クエイク(株) 代表取締役社長 加藤和宏氏インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

加藤 和宏 氏(DJ UTO)
加藤 和宏 氏(DJ UTO)

 2008年8月25日、ヤフー運営のオークションサイト「ヤフー!オークション」に、インディーズ音楽配信サイト「mF247」事業譲渡の優先交渉権が出品された。前例をみないこの件は多くの話題を呼び、同月27日、ニコニコ動画で人気の「ウッーウッーウマウマ(゜∀゜)」をはじめダンスミュージックを中心に多くのタイトルをリリースするレコード会社、クエイク株式会社の代表 加藤和宏氏が最終的に落札。
音楽配信事業の交渉権がオークションに出品されるという、業界に限らず非常に珍しい今回のケース。1,000万2,000円という落札金額、西村博之氏の参戦等、ネット上をはじめ各方面で人々の関心を集めていた。その後、2週間に及ぶ両社交渉の末、9月12日に交渉が成立に至らなかったとのアナウンスがあった。そこで、ニコ動風に言うならば「mF247事業の交渉した会社を取材してみた」ということで、今回の交渉のいきさつ、またそこから見えてきたクエイクの今後の方向性など、交渉直後で非常に多忙なDJ UTOこと加藤和宏氏にお話を伺いました。(取材、文、写真:Jiro Honda)

※取材日の2008年9月16日の時点で、同事業譲渡優先交渉権はオークションで次点だった2ちゃんねる管理人・西村博之氏に既に移行しています。

加藤 和宏 氏(DJ UTO)


クエイク株式会社代表取締役社長。
日本テレビ系「マネーの虎」でマネー成立し、現在は「歌スタ!!」に出演中の世界的DJ/PRODUCERでもある。
96年に活動を開始し、膨大な数ののトラックを手がけてきたダンスミュージックシーンの先駆者。
最近では、「ウッーウッーウマウマ(°∀°)」などの大ヒットを生み出すなど、あらゆるフィールドで活躍している。
クエイク株式会社

 

——今回残念ながら交渉成立には至らなかったわけですが。

加藤和宏氏(以下、加藤氏):悔いはないです。まぁ、悔いはないというとおかしいかもしれませんが。
短い期間にも関わらず全力でプランを考えて、僕らの考え得るベストの提案をしましたので。全力で頑張ったので、仕方ないと思っています。
今回の交渉において難しかったところは、【経営権が変わる】ということで、リスクを持って運営するからには弊社が自由に運営できるかどうかという点。あと、mF247だからこそ参加していたアーティストがいたというところですね。
審査を通った楽曲が配信されるのがmF247の最大の特徴ですので、同じ状態をどうやって作り出すかと。まずは最後の状態のまま引き継ぎさせて頂いて、継続しつつリニューアルを計りたかったです。ユーザーが離れてしまう前の再開という形をとりたかったのですが。

——しかし最終的には—

加藤氏:まとまらなかったですね。 こちらの勘ぐり過ぎかもしれないですけど、そもそも事業としてうまくいっていれば譲渡は考えませんよね。今のモデルを続けていれば採算がとれない何かがあるのだろうということで、推測のもとに、「何が採算がとれないのか」、とか、「どうやったら採算をとって永続的に続けることができるのか」、を考えました。
突き詰めると、「採算をとろうとすることがサイトの信念を曲げることにつながってしまうのではないか?」という面がありまして。

