いよいよ7月19日(土)・20日(日)に開催が迫った『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL』こと『ジャイガ』。今年は会場をいつもの舞洲から移動させ、万博記念公園での開催となる。『ジャイガ』史上最多、66組のアーティストの出演が決定している。
この『ジャイガ』のスピンオフイベントとして、2021年春から『THE BONDS』の一環として毎年梅田で開催されているでサーキットイベント『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2025 SPIN-OFF「THE BONDS 2025」GIGANTIC TOWN MEETING』(『GTM』)が、4月に梅田BANGBOO、Banana Hall、梅田Zeelaの3会場で開催された。今年もネクストブレイク間違いなしの「今絶対に観てほしい新しいアーティストたち」が出演。全32組の出演アーティストの中から、Aooo、jo0ji、TOOBOE、TRACK15、トンボコープ、NELKE、Lavtが夏の本祭『ジャイガ』に出演決定。今回SPICEでは、この中からそれぞれの『GTM』のライブピックアップして振り返る。
『OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2025 SPIN-OFF「THE BONDS 2025」GIGANTIC TOWN MEETING』2025.4.13.SUN @梅田BANGBOO、Banana Hall、梅田Zeela
今回の『GIGANTIC TOWN MEETING』は、開催以来初めてチケットがソールドアウトした。そのためリストバンド交換所&グッズ販売所が設置されたBanana Hallの2Fには、朝から長蛇の列が。若者から大人まで年齢層は幅広く、中には友達同士で来たとおぼしき中学生くらいの来場者が、ワクワクしたように目を輝かせている姿もあった。今回のラインナップは特に10~20代の若手アーティストが多いと感じたが、同世代の来場者にもしっかりと届いた結果のソールドアウトなのだろう。
Banana Hallと梅田Zeela、昨年11月にオープンしたばかりの梅田BANGBOOの3会場は近距離にあり、それぞれの会場へは徒歩約2~3分で行くことができる。この日はあいにく午後から雨が降り出したが、3会場とも商店街沿いにあることから、さほど濡れずに移動できたので助かった。
Lavt
撮影=キラ
梅田Zeelaのトッパーを担ったのは、大阪出身22歳のシンガーソングライター・Lavt。次世代アーティストを支援するSpotifyのプログラム『RADAR: Early Noise 2025』にも選出された、期待の新星だ。バンド編成で勢いよくステージに現れたLavtは「モルト」「有象無象」とアッパーチューンを連投して会場の空気をぐんぐん動かしていく。昨年11月に初ライブをしたばかりで、おそらくまだ片手で数えられるほどのライブ経験ながら、その堂々たる佇まいと生歌の迫力に驚いた。アジカンなどのロックバンドにルーツがありつつ、ボカロP・蒼透としての顔も持つ彼が作る楽曲は、実にロックでポップで表情豊か。しかもどの曲もハイクオリティでライブ映えする。
撮影=キラ
才能ぶりに舌を巻いていると「実は僕今日誕生日でして。こんなめでたい日にライブできて、本当にプレゼントになるなと。ありがとうございます!」とあどけない笑顔も見せる。本人もギターを持った「オレンジ」を経て、ラストは「HOLD ME」「JOOOOKE」を思い切りロックに響かせた。胸が踊るとはこのことだろうか。終始ワクワクさせられるライブで、Lavtのこれからが一層楽しみになった。
撮影=キラ
撮影=キラ
撮影=キラ
TRACK15
撮影=マスダユウタ
