1億人が利用する定額制音楽配信サービス「Spotify」が日本でスタート Spotify 最高戦略責任者 兼 最高コンテンツ責任者 ステファン・ブロム氏、Spotify JAPAN 野本晶氏インタビュー

インタビュー フォーカス

左から:ステファン・ブロム氏、スポティファイジャパン 野本晶氏
左から:ステファン・ブロム氏、スポティファイジャパン 野本晶氏

音楽ストリーミングサービス「Spotify(スポティファイ)」が9月26日、ついに日本でサービスを開始した。ユニークユーザーが1億人、有料会員が4000万人(2016年9月現在)と音楽ストリーミングサービスでは最も多いユーザーを獲得している「Spotify」のサービス開始に関して、大きな注目が集まっているが、大変多忙な中、来日中のスポティファイ 最高戦略責任者 兼 最高コンテンツ責任者 ステファン・ブロム氏と、スポティファイジャパン 野本晶氏にお話を伺うことができた。

2016年9月30日 掲載

 

——日本でのサービスローンチおめでとうございます。日本法人を設立してから約4年、本日のローンチに至るまで様々な苦労があったのではないでしょうか。

ステファン:私たちは新しい国のマーケットに参入するとき、どの国でも入念に調査をしてからローンチすることを心がけています。その国の音楽業界を正しく把握し、音楽業界が成り立つエコシステムを実現することが一番大事だと考えているからです。

これは日本でも同じで、日本のマーケットではどのようなニーズがあるのか、ユーザーだけでなく、レーベルや音楽出版社、アーティストのニーズを把握するために多くの方と会い、ヒアリングをしながら準備を進めてきた結果、本日サービスのローンチが叶いました。ただ、今日が長い旅路のスタートだと思っていますので、より素晴らしいサービスをユーザーに提供できるように取り組んでいきます。

——ヒアリングを進める中で、レーベルやアーティストからはどのようニーズがありましたか?

野本:Spotifyに期待されていることはいくつかありますが、特にアーティストやマネージメント側は世界のユーザーと繋がる方法を探しているので、「そのきっかけになるのであれば協力したい」というご意見はいただきました。Spotifyはその答えの一つだと考えていただけたんだと思います。

——具体的にどのような方法で海外にアーティストを紹介されるのですか?

野本:最近ではプレイリストを通じて紹介することが多いです。例えば、MIYAVIさんはグローバルのロックのプレイリストにピックされているんですが、LAにいるキュレーションチームの女性がすごく気に入って世界中に紹介しました。そういう成功例が増えつつあります。

Spotifyでは、1曲の単発プロモーションで終わってしまうのではなく、アーティスト活動全体まで一緒にプロモーションしていこうと考えます。そうでないと、本当の意味での成功は難しいと感じています。アーティストとファンをどう効率よく繋いでいくか。そこに日本のユーザーだけでなく、世界のユーザーが加わることでより価値の高いサービスを提供していけるのではないかと思っています。

——邦楽の楽曲ラインナップの現状についてはどのように考えられていますか?

ステファン:我々としては常に提供していただける楽曲を増やしていきたいと考えていますので、まだまだ満足していません。これは今後長い時間をかけて取り組んでいく課題だと思っています。

——本日の発表会で「SpotifyはIT企業ではなく、テクノロジーを活用した音楽企業だ」という言葉が印象に残りました。

ステファン:Spotifyは元々「音楽を愛する人が音楽を愛する人たちのためにより良いサービスを作りたい」という気持ちからスタートしています。この10年間も、マーケットにおいて、アーティストとファンをどのようにすれば結びつけられられるかを考えてきました。もちろんテクノロジーは活用はしますが、あくまでも、アーティストとファンをよりよい関係で結びつけるためのツールだと思っています。

アーティストに楽曲を提供してもらうまでには、何年も前から彼らが望むファンとの結びつきを実現するためにサポートを続けて、徐々に関係を構築してきました。海外ではSpotifyは、物販もできるようになっていまして、ライブのチケットや関連商品などが販売できます。こういったこともテクノロジーを活用したファンとアーティストを繋げる一つの施策として行っています。今後はより多くのパートナー企業とも手を組んで物販の販売をしていきたいと思っています。

——この他、Spotifyならではの施策はありますか?

ステファン:例えば、これは海外ですでに実施しているんですが、”スーパーファン”と呼ばれるアーティストの熱烈なファンに対して、アーティストがライブを行うときに、Spotifyを介してステージ前の最前列を25席限定で販売できるようなオファーを出すようなこともしているんですね。日本はこの”スーパーファン”が多い国だと認識していますので、このような熱烈なファンに対しての施策も日本で展開していきたいですね。

——最後になりますが、日本でのユーザー獲得目標は?

ステファン:それはもちろんたくさんです(笑)。本日ローンチしたばかりですし、先ほどもお話しましたが、Spotifyにとって今日は長い旅路へのスタートに過ぎないんですね。ですから、今後どれくらい時間がかかるかわからないですが、日本のレーベルや音楽出版社、アーティストと積極的にコミュニケーションをとり、より良い関係を構築しながら、日本の音楽市場において、できる限り大きなマーケットにしていき、多くのユーザーを獲得していきたいと思っています。

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