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MUSIC WAY PROJECT韓国編、日本と韓国 何が違う?全員日本人K-POPグループの挑戦

ビジネス 音楽業界

「CEIPA × TOYOTA GROUP "MUSIC WAY PROJECT" Professional Seminar Public Series 1st Edition (韓国編)」

K-POPの世界的成功の裏側には、どのような戦略とクリエイティブ思考が存在するのか。7月22日、「CEIPA × TOYOTA GROUP “MUSIC WAY PROJECT” Professional Seminar Public Series 1st Edition(韓国編)」において、BLACKPINKのデビュー時クリエイティブディレクターを務め、現在はクリエイティブプラットフォームAXIS代表を務めるSJ氏によるセッション「Market Deepdive #1(韓国編)」が開催された。
全員日本人K-POPグループ「cosmosy(コスモシー)」のプロデュースを手がけるSJ氏が語ったのは、グローバル市場で勝ち抜くための戦略的アプローチ。なぜ全員日本人なのか、どう言語を使い分けるのか、実際にいくらかかるのか──韓国アイドル業界の最前線から、クリエイティブディレクションの実践的な考え方が語られた。

  1. 差別化のカギは「本物の日本文化」
  2. 韓国語、日本語、英語を混ぜる新しい言語戦略
  3. 韓国アイドル業界のリアルな投資額
  4. 日本と韓国、何が違う?
  5. デビュー3ヶ月でLA・NY進出
  6. TikTokで4,000万ビュー
  7. まとめ

 

差別化のカギは「本物の日本文化」

BLACKPINKのデビュー時クリエイティブディレクターを務めたSJ氏が、現在プロデュースしているのが全員日本人の4人組K-POPグループ「cosmosy。関東出身2人、関西出身2人で構成され、うち2人はプロデュース101 JAPAN出身。2025年1月にプリデビューシングル「zigy=zigy」、4月にオフィシャルデビューシングル「Lucky=One」、7月にセカンドシングル「BabyDon’tCry=BreakingTheLove」のプレリリースを行った。
なぜ全員日本人にしたのか。SJ氏はその理由をこう語る。
「K-POPは今、世界的に”オタク”ターゲットのビジネスになっています。昔のような恋愛対象としての感情中心から、カルチャーとして一緒に楽しむファン層にシフトしているんです。だからどのようなカルチャー、コンセプト、世界観を見せるかが大事になっています」
アイドルグループが飽和状態にある今、差別化のカギは「本物の日本文化」──アニメ、ゲーム、オタク文化を本格的に表現すること。そのために、全員日本人というアイデンティティが必要不可欠だった。
多国籍グループの難しさについても触れた。「アジアは歴史的に色々ありますよね。多国籍グループでは、例えば韓国と日本で同じ日が逆の意味の記念日だったりして、アイドルビジネス上とても難しいんです。全員日本人にして、ちゃんと日本のカルチャーを見せるためでした」
cosmosyは「女子高生」「アイドル」「少女戦士」という3つのアイデンティティを組み合わせ、グローバルファンの中から狙うべきターゲットを的確に捉えている。

韓国語、日本語、英語を混ぜる新しい言語戦略

cosmosyの楽曲は、韓国語、日本語、英語を混合した歌詞になっている。「ファーストシングルとサードシングルがそうですが、これが今後の流れだと思います」とSJ氏。
この戦略には明確な背景がある。「2011年頃は韓国語バージョンと日本語バージョンを別々に制作していました。でも5〜6年後、Apple Musicの担当者に聞いたら、日本のファンも韓国のアイドルなら韓国語で歌ってほしいし、ライブでも韓国語バージョンを聴きたいというニーズに変わっていたんです」
K-POPファンにとって韓国語は重要な言語になっている。同時に、オタクカルチャー好きのファン層には日本語も大切だ。さらに韓国のリスナーにとっても、この3年間で日本のアニメや映画が重要なカルチャーになってきた。だから、3言語を混ぜる戦略が生まれた。