——mF247に提出を求められていたプランは9/10にウェブサイトで公開されていましたね。

加藤氏:ヤフーオークションに出品されていた内容でいうと、「フルコーラスのmp3無料配信」は実現可能でした。
次に、「合法的に且つ原則無償で楽曲を配信する」という部分もクリアの見込みはありました。
「楽曲をプロモーションしたいアーティストと、いい音楽を探すリスナーの出会いの場の創造」という点に関しては、サイトの信用力があり、そのサイトで楽曲を配信することがブランドとなる「mF247」さんの形をそのまま引き継ぎさせていただければと思っていました。
他にプランの作成の基となる出品内容の情報は、ユニークユーザー数しかありませんでした。
コストの面でいうとランニングコストとして考えられるのは、「人件費」と「サーバー等の設備費」ですよね。技術的な設備費は以前とくらべて随分安くなっていますので、そこのクリアの見込みはありました。あと人件費の面でいうと2名までに抑えることで可能だろうとプランを作成しました。実際、弊社自身も音楽配信サイトをやっていますから、数字的にも分かる部分はあります。弊社が数字として不透明で分からない部分は審査にかかるコストだけでした。あとのいわゆる運営的なところは僕らも数字を持っていますし、色々な会社さんにもmF247がサイト閉鎖されるまでに分析していただいて、見積もりを出してもらいました。実際に同じシステムを引き継ぐにあたって、どれくらいで可能かと計算したところ、概ね月額200万円あれば大丈夫じゃないかと各社の見積もりがありました。
審査についてはブラックボックスだけれど、それ以外の部分数字に関してはかなり現実的かつ具体的に見えていましたね。具体的に同じサーバー会社に問い合わせたりとか、配信をやってらっしゃる会社さんをヒアリングしたりそういう面でかなり現実的な数字を把握していましたから。

クエイク加藤和宏1

——プラン却下の理由は伝えられたのでしょうか。

加藤氏:理由は全くわかりません。分からないですけど、しいてあげるならば、先方に気に入ってもらえなかったのかなぁ(苦笑)
でもやっぱり、気に入る気に入らないという部分は難しいですよね。僕らの方がユーザー目線ではあったと思うんですよ。それをビジネスで表現するとお金になってしまうかもしれないんですけど、少なくともインターネット上では、世の中で発展しているビジネスはユーザーあってのものだと思います。ユーザーインターフェースさえ単純であればパソコンの人口はすごく多いですから。ユーザーの支持を受けることを念頭においたプランがひょっとしたらよくなかったのかもしれませんね。
mF247のサイトの価値を考えると、それ自体は手を加える必要はないのかもしれません。
ビシネス的に難しい状況にあったと仮に考えた場合、そうであれば、何らかの手を加えなければいけない。でも、手を加えるとmF247ではなくなってしまう。と考えると、今回プランで示した同一ページ内にmF247セカンドという形にして、間口が広いところを作った方がいいと思ったんです。

——プラン上においてそのあたりは証券市場に例えられていましたね。

加藤氏:繰り返しですが事業がビジネスとして難しい状況にあるという仮定で考えると、難しい理由はmF247の特徴である「審査」というシステムにあると思うんです。サイトを素晴らしくしている理由も「審査」だと思うんですけどね。つまり間口が狭くなって人が集まりにくいというところです。
インターネットの世界はアクセス数勝負みたいなところがあって、広告にしてもPV数とかユニークユーザー数があがらないと広告料ってもらえないですよね。でも、ある程度PV数とユニークユーザー数があり、そんなに金額が高くなければ広告は比較的集めやすいと思います。だから、トップバナーで考えても100万円ぐらいまではわりと現実的なラインですし、例えば「10万円の広告×10本」とかは現実的な価格だと思います。
あとはmF247はモバイルのサイトもあるので、昨今サブスクリプションも増えていますから、楽曲数がある程度あればユーザーへの月額定額料金という形で採算をとることができると思うんですよ。
月間200万円のランニングコストもそういう風にダブルの収益によってクリアできると思いました。
ウェブサイト上でプラン公開しているのは、「『mF247の形を残したい』という思いをアーティストを含め皆さんにご理解いただきたい」という気持ちをこめてのことでした。

——今回そのような思いを伝える機会はあったのでしょうか。

加藤氏:こちらががこう考えていると伝える機会はありました。現在の形を変えたくないというのは絶対にあると思ったので。
私も事業者ですし、事業者というのは赤字を出していても事業を継続したい思いを持つものです。

——247music代表の宇佐美社長がNETのニュースで前向きかつ好意的な発言をされていのを見かけました。

加藤氏:ビジネスプランはいいねといわれました。

——では最終的にビジネス的な部分を離れたところで、まとまらなかった?