歌モノの良さを全面に押し出し、音に包まれる至福の時をくれたのは大阪高槻発のTRACK15。3会場で最大キャパのBanana Hallに登場した彼らも関西を代表する気鋭のバンドだ。ステージに立った蓮(Vo.Gt)、寺田航起(Gt)、高橋凜(Ba.Cho)、前田夕日(Dr.Cho)は、オーディエンスを迎えるように明るい音を奏で、「青い夏」からライブスタート! 伸びやかで透明感のある蓮の歌声とグッドメロディーが本当に美しい。続く「ハルハル」でもリバーブをきかせ、情景の浮かぶサウンドスケープを描き出した。
撮影=マスダユウタ
撮影=マスダユウタ
MCで蓮は「僕たちの音楽、僕たちが信じているものを、音源とは違う形で全力で届けて帰ろうと思ってます」と、ライブへの想いを強く語っていた。作り手の彼らがどんな表情でステージに立ち、どんな気持ちで演奏して、どんな言葉を足して曲を渡しているのか。それを受け取ったリスナーが自分で曲を解釈することで音楽は完成する、と蓮は語る。「その日しかないライブをやって帰ります」との言葉通り、ライブアレンジ満載で、良質な楽曲たちを丁寧に熱量高く披露した。すでに名曲の気配がする「千年計画」でのシンガロングは、これからもっと大きくなっていくだろう。この日のライブからは、彼らの音楽愛、そして直接ファンと瞳や声を交わす純粋な喜びがあふれていた。
撮影=マスダユウタ
撮影=マスダユウタ
トンボコープ
撮影=キラ
Banana Hallを入場規制にして熱気渦巻くライブを繰り広げたのはトンボコープ。4月4日に豊洲PITで行われるはずだった3周年記念ワンマンライブがメンバーの体調不良で中止になってしまい、この日が復帰後初のライブということで気合いの入れようは半端ない。1曲目の「フラッシュバック」でそらサンダー(Gt)のギターがわななき、「風の噂」のシンガロングではステージ後方でボトムを支える林龍之介(Dr)も立ち上がってフロアを煽る。続く「明日の一面」ではでかそ(Ba)のスラップが炸裂、雪村りん(Vo.Gt)の歌声もフェイクも熱量を伴って前へ前へと放たれる。
撮影=キラ
撮影=キラ
雪村はこの日開幕した「(大阪・関西)万博に負けないぐらいの1番大きなパワーを一緒に作ろうぜ!」と煽り「喜怒哀楽」で見事なシンガロングを生み出した。そして「俺たちはもっと未来を目指してどんどん大きくなっていくバンドです。今日はトンボコープにとってめちゃくちゃ大事な、新しい1歩目の1日です(雪村)」と、現場で音を鳴らせる喜びを噛み締めて爽快に飛ばされた「始まりの合図」に続き、バンドの現在地とメンバーの想いを示すようなショートチューン「Now is the best!!!」を全力でぶつけ、見事復活の狼煙を上げたのだった。
撮影=キラ
撮影=キラ
TOOBOE
撮影=マエダユウタ
唯一無二の世界観で魅了したのはマルチクリエイター・johnによるソロプロジェクトのTOOBOE。演奏を支えるバンドメンバーも個性豊かで実力派のプレイヤー揃いだ。リハから板付でライブを開始すると、中毒性のある「ミラクルジュース」を投下してダークポップなグルーヴで巻き込んでいった。johnは「知っても知らなくても自由に身体を揺らしたり、手を上げて楽しんでください!」と叫んでフロアを牽引。
撮影=マエダユウタ
johnもギターを持ち、熱量を伴って早口ボーカルを転がした「廻する毒素」、アニメMVが約2300万回再生(2025年5月時点)されている「痛いの痛いの飛んでいけ」を間髪入れずに叩き込む。不穏さと物悲しさが覗くサウンドに絡めて痺れるようなファルセットをキメたjohnは「今日は格の違いを見せつけに来ました。皆さんがTOOBOEが1番良かったなと言いながら帰れるよう頑張りたいと思います」と頼もしく微笑んだ。
撮影=マエダユウタ
後半戦は爆発力を増して、キラーチューン「錠剤」、バンドメンバーのソロ回しもクールにキマッたファンクネスな「爆弾」ときて、メジャーデビューシングル「心臓」であっという間にフィニッシュ。咆哮してのけぞり、全身で歌うjohnに引っ張られ、フロアも渾身の三三七拍子をお見舞いする。演者とオーディエンスがお互いに「今この時」を楽しもうとする姿勢が最高だった。
撮影=マエダユウタ
撮影=マエダユウタ
NELKE
撮影=キラ
