音楽消費の断片化はピークに達したのか? MIDiA分析

レコメンデーション・アルゴリズムの台頭などを背景に、ヒット曲の支配力が低下し、「音楽消費の断片化」が進む中、英国の音楽専門コンサルティング・ファームのMIDiAは、このトレンドが安定しつつあると指摘している。
英国レコード産業協会(BPI)の最新レポート『All About the Music』によると、英国における年間総音声ストリーミングのうち、上位100曲が占める割合は2016年(10.3%)から2023年(3.7%)まで年々低下したが、2024年(3.8%)にはプラスに転じた。 この傾向は米国でも見られ、ビルボードは昨年、同国のホット100チャートでのカタログ曲の減少を指摘した。
ヒット曲を出すことが難しくなっていたレコード会社にとって、断片化の安定(トレンドの逆転)は朗報で、新旧スーパースターが以前にも増してブレイクしており、ストリーミング・エコシステムにおけるメジャーレーベルの市場シェア侵食の進行に歯止めをかけることとなる。
一方で、音楽文化だけでなく、音楽消費がストリーミングからソーシャルプラットフォームに移行しつつあることを示す初期指標でもあるとMIDiAは警鐘を鳴らす。
< MIDiAが指摘する2024年にプラスに転じた要因>
・スーパースターのリリースが目立った(テイラー・スウィフトら)
・新スーパースターの台頭(サブリナ・カーペンターら)
・音楽を超えて文化的ムーブメントを起こした曲のリリース(チャーリーxcx「Brat」など)
・レーベルのA&Rへの再投資
・より親密になる共有体験を消費者が追求
・ストリーミングプラットフォームのアルゴリズム変更が断片化を抑制
・断片化は永遠に続くものではない
・ソーシャルでビジネスを構築する新人アーティストが増えるにつれ、ストリーミングの競争が少なくなっている
(文:坂本 泉)
榎本編集長「また常識の修正が必要そうなデータが来た。イギリスで音声ストリーミングのうち上位100曲が占める割合は2016年(10.3%)から2023年(3.7%)に低下したが、2024年(3.8%)にプラスに(MIDiA調べ)。聴き放題とアルゴリズムで進行した音楽のロングテール化の流れがいよいよ終わったかもしれない。人気曲、人気アーティストで勝負するメジャーレーベルにとっては朗報だろう。インディーズ、DIYにとって悲報かというとすでに十分、ロングテール化は進んだので悲報は言いすぎかもしれない。また、以前から言われていることだがSpotifyなど音楽ストリーミングからTikTokなどSNSに音楽消費の比重が移動しつつあることも確認された。」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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