加藤氏:それはあるかもしれないですね。
私は「今かかっている運営コストをそのまま引き継いでもかまわない」、というお話もしました。金額はいくらか分かりませんが、それくらいのリスクを負っても受け継ぐ覚悟はあると。それぐらいmF247は良い仕組みだと本気で思っていたのです。
その良さをどれくらい理解しているかをプランに書ききれなかった部分もあるのですが、mF247のすごいところは、例えばアーティストや楽曲にエピソードとか背景だとかそういう付加価値をつける作用効果がとても高いことです。myspaceとかと対比させて考えるとわかりやすいと思うのですが、アーティストからすると「審査を通ることができた」、ユーザーからみると「審査を通った楽曲なんだ」、という双方向の視点のブランド感がある状態でスタートできるというのは我々が思っているよりもはるかに価値があると思います。
インディーズのアーティストでも自らのブランディングのためにCDをリリースするケースがあります。CDを出すことによって「自分はCDリリース可能の価値があるアーティストです」とアナウンスするというアプローチですよね。つまりCDをリリースしているということは、そのリリースするまでの諸々の審査を通っているということにもなります。やはり音楽に詳しくない一般の方でもCDのリリースの有無はわかりやすい物差しですよね。
そう考えると「mF247はCDはリリースしていなくても、CDをリリースすると同等の効果作用をもっている」という素晴らしいサイトになります。その中から、切磋琢磨がうまれ、そこで人気があるものはさらに価値が増しますし。音楽が氾濫している現在でも、mF247で人気のあるものを聴けば、質が高く、ファンもいる楽曲をチェックすることになる。レコードメーカーのみなさんも良いアーティストを見つけやすいと思うんです。
そういうmF247の良さや素晴らしさが世間的に理解されきれていない部分がもったいないと感じます。

——そのようにmF247の素晴らしさと可能性については、誰よりも深く噛み砕いて理解していた自負はあったと。

加藤氏:もちろんそうですし、ウェブサイト上で公開しているプランはあくまで必要最小限にまとめたサマリー的な軽いものになっているので、あれだけを読むと決裂しても仕方ないと思われるかもしれませんが(苦笑)
しかし、口頭でもしっかりと詳しくお伝えしました。ネット上に公開できない数字的な部分とかもありますし、社外秘な部分とかもあって全てをオープンにしてしまうわけにもいきませんので。正直、今回提出したプランは新規で立ち上げたとしてもいけると思っています。

クエイク加藤和宏2

——では今後自社での音楽配信サイトのご予定は。

加藤氏:先ほども述べましたが、以前よりもランニングコストを抑えられるような状況になってきているので本当に2名での運営でも可能だと思っています。ですから今後もう少し精査して自社で立ち上げる可能性は十分ありますね。そうなった場合はやはりブランディングの部分が難しくなってくるとは思います。現在も数多くの音楽配信サイトがあるわけですからね。ただ、現状において付加価値をつけることのできるサイトはそう多くはないと感じます。普通の音楽配信サイトはそのアーティストの人気にあやかっているという部分も少なからずありますし。
ですので、付加価値を与える仕組みという部分で言えば、例えば、ニコニコ動画は本当にすごいと思います。
今回の落札の様子をニコニコ動画にアップしている(※編集部注 クエイクのウェブサイトから視聴可能)のですが、現時点で16,000回以上も再生されていて、普通に見ると落札の様子を写しただけのホームビデオみたいなものなのですが、コメントがつくという作用によって、結構長くても割と鑑賞できる楽しめるものに変わるんですよね。「みんなでテレビ見て盛り上がっちゃう」みたいな。
著作権について賛否両論ありますけど、そのシステムが持つ良い部分はまず偏見をなくしてキチンと理解した方がいいと思います。そういう凄さをディスカッションした方がいいと思うんですよ。
私はニコニコ動画を応援していて、ただのホームビデオでさえも面白くするというパワーを持っているというのやはりすごいですよ。まさにユーザー参加型ですし。
ひろゆきさんとは、数年前Club CODEで行われた【2ちゃんねるナイト】で挨拶したことがあった程度ですけど。「あ、これがあのひろゆきって人か」みたいな(笑)
そういう付加価値をキチンとつけることのできるサービスはやはりすごいと思います。
音楽でいうと、ライブやクラブのパーティーでみんなで盛り上がると、家でCDを聴いているよりも良く聞こえるんですよね。そういう価値付けは、むしろ普遍性のない音楽にこそ大事だと思うんです。
アンダーグラウンドなものだとか洋楽だとか。リコメンダーがいて、それに刺激される人がいて広まっていくような音楽にとって、こういう動きは素晴らしいですよね。
ひろゆきさんはそのような面に関しては精通していると思うので、次の交渉者がひろゆきさんというのは適任ではと思っています。ぜひ運営実現に向けて頑張ってほしいですね。

——これからクエイクさんが目指していかれるところは?

