される場合は、確立された『フェアユース(公正な利用)』の枠を超えている」とある。 

このほか、ライセンスを受けていない生成AIが知的財産(IP)の権利者に与える商業的損失の可能性を指摘。AI生成音楽が「市場を飽和させ、本物の人間の芸術性と不当に競合し、デジタルプラットフォームのアルゴリズムを歪め、『安価なコンテンツの過剰供給』を促進する」との見方を示している。 

Music Business Worldwide(MBW)は3月、OpenAIが著作権保護を弱めるようトランプ政権に積極的に働きかけていると報じていた。 

(文:坂本 泉)  

榎本編集長「トランプ政権がパールマター著作権局長を解任。イーロン・マスク氏の意見が通った結果のようだが、パールマター局長はAIはアーティストなどクリエイターを助けるために存在すべきで、音楽などがAIの成長のための餌と捉えることに反対の常識的な立場だったのが嫌われたようだ。米政府がIT産業を優先し、音楽など著作権のあるコンテンツをAIが無許可でも学習できるように持っていこうとしていると音楽産業側は警戒している。英政府も著作物を許可なくAIの学習材料にできる法案を提出済。西側のIT産業からすると、ディープシーク・ショックを機に、国力・軍事力の要としてAIの学習を最優先できる中国系AIの急成長に危機感を強めており、これがアメリカ・イギリス政府の危機感と合致。国益のために通常のモラルとは別の力学が働いており常識論では片付かない状況になっている。既に三大メジャー・レーベルなどが懸命に政府へ働きかけているが、国民の支持を得ていくのが最大の課題となるだろう。音楽や文化を愛する人間は常に多数派であり、我々の幸福を長期的に守るのが国家主義よりも民主主義と信じるなら、回り道に見えてもそれが勝利に繋がるのではないだろうか」

 

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。