ユニバーサルミュージック、第1四半期も増収増益 無料ストリーミングは微増

米ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)は4月29日、2025年第1四半期(1〜3月)の売上高(恒常為替レートベース)が前年同期比9.5%増の29億100万ユーロ(約4,723億5,900万円)になったと発表した。ストリーミング(※無料ストリーミングにおける広告売上の分配)は、収益性が比較的高めの動画プラットフォームから低い短編動画プラットフォームへの消費シフトが続いていることから、微増にとどまった。
売上高を部門別に見ると、音楽ソフトは22億4,100万ユーロで実質10.3%増加。うち、サブスクリプション(※有料ストリーミング配信)は9.3%増の12億5,200万ユーロ、ストリーミングは0.3%増の3億5,300万ユーロだった。ダウンロード・その他デジタルは14.9%縮小。フィジカルは15.4%、ライセンス・その他は29.8%それぞれ増えた。
音楽出版は実質9.5%拡大。マーチャンダイズ・その他は5.1%落ち込んだ。
EBITDA(利払い・税引き・償却前利益、特別損益除く)は実質10%増の6億6,100万ユーロ。これをベースとした利益率は22.8%と、1年前から横ばいだった。
ルシアン・グレンジ会長兼CEOは「弊社の好調な業績、そして将来に対する自信は、世界で最も成功しているアーティストやソングライターを、一貫して育成し、新しく革新的な方法で何十億ものファンと結びつけることで、ブレイクさせるという戦略的計画の実行を反映している」とコメント。不安定な世界経済における音楽の強靭さを、ボブ・ディランの言葉を借りて「嵐からの隠れ場所」と表現した。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「世界最大の音楽レーベルUMGの経営動向を見てると世界の音楽産業の現状が見えてくるのだが、同社Q1は前年比9.5%増。主戦場のアメリカの同時期のインフレ率が3%で、サブスクの値上げも終わっている時期なので、それを勘案してもよい数字だ。先進国で伸び悩みが取り沙汰されているサブスク売上は9.3%増で好調、アメリカ市場頼りからの脱却を打ち出してきたのが奏功したかもしれない。逆に無料ストリーミングの広告売上は噂通り不調で0.3%増とインフレ率未満。これは世界的に動画が長尺から売上の低い短尺へトレンドがシフトしているのが主因。他に気になるのがコンサートが絡むマーチャンダイズその他売上が5.1%マイナス、一方CDやレコードなど物理売上が15.4%増で盛り返してきている。やはり様々なトレンドが感じられる内容だった」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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