アップル、EUでApp Store規約を大幅変更 外部購入巡る制裁金受け

アップルは6月26日、EU(欧州連合)のデジタル市場法(DMA)に基づき、EUにおけるApp Storeの開発者向け規約を大きく変更した。同社は4月に外部購入に関するDMA違反で5億ユーロ(約850億円)の制裁金が科されたため、さらなる制裁金を回避する狙いとみられる。
デベロッパーは、自社のウェブサイトだけでなく、あらゆるチャネルでオファーを宣伝できるようになった。アプリ内プロモーションでは、ネイティブUIまたはアプリ内ウェブビューを使用した表示が可能に。外部オファーでリンクが複数使用できるようになった。
アプリ内の外部リンクやプロモーションのデザインインターフェースは自由に変更可能に。スケアシート(外部リンクに関する警告)が、ユーザーがリンクに初めてアクセスしたときのみ表示されるオプションが選べるようになった。
外部決済システム利用時に適用されるストアサービス料は2段階制に変更され、デフォルトとなるApp Storeの全機能が利用可能なティア2(手数料13%)から、基本機能のアクセスに限定されるティア1(同5%)に移行が可能だ。
新たにコアテクノロジー手数料(CTC)が導入され、App Storeで配信されるアプリの外部決済に対して5%を取る(当初は27%を予定していた)。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「欧州で「Apple税」が30%から最小で5%に大幅減税となる。EUのデジタル市場法(DMA)で制裁金5億ユーロ(約850億円)を科されたAppleがこれ以上の制裁金を回避すべく折れた形だ。「Apple税」はiPhoneのアプリ内課金にかかるAppleの手数料で、これが30%だと音楽サブスクは成立しないため、Spotifyはこれを避けてきた。その弊害は無料から有料会員への誘致がアプリ内で許されない(有料登録へのリンクが貼れない。有料と無料のサービス比較を書いてはいけない)ということで、無料から有料へのコンバージョンを著しく阻害しているという批判があった。実際、アメリカで判決が出てSpotifyのiOSアプリ内でリンクや説明を明記できるようになると、有料会員が大幅に増えたという報道がある。EUでの決定が日本やアメリカにも広まれば、音楽サービスは月額制聴き放題だけでなく都度課金やポイント制、メンバーシップなどを使って柔軟に設計できるようになるので、Spotifyの登場以降やや停滞していた音楽アプリのイノベーションが一気に加速することも期待できる」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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