広告・取材掲載

広告・取材掲載

ソニー・ミュージックのロブ・ストリンガー会長「過去1年で60件以上の取引に総額3,600億円を投資」

ビジネス 海外

ソニー・ミュージックグループ(SMG)のロブ・ストリンガー会長は6月13日、投資家向けプレゼンテーションを実施。カタログやスーパーファン、AIなどについて語った。

売上高の伸びは、過去4年間の平均で年率14.7%と、市場平均(11.3%)を上回っている。過去1年間に行った買収・投資案件は60件超で、総額25億ドル(約3,624億円)以上を投じた。

近年トレンドのレーベル・サービス(アーティスト・サービス)は、自社がマーケットリーダーだと主張。同事業が大幅に拡大した結果、競争が激化しているにもかかわらず、自社の利益率は下がっていないと話した。

上位200曲に占めるカタログの割合は2020年の約24%から2024年には50%に拡大。「この傾向はSMGにとって非常に有益で、レーベルや象徴的なアーティストの全作品を購入したいというわれわれの欲求を刺激している」とし、これら買収は125年にわたるカタログでの経験で培われた専門知識に基づくと説明した。

サブスクリプション配信は「依然としてビジネスの支柱」だとコメント。ストリーミングにおけるスーパーファン向けサービスは「初期の開発コンセプト」であり、それが実際に何を意味するのか「DSP(デジタル音楽配信事業者)はわれわれと一緒に定義しなければならない」と述べている。

DSPの値上げは継続が必要だと主張。ARPU(1ユーザー当たりの平均売上高)の向上は、成熟市場だけでなく、新興市場にも焦点を当てるべきだと話した。

短編動画プラットフォームとの商業的関係については、より共生的な関係を築くため、改善の余地があると述べた。

AIについては、創造的な機会と著作権の保護のバランスをとることの重要性を強調。「新しい音楽AI製品のための取引」や、公正な収益分配の取り決めによる新たなサブスクといった未来を見据えた。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「この記事は必読。近年、一番伸びたグローバルメジャーはソニーミュージックだろう。上位200曲に占めるカタログの割合は2020年の約24%から2024年には50%に拡大に。音楽出版がSNSやストリーミングに対応する前の2018年にEMIの音楽出版を買収したり、TuneCoreなどでディストリビューターが脚光を浴びる前だった2015年にオーチャードを買収。その利を活かしてディストリビューターの次世代ビジネスと呼ばれるレーベル・サービス(アーティスト・サービス)でも「自社がマーケットリーダーだ」といえる地位を固め、すでにインディーズとメジャーの融合モデルを確立しつつある。音楽サブスクは「依然としてビジネスの支柱」と言及していることからも、すでに話題はスーパーファンなど月額聴き放題を超えたビジネスモデルの構築を見据えているが、「DSPはわれわれと一緒に定義しなければならない」と述べているように、スーパーファン・プラットフォームをSpotifyなどへ丸投げする必要がないことを把握している印象だ。Spotify Music Proなど高価格帯のサブスクで扱うより、アーティスト単位で月額契約した方がいいし、熱心な音楽ファンはインスタやTikTokなどでアーティストと直接つながっているので必ずしも音楽サブスクにスーパーファンをまかせる必要がない」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。