HYBE、競合エスエム・エンタの持ち株売却 中国テンセント・ミュージックに250億円で

韓国のHYBEは5月27日、保有するエスエム・エンタテインメント株式の約221万株(持ち株比率9.38%)を全て、中国最大の音楽配信サービス運営会社テンセント・ミュージック・エンタテインメント・グループ(TME)に売却すると発表した。取引総額は2,433億5,000万ウォン(約252億5,400万円)相当。聯合ニュースなどが伝えた。
TMEは、1株当たり11万ウォンで取得。今回の取引により、同社はエスエム・エンタの第2位株主となる。筆頭株主はカカオで、子会社のカカオエンターテインメントと合わせて40.28%を握る。
今回の取引について、HYBEは「選択と集中の戦略の一環として、非中核資産を売却した。確保した資金は将来の成長エンジンの確保に使われる」と説明している。
エスエム・エンタは、TMEとより緊密に協力していく姿勢を示した。
HYBEは2023年、エスエム・エンタに敵対的買収を仕かけるも失敗。最終的に少数株を保有するにとどまっていた。
今回の取引は、中国が韓国のエンターテインメントの輸入を解禁するとの報道と同時期に行われた。中国政府は公式に認めていないが、2017年に在韓米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」配備問題を機に、韓国のエンタメを制限する措置が取られてきたとされている。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「K-Popの二大レーベルといえばBTSを擁するHYBEとaespaを擁するエスエム・エンタテインメントだが以前、HYBEがライバルのエスエム社に敵対的買収を仕掛けたことがあり、その時から持っていたエスエム社の株を中国最大の音楽企業テンセント・ミュージージックに売り渡すことになった。テンセントミュージージックは音楽サブスクでもApple Musicを超える世界第二位のシェアを持ち、今回の株式取得で40%以上の筆頭株主に。記事にある通り、中国政府が韓国コンテンツの輸入解禁という報道が出たタイミング。昨年には韓国のように中国のコンテンツを輸出する戦略を出している。中国共産党は伝統的に軍事戦略と文化戦略を持っているが、アジアの音楽もその影響または支配のターゲットとなってこうした動きが出てきたとも読み取れる」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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