楽曲を聴くだけでアーティストからお礼(ポイント)が貰える新音楽プラットフォーム「SPOT MUSIC」がスタート

インタビュー スペシャルインタビュー

左から:南雲玲生氏、大関慎也氏
左から:南雲玲生氏、大関慎也氏

株式会社ユードーと、ラジオ局「ZIP-FM」が設立した音楽ビジネス・IT 関係部門を手掛ける新会社ZIP NEXTが共同開発したiOSアプリ「SPOT MUSIC」が8月1日にスタートした。「SPOT MUSIC」は、アーティストがポイントを購入し、楽曲を試聴したリスナーに対して自らポイントを付与するという新しい形のサービスで、リスナーは音楽を聴くだけで報酬得ることができ、アーティストの楽曲プロモーションを支援することができるという新感覚のプロモーションツールだ。これまでの常識を覆す同サービスの狙いとは?

株式会社ユードー 代表取締役社長 南雲玲生氏、株式会社ZIP NEXT 音楽事業部兼IT事業部 チーフプロデューサー 大関慎也氏にお話を伺った。

 

——SPOT MUSICとはどういうものですか?

大関:まったく新しい音楽アプリです。まず、iPhoneでアプリを起動すると、音楽があふれるように流れてきます。この音楽を通じて、アーティストとユーザーを結びつけていきます。
アーティストにとって「SPOT MUSICは究極のプロモーションツール。いろんなユーザーにとにかく聞いてもらえる。そしてファンになってもらいましょう!」
ユーザーにとって「SPOT MUSICは新しい音楽を発見するツール。アプリを開いてあふれてくる音楽をどんどんチェックしましょう!」
というものです。

——それだけだと、今までもYOU TUBEやMy Space、Soundcloudなど様々な音楽サービスがありました。SPOT MUSICとそれらのサービスはいったいなにが違うのでしょうか?

大関:町中でビラを配るとき、ティッシュをつけるか、つけないかで、もらってもらえるかどうか、大きく違いますよね。例えるならYOU TUBEやMy Space、Soundcloudは単なるビラ。SPOT MUSICはティッシュ付きのビラ。

南雲:リスナーさんへは、「ティッシュをつけるから、好き嫌い言わないでとにかく俺たちのサウンドを聴いてくれ。よかったら応援してほしいし、嫌だったら何が嫌なのか教えてよ!」そういうサービスです。アーティストが頑張っても、新しいファンやリスナーを集めることが難しい。だから、自分たちでPRをして解決する、ツールなのです。

——ティッシュですか?具体的に言うと…。

大関:ティッシュではないですが、ユーザーが聞いた楽曲に対して、コメントを記入すると、アーティストからお礼(ポイント)を貰えます。それで、この貯めたポイントがAmazonなどのポイントに変換できます!こちらはさらにユーザーのみなさまが便利に使えるようにいろいろなポイントを今後展開できればと思っておりまして。

——なるほど。コメントを書いたら、即ポイントがもらえるんですか?

大関:いいえ。誹謗中傷なども書けてしまうので、ユーザーが送ったコメントは、アーティストが承認する仕組みになっています。アーティストがありがとうの気持ちを込めて承認するとポイントがもらえます。誹謗中傷などはアーティスト側で削除します。

——そのポイントの原資はどうなっているのでしょうか?

大関:実はアーティストからお金をいただくことになっています。公開チケットと呼んでいまして、1000円〜4800円のプランがあります。この中からユーザーにポイントをバックします。

——具体的には?

大関:例えば1000円プランだと、最大70人にポイントを配布できます。

——最大とは?

大関:実はユーザー1人あたりに何ポイント返すかはアーティストが決めることができます。広く浅く返すか? 狭く深く返すか? を決定できます。また、WEBサイトを見てくれた人にもポイントを返すことができます。

株式会社ユードー 代表取締役社長 南雲 玲生、株式会社ZIP NEXT 音楽事業部兼IT事業部 チーフプロデューサー 大関 慎也

——アーティストがお金を払って、ユーザーにポイントを配る。今までと真逆の発想ですが、お金を払ったその先にはアーティストにとって、なにかいいことがあるのでしょうか? そもそもそれがなければ、アーティストはお金を払ってまでSPOT MUSICを使わないですよね?

大関:SPOT MUSICはアーティストにとって、今までの発想とはまったく違う最高のマーケティングツールです。まずは先ほどから申し上げているとおり、ユーザーにポイントという特典をあげることで、自分の音楽を聞いてもらう確率が飛躍的に、高まります。それ以外にも3つの大きなメリットがあります。

——3つの大きなメリットとは?

