名古屋MUSIC FARM 代表 /「Vijuttoke」発行人 榊原雄一氏インタビュー

インタビュー フォーカス

株式会社Foojinrock Music 代表取締役 榊原雄一氏

今年で33年目を迎えた愛知の老舗ライブハウス「名古屋MUSIC FARM」の代表取締役であり、2010年から現在まで112号を発刊し、ビジュアル系(以下V系)シーンにも一石を投じているフリーペーパー「Vijuttoke」の発行人である榊原雄一氏。他にもTV番組「V援隊」やラジオ番組、イベントの制作など、多方面に活躍中の榊原氏に、ライブハウスの現状や昨年実施したクラウドファンディング、そしてフリーペーパー「Vijuttoke」のことまで話を聞いた。

(取材日:2021年7月1日)

ーーまず榊原さんが代表を務めるライブハウスについてお伺いしたいのですが。

榊原:名古屋MUSIC FARMと言う名前のライブハウスで、1988年から愛知県名古屋市名東区藤が丘にて、今年で33年目となる老舗のライブハウスで代表をしております。名古屋と言いましても、名古屋からかなり外れにあるライブハウスなのですが。

ーー名古屋MUSIC FARMは33年の歴史があるのですね。

榊原:MUSIC FARMのOPEN当初は黒夢を始めとするいわゆる「名古屋系」と言われるジャンルを中心にLIVEが行われておりました。30周年の目前の2017年に前オーナーから自分が経営権を譲り受け、今のスタッフと歴史を重んじつつ「関わる全ての人が幸せになれるような」ライブハウス作りをモットーにやっています。30周年の時は「絶叫する60度」と言うロックアーティストが8月全日使っての2マンライブを開催したり、藤が丘商店街のお店とも懇意にさせて頂いたりしながら、ライブハウスの在り方を考えスタッフ一丸となって運営しています。

ーー今のMUSIC FARMにはどんな特徴があるのですか?

榊原:名古屋MUSIC FARMをホームとして活動してくれる(いわゆる地元バンド)をメインとしたブッキングイベントがほぼ日数を占めています。ホームにしてくれているバンドは決して名古屋のバンドマンだけでは無く、この名古屋の外れのライブハウスを「ホーム」と胸張ってLIVEしてくれる岐阜や三重、岡崎などいろんな地域のバンドマンに支えられて、人と人のコミュニケーションから生まれる何かをLIVEに吹き込んでイベントを開催しております。

そしてMUSIC FARMを愛する、バンドを愛してくれて応援してくれる、いわゆる常連と呼ばれるお客様も沢山います。ここは他のライブハウスには無い特徴かと思います。

ーー2020年にクラウドファンディングもやられたのですよね?

榊原:本当に嬉しい事に、目標の250万を24時間で達成、最終的に目標の2倍以上、500万以上の支援を頂きました。頂いた気持ちは今の運営費に、そして何よりその気持ちを胸にスタッフが踏ん張れる勇気を頂きました。

設立当時のスタッフはもう誰もいませんが、ただ32年間この建物で起こった奇跡の足跡を自分たちの番で絶やすわけにはいけないと思ったのがクラウドファンディングをはじめたきっかけでした。愛すべきバンドマンと愛してくれるお客様が帰ってこられる環境を整える事が出来た事、本当に感謝をしております。

ーー今後の名古屋MUSIC FARMの在り方についてはどうお考えですか?

榊原:藤が丘という立地もありまして残念ながら名古屋MUSIC FARMには大手のイベント制作会社からレントホールが入ることはほぼありません。サーキットイベントに名を連ねたこともありません。だからこそ自分の目と耳で1つ1つのバンドと向き合い、これからも音楽、ひいてはエンターテイメントのスタートの地として、この場所から音楽文化を全国に発信出来たらと思っています。あと、現在は感染防止ガイドラインに沿った感染対策を徹底して営業をしております。