加藤氏:弊社は基本的にユーザー目線なんですよね。
現在レコード会社の役割は「良いアーティストにどう付加価値をつけてさらに良くしていくか」ということだと思います。そして、アーティストが個人で楽曲を発表するよりも確実に良い状態を作らなければならないでしょう。そういうところは今回の一件で考えさせられました。
私たちも日々一生懸命いろいろな方法を模索していますが、私たち自身が「あ、こんな方法があるんだ」というサプライズが見たいですね。
これから自社で音楽配信サイトをやるにしても、必ず成功しなければダメなので、焦ってやる必要はないと思っています。
僕らのレコード会社としてのスタンスとして、「元々いいものをより良くする」といったとこにありますから、皆さんに御協力していただきたいですね。弊社は従業員の平均年齢も若いので、新しい発想で他社さんがまだやられていない部分をやっていきたいです。ユーザーを応援するというか、まずユーザー目線のリリースは続けていきたいですし。そういう部分も続けつつ、輸入盤店が行ってきたような、レコードに推薦文を書いて付加価値をつけるというようなことも大事だと思っています。もう一度原点に戻って、音楽に付加価値をつけることを全体的にやっていかないといずれレコード会社の役割がなくなってしまうのではないかと感じています。
実際には私たちもまだまだ分からないことも多いので、レコード会社の先輩方にお話を伺ったりご指導をいただいて、日本の音楽業界を盛り上げていきたいなと思っています。

——今回のオークションと交渉を通して何か思うところはありましたか。

加藤氏:「レコード会社とはなんぞや?」という部分で非常に勉強になりました。
あと私たち自身もリップサービスではなくて「CD」はすごく大事だと思っています。いろいろな国の様子をみても日本ってまだまだCDが売れる国だと思うんです。レコード協会の会長さんも言われてますが、「CDはダメでもう配信の時代だ」と思い込みし過ぎることによってCDのイメージ自体が下がったりするんですよね。何が今CD不況の原因になっているかというと、気持ち的にCDをあきらめてしまっているということだと思います。

——マインドの部分ですね。

加藤氏:そうです。でも音楽配信はいまだに付加価値をつけきれていないんですよ。例えば配信で売り上げ1位という感覚と、CD売り上げ枚数1位とではやはりいまだに後者の方がすごい、という感じがするわけじゃないですか。何故かというと、CDで1位になった人がその後どんなにすごい展開をしてきたかというイメージが染みついているからで、それは業界の先人のみなさんがキチンとCDを売るためのプロモーションをした結果、売れた人が成功しているからですよね。配信だと配信で1位になった人がどう成功するかがまだ見えにくいから、なかなかそういうイメージになっていない。今後日本レコード大賞のように日本音楽配信大賞みたいなのがうまれてきたりしたら変わるかもしれないですが(笑)
現時点ではまだCDはすごいパワーを持っていて、まだまだ売れますし、まだまだ頑張れば、もっと日本のCD市場は回復していくと思うんですよ。今CDがだめだとあきらめて、オリコントップ10入りしているものしか販売店が売らないとかになっていくと、数年間は経営効率が上がるのでいいかもしれないですけど、じきにみんなCDショップに行かなくなり、CDも特定のものしか出さなくなってしまうと、パッケージというもの自体が本当に価値がさがってしまうので、今こそ業界一丸となって少ないイニシャルでも大切に売って、採算をとっていくことが大事だと思います。
今踏ん張れば日本は世界に類をみない、配信とCDの両方の売り上げが伸びるというすごくいい国になれると思うんです。あきらめてはダメですね。

