開催12年目の「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」が赤坂で終演、4月にスペシャで放送

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スペースシャワーTVは、毎年恒例のライブツアー「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」を2月21日から3月9日まで、全国9箇所で開催した。

次のロックシーンを担うバンドを全国の音楽ファンに伝えるべく行っている本ツアーは、今年で開催12年目を迎えた。今回の出演は、teto、Hump Back、2、ヤングオオハラの4バンド。

熱い信念を音楽に託す四者四様の才能が全国各地で熱い対バンを繰り広げ、2週間弱のツアーでさらに進化を遂げ、3月9日に最終公演を行った。このツアーの模様は、ライブはもちろんドキュメンタリーも交えた2時間の特別番組として4月27日22:00よりスペースシャワーTVで放送される。

3月9日東京・赤坂ファイナル公演のライブレポートが公開された。

ライブハウスを主戦場とするバンドを多くのリスナーに届けるというコンセプトのもと、今年で12回目を迎えた「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」が赤坂ブリッツでファイナルを迎えた。これまで、[ALEXANDROS]、THE BAWDIES、NICO Touches the Walls、04 Limited Sazabys、THE ORAL CIGARETTESら、現在の音楽シーンで活躍する多くのアーティストが出演してきた列伝ツアーだが、今年はteto、Hump Back、2、ヤングオオハラという熱い信念を音楽に託す4バンドが集結。例年のように切磋琢磨しながらファイナルに辿り着いたというよりも、それぞれの武器を鋭く研ぎ澄ました4組が、互いの意地をぶつけ合うようなライブだった。
 

「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」

トップバッターは沖縄在住の4人組ヤングオオハラ。まだバンド始動から2年半という、4組のなかでは最年少のバンドだ。ヨウヘイギマ(Gt)、ミツキング(Ba)、ノリバルカン(Dr)に続いて、ハローユキトモ(Vo/Gt)が軽やかなステップでステージに登場すると、軽快なビートが弾む「新」からライブがスタートした。「最高のダンスナイトを!」と繰り出した陽気なサマーチューン「サマタイ」では、フロアが美しいミラーボールの光で包まれる。人懐こくて訴求力の高いキャッチーな歌がヤングオオハラの武器だが、時折ダウナーな展開を織り交ぜる一筋縄ではいかないアレンジに捻くれた感性が光る。なかでも中盤に披露したバラード「HANBUN」が素晴らしかった。“君の心が曇り空ならば 僕が駆け足で行くから”と、バンドが音楽を奏でる意味を託したような楽曲で、ヨウヘイとミツはステージを転げまわりながら激しく弦を掻き鳴らしていた。最後の1曲を残して、ユキトモが「初めてのツアーでライブがもっと好きになりました!」と感謝を伝えると、“ひとつになろう”と呼びかけた高速パンクナンバー「美しい」で終演。長い時間をかけて盛大なシンガロングを巻き起こすと、ユキトモは「最高だぜ!」と叫んで、高らかにピースサインを掲げた。
 

「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」

「二番手は俺たち、2(ツー)だ!」という古舘佑太郎(Vo/Gt)の叫び声から2のステージがはじまった。バンドの初期衝動を綴った「Anthem Song」を皮切りに、感情ダダ洩れのハイエナジーなパフォーマンスでフロアを掌握していく。紅一点でありながら、ダイナミックなプレイで魅了するyucco(Dr)と、ピック弾きの赤坂真之介(Ba)によるタイトなリズム隊のビートのせて、加藤のエレキギターが激しく暴れまわり、古館は髪の毛を掻きむしりながら絶唱する。軽やかなメロディが弾む「PSYCHOLOGIST」から「急行電車」「ケプラー」へと間髪入れずに繰り出す楽曲たちは、USインディーの匂いが漂う爽やかな音源のイメージとは違い、驚くほど泥臭くて、熱い。MCでは、顔中汗まみれの古館が「日々変わりたいと思うけど、この列伝ツアーで、結局、何年経っても人は変わらないって気づきました。一番最初にバンドを始めたときと根本では何も変わらずに歌っています。それが幸せです」と伝えると、ラストソングとして新曲「フォーピース」を披露した。全身を震わせながら振り絞るように言葉を紡いだ楽曲のテーマは、バンド自身のことだ。抑えようのない衝動を曝け出し、4人がひとつの塊のようにぶつかる圧巻のパフォーマンスだった。
 