韓国アイドル業界のリアルな投資額

SJ氏は、韓国アイドル業界の投資規模について具体的な数字を明かした。
振り付け:1,000万円以上
「最近K-POPアーティストの振付師の単価が上がっていて、1人に1,000万円ではなく、200万円ぐらいの振付師4人ぐらいに同時に同じ曲を任せて、編集してその振り付けを作っています」
音楽番組セット:1回あたり2,000万円程度
「カムバックステージを作るためです。韓国は音楽番組がたくさんあるので、さらにかかります」
PV制作:1億円超
「僕がBLACKPINKをやっていた頃は3,000〜4,000万円ぐらいでしたが、100組以上のアイドルグループが活動しているので、PVスタッフの人件費が上がりました」
デジタルマーケティング:1日10億円以上
「これは韓国ウォンじゃなくて日本円で、大手レーベルはアイドルデビュー時に1日10億円以上使っています」
ライバルグループの増加により、制作費は2〜3倍に上昇している。

日本と韓国、何が違う?

日韓の最大の違いは何か。それは、グローバル市場を最初から狙っているかどうかだという。2年前、日本の大手エンターテインメント企業の役員から「グローバルを頑張るために方針を変えました」と聞いたが、ビジネスプランを見ると、LAでのプロモーションやアメリカツアーの計画は入っていなかった。
一方、韓国のアイドルは違う。「デビューさせる前に、マスタープランに日本、アメリカでのプロモーションスケジュールが入っています。言語も日本語、英語を基本的に勉強させています」
契約のあり方も大きく異なる。韓国では最低7年間の契約で、基本給なしのレベニューシェアが一般的だ。黒字になるまでアイドルに給料は支払われない。「だからファンがプレゼントするととても喜ぶんです」
組織構造にも違いがある。日本はマネジメント会社とレーベルが別々だが、韓国では一体型になっている。

デビュー3ヶ月でLA・NY進出

cosmosyはデビュー直後からグローバル展開に動いた。「デビューして3ヶ月程度でロサンゼルス、ニューヨークに行きました。世界のJカルチャーファン、K-POPファンがアメリカにたくさんいるので、直接会いに行ってコミュニケーションすることが大事だと思いました」
アメリカ進出の考え方
「アメリカは資本主義社会なので、一つの大きい会社の助けが必要というよりも、彼らを使うべきという目線で動いた方がいいと思います。アメリカの大きなレーベルと組むために頑張るのはそれほど意味がなく、国内での基盤の方が重要です」
どんなファンを狙うのか
ロサンゼルスのアニメエキスポには4日間で40万人が来場。cosmosyもここでライブを行った。「日本文化のファン数は圧倒的に多く、その中でK-POPも好きなファン層をターゲットとしています」

TikTokで4,000万ビュー

cosmosyの楽曲「Lucky=One」では、韓国のクリエイターによるシーディング(※)を実施した。

※シーディング:口コミや自然な拡散を促すための仕掛けづくり。インフルエンサーやプレイリストキュレーター、音楽ブロガーなどに楽曲を事前に届け、TikTokやInstagramなどのSNSで話題の「種」を蒔く

「韓国のクリエイターたちにシーディングをしました。その結果、4,000万ビュー以上獲得し、韓国のYouTube Musicで5週間連続順位が上がって、最終的にトップ5に入りました」
韓国では今、TikTok系の動画やWebzine(※)などを使ったデジタルマーケティングがカギを握っている。

※Webzine:オンライン専用の音楽メディア、カルチャー誌など。韓国ではWebサイトよりも、Instagram上などで動画や写真を駆使して展開されているWebzineが非常に強い影響力を持っている

まとめ

SJ氏が語ったのは、K-POP業界の最前線で実際に起きていることだった。全員日本人というアイデンティティ、多言語を混ぜる新しいアプローチ、そして桁違いの投資規模。これらがグローバル市場で戦うための現実として示された。
中でも印象的だったのは、「何を作るか」以上に「どんな世界観を提示するか」が問われているという指摘。cosmosyのケースは、日本のアーティストが海外市場に挑む際の具体的な実践例として参考になるだろう。

(文: Musicman 山内千秋)

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