世界の音楽産業、2032年に16兆円突破も MIDiA予測

英国の音楽専門コンサルティング・ファームであるMIDiAは7月1日、2025〜2032年の世界の音楽産業の予測レポートを公表。音楽ソフトの売上高は、2024年の648億ドルから、2032年には1,108億ドル(約16兆2,400億円)に達するとみている(※小売りベース。DSP/小売業者と音楽出版社の収入を含む。IFPIの売上高は卸売りベース)。
エクスパンデッド・ライツ(拡張権利。グッズなどマーチャンダイジングやスポンサーシップ、ライブ演奏など)を除いたレーベル収入は、2032年に512億ドルになると予測した。
現状については、ストリーミング新規加入者の4分の1近くが非欧米市場によるもので、中国が世界4位の録音原盤市場になるなど「グローバルサウスの台頭」が顕在化。バンドルプランによるライセンス料の支払い抑制に反映されるように、デジタル・サービス・プロバイダー(DSP)が影響力を増していると説明した。
広告付きストリーミング収入は、2024年に伸びが前年から横ばいだったが、より価値の高いYouTube Premiumで収益化される音楽ビデオが増加するなど良いニュースも。広告主は音楽とポッドキャストを比較し、より優れたターゲティングを選ぶようになっていると分析した。
AIの急速な台頭については、多くのAI事業者がかつてのYouTubeやTikTokのように「先にやって、後で(権利者に)許しを請う」アプローチを追求していると指摘した。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「世界の音楽ソフト売上の見通しは依然、好調で2024年の648億ドルから、2032年には1,108億ドル(約16兆2,400億円)に達すると英MIDiA社が伝えた。MIDiA社のデータは小売ベースで、DSP/小売業者と音楽出版社の収入を含む。卸値ベースのIFPIのデータだと2024年は296億ドル(約4兆3200億円)で、これでサブスク時代の小売値は卸値のざっくり2倍と把握できる。先進国の音楽サブスクの成長が頭打ちと度々MIDiAも伝えているが、なぜ世界全体では依然、見通し良好かというとグローバルサウスを中心とした新興国で音楽サブスクが伸びると予測されているからだ。新興国でもスマホが普及し、高度成長で生活も豊かになるにつれて「音楽はYouTubeでタダで楽しむもの」だったのが「スマホで音楽を思いっきり楽しむならYouTube Premium」という流れができてきた。かつて先進国でSpotifyが起こした流れが別の形で再来しているといえる。中国も最大手テンセントの有料会員が1億2000万人を超えるなど、着実に無料から有料への流れが定着しつつある」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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