大関:まず1つ目は、マスタリングツール。これはユードー南雲さんの凄まじい技術力で生まれたものです! 僕も音楽制作を行っていましたが、本当に専用機を凌駕するツールです。具体的にはコンプ、EQ、リバーブ、エンハンサー、フィルターなど、ラフMIXで仕上げた楽曲もとりあえず、マスタリングして最終調整ができます。あるアーティストは、iPhone向けに音質を最適化できるのは最高だ!と言っていました。

続いて2つ目。分析ツールです。この分析ツールもすごい!アーティストは自分の曲がいつ、どういう年代の人が、1日・1周間・1年でどのくらい聞かれたのか? ということをグラフで見ることができます。究極にすごいのは、再生された楽曲が曲のどの位置でスキップされたのかがわかるということです! もし曲の前半の数値が高いということはイントロ付近でスキップされてしまっている。もし後半の数値が高いということはそこまで聴かれているということがわかってしまうのです! これはSPOT MUSICをマーケティングツールとして、とりあえず製作途中の楽曲を上げてみよう! という用途にも使えます。

南雲:アーティストは、ロジカルに解析をされてしまうのが嫌だという人もいます。一方で、自分のサウンドがどのように聞かれているか興味があるという意見もある。このように初めてだからこそ、賛否両論がありますが、今の音楽業界を考えて、あえてこの部分を提唱し、チャレンジをしました。

最後に、これはSPOT MUSICの「SPOT」という言葉の意味になるのですが、楽曲を登録するときに位置情報を登録します。具体的には、バーチャル上の地図に楽曲をプロットします。この「SPOT」という概念が後々大きな意味を持ちます!

——なぜ、楽曲に位置情報が必要なのでしょうか?

大関:実は、SPOT MUSICは音楽をスポットに置くということが一番大きなポイントなのです。まずユーザーから見ると、自分の位置から半径2km以内の楽曲が表示されます。ということは移動する度にメインに表示される楽曲が変わる。まるで音楽の宝探しをしているように、新しい音楽に触れ合うことができます。

また、アーティストにとっては、この位置情報というのがとても大きな意味を持ちます。例えば、東京の人がこの曲をどう感じるか? 大阪の人がこの曲をどう感じるか? 北海道の人は? 九州の人は? 将来的にはLAの人がどう感じるか? ロンドンの人がどう感じるか? それを感じ取ることができます。音楽はある程度地域性があるので、その場から全国の人へ向けて楽曲が発信できるのは大きなメリットです。

また位置情報については、我々運営側もいろいろな企画を考えています。例えば、ZIP-FMでは毎年「SAKAE SP-RING」という10以上のライブハウス、クラブを借りきって同時にライブを開催するサーキットイベントを行っておりますが、来年はSPOT MUSICを徹底的に活用して、さらに出演アーティストを盛り上げていこうと思っています。具体的には、自分の出演する会場に曲を登録して、MCで煽りながら、もっともっと音楽を聞いてもらうとか。

これはユードーの卓越した位置情報技術によるものなのですが、さらにすごい機能があります。それはSPOT DJ機能というものです。

——SPOT DJ機能とはなんでしょうか?

大関:これはあるユーザーが、ある楽曲を気に入ったら、その曲をそのユーザーが今いる位置に登録できるというものです。例えば、東京のユーザーが札幌駅に登録されている曲を渋谷駅で聞いていいなと思ったら、渋谷駅にもおけるというものです。これにより良い曲はどんどん広がっていくことになります!

——SPOT MUSICで一番実現したいことはなんでしょうか?

大関:繰り返しになりますが、このSPOT MUSICはアーティストからお金をいただくサービスです。アーティストさんから1000円いただいて、聞いてくれた何人かのリスナーにファンになってもらって、結果的にアーティストに3000円を返したい。それが我々の実現したい夢です。そうすれば今、アーティストは食っていくのが辛い時代と言われていますが、応援してくれる人はたくさんいるはずです。そのために、iTunesなどの配信サイトへつなぎこんで、ワンストップで全世界へ配信できるようにしたいと思っております。

さらに、海外での展開をしたいですね! 例えば日本のアーティストが「この曲シンガポールで出したら、どういう反応なんだろう??」、逆に海外のアーティストが「日本でどういう反応なんだろう??」というテストに使ってもらって、国境を超えたプロモーションツールへ発展させていきたいです!

——SPOT MUSIC究極の目標とは?

大関:SPOT MUSICからヒット曲を出したい! と思っております。大げさに言えば、音楽経済を立て直したい。今、音楽業界がシュリンクしていると言われていますが、音楽を聞いている量は変わらないはずですよね! 好きなアーティストの曲は買いたいという欲求も変わらないと思うので、そこの取りこぼしがないようなシステムに発展させたいと思っております。

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