ーーまた榊原さんはV系に特化したフリーペーパーVijuttokeもやられていますね。

榊原:はい。先ほどもお話しましたが、MUSIC FARMのOPEN当初は黒夢をはじめ、多くのV系バンドで盛り上がっておりました。自分が経営に携わったのは2005年頃で、その頃実は全くV系の事は知りませんでした。

ただ、そんな中で多くのV系バンドが「MUSIC FARMに憧れています」とか「出演したいです」とお話を頂いて、そんな沢山のバンドを見ていくうちに、このジャンルにはこのジャンルの良さがある事を知り、当時MUSIC FARMの1つの特徴だったV系の雑誌を作って、もっと沢山の人に知ってもらおうと思ったのが、はじめたきっかけです。

ーーこのフリーペーパーも10年以上やられていますよね。

榊原:「気づけばそうなっていました」と言うのが本音ですかね。ここ最近フリーペーパーもかなり減りましたが、とにかく始めたからには続ける事、継続する事を一番と考えていた結果、今に至ります。

ただ、フリーペーパーも続けてこられたからこそ、過去には東海地区では初のサーキットイベント「Vijuttoke!!Festtoke!!(ビジュットケフェスットケ)」の開催だったり、そこから派生してのラジオ番組だったり、今も放送していますが、TV番組「V援隊」の制作だったり、V系のジャンルで色んな事に挑戦して来られました。

ーー現在のV系シーンはどのように感じていますか?

榊原:V系動画配信サイト「club Zy.」を運営している星子(誠一)さんとも最近お話させて頂いたのですが、過去最大の危機に直面しているのかと思います。以前も危機はあったと星子さんの方がお話されていたのですが、その時とは全然違う、本当の危機だとお話されており、今は個々で無く、このジャンルを盛り上げるために一致団結する時ではないかとお話し、「club Zy.」と「Vijuttoke」は現在業務提携して、このシーンを盛り上げる為に現在奮闘しています。

ーー榊原さんはV系に限らず、色んなジャンルでも活躍されていますよね。

榊原:ライブハウス自体の営業は完全にノンジャンルで運営していて、むしろ今はV系が少ないぐらいです。以前、ロックに特化したフリーペーパー「ALIVE」も発刊していたり、ロックのアーティストが所属するレーベルもやっていました。イベント制作などもしていますが、基本そちらもノンジャンルでやっていますね。最近は弾き語りのアーティストやアイドルなどが所属する芸能事務所もMUSIC FARM内に立ち上げました。

ーー素朴な疑問で榊原さんは何故この世界に入ったのですか?

榊原:以前自分もミュージシャンをやっており、とあるバンドでメジャーデビューをした事があったのですが、そのきっかけが名古屋MUSIC FARMであったのもあり、バンドが解散した後、一度MUSIC FARMを閉める話が出ていた時に、前オーナーから引き継いでやらないかとお話を頂き、現在に至ります。

ーーMUSIC FARMにも一度危機があったのですね。

榊原:そうですね。自分が2005年に店長として入った時は、営業日が1日か2日ぐらいでした。とにかく1つ1つ前に進むしかないと思い、ペンキ塗り、事務所の改装、ステージの改装など、毎日何しているんだろう?と思いましたが、今できる事を1歩ずつやっていましたね。

あとは、出演した事があったバンドに毎日電話して、何とかブッキングを増やそうとしていましたね。今も基本それは変わりませんが、あの時が無かったら、今は無いですね。そういう意味では、あの時やっていた事は間違いでは無かったと思うし、こんなご時世でもありますが、V系の危機も今できる事を1つずつやって行けば、その先に何か道が見えてくると思って頑張っていますね。

ーー最後に読者の方々にメッセージをお願いします。

榊原:現在コロナの影響で、ライブハウス、アーティスト、エンタメ全体が厳しい状況ではありますが、これを乗り越えられれば、本当に強くなれると思いますし、絶対エンタメは無くならないと思っているので、それを信じて前を向いて行くだけです。今回は貴重な機会をありがとうございました。

インフォメーション

名古屋MUSIC FARM
住所:〒465-0047 愛知県名古屋市名東区小池町462-5
TEL:052-772-2314
FAX:052-772-9068

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