「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」

ぴか(Ba)、美咲(Dr)に続いて、最後に登場した林萌々子(Vo/Gt)がマイクを通さずに「よろしくお願いします!」と挨拶をしてからはじまったHump Back。3人がこぶしを突き合わせて、1曲目に披露したのは「月まで」だった。ハスキーで伸びやかな林の歌声に、軽快なドラムが重なると、一気に視界が開けるような昂揚感がフロアを埋め尽くす。疾走感あふれる「高速道路にて」では、林がギターを掲げたままフロアへとダイブ。女性のバンドと言えば、”ガールズバンド”と括られることが多いが、Hump Backの場合は”ロックバンド”と呼びたくなる、そんな凛とした佇まいがあるのだ。「やりたいことをやる以上に大切なことはない」「夢はひとつ、バンドをやりたいってこと、ライブをしたいってこと」と、迷いのない言葉を放つ彼女たちは、この瞬間ステージに立てることを全力で謳歌していた。“負けっぱなしくらいじゃ終われない”と、明るい未来を手繰り寄せようとする青春パンク「拝啓、少年よ」では、決してメンバーが煽ったわけではないが、会場は自然に大きなシンガロングで包まれていた。最後に、林が「ライブハウスが“ひとつになるところ”じゃなくて、一人ひとりが自分であれる場所でありますように」と願いを伝えると、「星丘公園」でライブは終演。Hump Backは決して順風満帆なだけのバンドではないが、いつでも「ロックバンドが好き」と何の衒いもなく伝えられることこそ、彼女たちの強さだ。
 

「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」

「列伝ツアーファイナル。大団円、感動のフィナーレ、そういう予定調和は胡散臭いですよね。最後までわからない。だからこそ、良くなろうが、悪くなろうが、全部受け入れる覚悟でやります」。ステージに現れるなり、そう語りかけた小池貞利(Vo/Gt)がフロアの空気をピンと引き締めて、トリを飾るtetoのステージがはじまった。1曲目は「拝啓」。激しいロックサウンドのなかでメロディの原形がないほど絶唱する小池は、何度もマイクスタンドをなぎ倒し、マイクスタンドが傾くと、身体をおかしな角度に折り曲げながら歌い続けていた。「Pain Pain Pain」から「暖かい都会から」へと、容赦ない熱量で畳みかけるパンクナンバー。自分を守る防御を一切纏おうとしない体当たりのパフォーマンスはあまりも無防備だが、だからこそ鋭利で嘘がない。最後のMCでは、「1,000人いれば、1,000通りの考え方があるから、全部わかり合えるわけがないけれど。最後にこの曲をやることで、ちょっとでも心が動いたら、わかり合えるんじゃないかなと思います」と、伝えた小池。ライブハウスだからこそ表面的な共感ではなく、心の深い部分でつながり合える。そう信じる熱い言葉を投げかけたラストソング「高層ビルと人工衛星」では、この日いちばんの熱狂を巻き起こして本編を締めくくった。さらにアンコールでは、営業終了が発表された赤坂ブリッツにも触れて、ライブハウスへの想いを綴った名曲「光るまち」で終演。なりふり構わない熱唱ですべてのちからを出し尽くした小池は、最後にパタリとステージに倒れ込んだ。

恒例のラストセッションでは、全メンバーがステージに立ち、楽器を持ち替えながら演奏した「デイ・ドリーム・ビリーバー」で、今年の列伝ツアーは幕を閉じた。まったく知らない者同士が一緒にツアーをまわるという、かけがえのない2週間を過ごした4組のバンドは、この場所から再びバラバラの道を歩いていくことになる。この先、彼らはもっと大きな会場を埋められるバンドになっていくだろう。それでも「ライブハウス」という、お互いの顔が見える場所を大切に歩み続けていくバンドたちだと思う。

セットリスト
ヤングオオハラ
M1.新/M2.サマタイ/M3.キラキラ/M4.中南海/M5.HANBUN/M6.美しい
2
M1.Anthem Song/M2.PSYCHOLOGIST/M3.土砂降りの雨が降った街/M4.急行電車/M5.ルシファー/M6.SとF/M7.ケプラー/M8.Family/M9.フォーピース

Hump Back
M1.月まで/M2.高速道路にて/M3.拝啓、少年よ/M4.短編小説/M5.ナイトシアター/M6.星丘公園

teto
M1.拝啓/M2.Pain Pain Pain/M3.暖かい都会から/M4.ルサンチマン/M5.時代/M6.高層ビルと人工衛星/EN.光るまち

Encore Session(ALL BAND)
M1.デイ・ドリーム・ビリーバー

取材・文:秦理絵
撮影:古渓一道

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