Spotify、なぜ無料サービスを改善? MBWが幹部にインタビュー

Spotifyは9月15日、無料プランを大幅アップデート。無料サービスの改善により、ユーザーエンゲージメントの向上、広告収入の増加、無料ユーザーの定着促進を図り、最終的には広告付き無料ユーザーを有料会員へ転換できると確信している。同社のグスタフ・ギレンハンマー氏(市場・サブスクリプション担当バイス・プレジデント)の話を元に、Music Business Worldwide(MBW)が伝えた。
同氏は「無料と有料の両立が弊社戦略の基盤」とした上で、有料ユーザーの60%が無料から始めたことを指摘。長期的な成長に無料プランでのユーザーエンゲージメントが重要だと強調した。
今回の変更は、特に若年層のメディア消費習慣の変化が動機の一部だと示唆。苦戦している広告事業の追い風になるとみている。また、主要な音楽権利保有者との「連携」なしに、追加の無料ストリーミング要素をリリースすることは決してないと述べた。
ロスレスオーディオを「標準」プレミアムプランで提供開始したことについては「DSP業界全体がロスレスを別機能や追加オプションとして課金する余地がない方向へ進んでいた」と説明。広告付き無料配信への課金開始の可能性を問われると、無料のエントリーポイントを維持することの戦略的価値を強調するとともに、有料ユーザーが一時的に離脱した時の受け皿としても機能していると付け加えた。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「Spotifyが先日、スマホの無料ユーザーでもシャッフルではなく特定曲を再生できるようにした背景をSpotifyの幹部が話していた。記事にあるとおり主な理由は若年層のメディア消費習慣の変化。YouTubeやTikTokがZ世代で一層伸びており、特定動画を無料で再生できる環境下で音楽を楽しむことが彼らにとって当然になっている。加えてSpotifyの広告売上が伸び悩んでいることへのテコ入れ、そして音楽サブスク同士の競争が激化→レッドオーシャン化するなかで無料のYouTubeをベースとするYouTube Musicが伸びていることも背景にあるだろう。この変更でSpotifyの有料はロスレス・広告なしが強みに絞られた」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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