クエイク加藤和宏3

——国内において配信周りのインフラが高水準で整備されているにも関わらず、他国に比べいまだにCDが売れているという原因をどう見ますか。

加藤氏:僕はレコード協会のまわしものではないですが(笑)ひとつはやはり再販制度のおかげはありますよね。というのは、これは自分自身がレコード会社を運営している立場から、体感として感じています。
あと、仮に僕がCDショップを経営しているとして、売れるかどうか分からないCDを置くというチャレンジは正直しにくい。まずお店を潰したくはないわけですからね。でもCDの発売タイトルはとても多くて、そのひとつひとつを聴いてレビューを書くというのはとても大変な作業です。タイトル自体はたくさん出た方がいいわけですが、経営効率だけを考えると、確実に売れるもののみをシステマティックに入荷すればいいですよね。
しかし、未来のヒットを育てていくという作業を音楽業界は必然的にしなければなりません。
そう考えると、CDショップで「これ売れるかどうかわからないけど、興味があるからちょっと仕入れてみるか」というその「ちょっと」がめちゃくちゃ大事なんですよ。「たまたまちょっと仕入れてみて、置いてみたら売れた」と。「なんで売れたのかわかんないけど、売れたからもうちょっと売れるよう頑張ってみようか」という、『ちょっと』のチャンスから次のステップを踏んだものというのは、すごく大事だと思うんですよ。そのことはやはり、アーティスト全体にチャンスを与えていると思うんですよね。
矛盾しているかもしれませんが、自分たちも音楽配信をしているので、配信ビジネスをされる方たちの意見もよく分かります。配信をする人たちは「レコード会社を通さずに、自分で配信した方がチャンスが広がりますよ」とアピールしますよね。でも個人的には、現状まだまだそのチャンスが増えているとはとても思えません。
現在の日本のマーケット規模を考えると、プロモーションのノウハウを持っていて、音楽に付加価値をつけることのプロであるレコード会社に楽曲を預けて、自分たちでやるより少なくなってしまうかもしれないけど報酬は印税という形で、レコード会社からリリースした方が絶対にいいと思います。 アメリカのように超巨大マーケットが存在していて、後にワールドワイドヒットとかも見込めるのであれば別ですが。
いい音楽ということでだけで、発表することはできて、ライブとしては成功するかもしれないけど、もっと音楽の原盤ビジネスの先にある、原盤があってそれに付加価値が生まれて後に大ヒットにつながるというふうにはなかなかなりにくいと思います。
だから今はまだ、再販制度も残っているし、まだ強い流通も残っていて今から頑張れば、全然盛り返せる環境にあります。

——まだチャンスは残されていると。

加藤氏:日本の流通システムって世界に類をみないほど整っているのに、逆に大ヒットしか流通しないようになると、その良さが生きなくなりますからそれはもったいないですよ。
現況が進んでレコード会社の統合だとか流通の統合が進んでしまうと、取り返しがつかなくなると思います。確実に売れるものばかりを売るようになったり、アメリカのように過去の大ヒットをリリースする方が儲かるから、そっちばかり一生懸命になったりと今は悪循環が始まりつつあると思うんですよ。だから私たちがCDを出すときも、やっぱり以前よりもCDを流通するということの審査は厳しくなっていますよね。それがもっと進んでしまうとその審査基準が過去オリコントップ300にはいったこととかになってしまうと、もうどんどん悪循環ですよ。
CDを売ることに関して経営効率って高めすぎてはいけないと思うんです。先人のみなさんの一見非効率に見えたかもしれない部分で、効率化して食わせてもらえるわけじゃないですか。過去の大ヒットとか。
それはやはりその中にあった非効率な部分が現在でも生きているだけであって、経営効率を高めすぎて巨大化しすぎちゃうと逆に今度は新しいものを生み出すエネルギーをみんな失ってしまって新しいものが出てこなくなって終わりかもしれないですね。CDとか音楽そのものに対する興味自体みんな失っちゃいますよね。

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——最後にこれからの意気込みをお願いします。

加藤氏:だから最近のネットスターもそうなんですけど、音楽でみんなをドキドキさせることができてるって凄く良いですよね。それは素晴らしいことですよ。ですから、ドキドキさせるもの、新しいものを生み出していくってことを全体的に頑張っていきたいです。
海外にいくともう本当にひどくて、電器屋とかにしかCDがないんですよ。客寄せのためだけにみたいな感じで。最上階とかに。そうなってしまうとやっぱり寂しいですよね。
だから、今回mF247さんの件でいろいろ考える部分があったので、私たちに賛同してもらえる良い楽曲をもっている素晴らしいアーティストさんたちとともに頑張っていきたいです。

——今後もそういうアーティストと共に活躍されることを期待しています。本日はお忙しい中ありがとうございました。

-2008.9.22掲載 Musicman-NET

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