Banana Hallのトリ前は、比類なき歌唱力とメロディーラインの美しさ、圧巻のパフォーマンス力で観る者を熱狂させたNELKE。超満員のフロアは待ってましたとばかりに湧きまくる。RIRIKO(Vo.Gt)が歌声を放った途端、ハッとするほどのインパクトが全身を駆け巡る。1曲目の「Believe in Breeze」からRIRIKOはもちろん、伊藤雅景(Gt)、タケダトシフミ(Ba)、マツモトシオリ(Key)、Kei(Dr)が放つキレキレのパワーにも圧倒された。RIRIKOは「(イベントも)ラストスパートだけど、ダレてないよねぇ?Banana Hall!」と焚き付けて、「努力教信者」「バイバイアクター」で有無を言わせずフロアを掌握していった。
撮影=キラ
撮影=キラ
最高潮のボルテージで突入した後半も勢いはさらに加速。「私たちにしか出せない音を届けたくて、大阪にやってきました。とにかく出会ってしまったんだから、音楽という奇跡を通じて最高の空間を作ろうよ!(RIRIKO)」と「カレンデュラ」を轟音でアグレッシブに響かせる。メロは切なく綺麗でポップ、大胆な楽曲構成も大きな魅力だ。RIRIKOは息を切らしながら「必死に歌っているけど、届いている実感があるからすごく楽しめています!」と伝え、全身全霊を込めて「ロリポップサイダー」を投下。会場に漂う余韻と興奮が彼らの進化を予感させる。夏のクアトロ&Zeppワンマンツアーを経て、初の全国ツアーが決定しているNELKE。彼らの快進撃は2025年も止まることはないだろう。
撮影=キラ
撮影=キラ
Aooo
撮影=キラ
夜21時を過ぎ、いよいよ迎えた大トリはAooo。元・赤い公園でソロでも活動する石野理子(Vo)、ボカロPやシンガーソングライターとして活躍中のすりぃ(Gt)、YOASOBIやももいろクローバーZなどのサポートを務めるやまもとひかる(Ba)、ボカロPとして、またユニット・NOMELON NOLEMONとしても活動を行うツミキ(Dr)というメンバーで結成されたバンドで、もはや新世代のドリームチームと言っても過言ではないだろう。ちなみにすりぃとツミキにとっては、昨年12月の初の東名阪ツアー『Aooo 1st Live Tour “BOWWOW”』ぶりの地元大阪での凱旋ライブとなった。
撮影=キラ
撮影=キラ
石野の弾き語りから軽快に始まった「水中少女」で、熱狂したフロアはワンマンさながらの温度感に。ダンサブルな「イエロートイ」でかましたメンバーそれぞれのハイスキルなソロプレイは呆気に取られるレベル。さらにこの日リリースされたばかりの最新EP『Fooocus』から石野の「バキュンポーズ」でボルテージが急上昇した「BAQN」と、否が応でも踊ってしまうアッパーチューンをかっ飛ばし、会場のテンションを引き上げていく。
撮影=キラ
撮影=キラ
「熱気がヤバい! 楽しいね。嬉しい」と満面の笑みを浮かべた石野のボーカルは、曲を披露するたびに熱を増す。石野の歌声にはどこまでも突き抜けるポップさがあるが、サウンドには楽器隊のスキルに裏打ちされたテクニックが詰め込まれているだろうことが演奏からも伝わってくる。メンバー全員が作詞作曲できる強みを活かした楽曲群は、個性豊かで多彩で、痺れるほどにカッコ良い。後半も「魔法はスパイス」「フラジャイル・ナイト」「リピート」と一層パワフルさを増して音の塊を放ち、ラストチューン「サラダボウル」へと疾走した。ステージとフロアで行われたすさまじいエネルギーの交換は、この日のハイライトのひとつだった。
撮影=キラ
本来ならここで終了のはずだったが、アンコールを求めるクラップが発生。この情熱に応えてメンバーがステージにカムバック! 「もっともっともっと大きい声出せますか!(石野)」と煽り、石野が作詞を手がけた「アパシー」をドロップ。帰りかけていたファンも慌てて戻り、今日1番の盛り上がりを作り出した。それにしてもメンバーそれぞれが醸し出すヒーロー感はさすがの一言。夏の『ジャイガ』を経て9月から始まる全国ツアーは大阪心斎橋・BIGCATからスタートする。スターダムを駆け上がるであろうAoooの今後から目が離せない。
撮影=キラ
多少の時間調整はあったものの、今年の『GIGANTIC TOWN MEETING』も大団円で終了した。ボカロやインターネットカルチャーの文脈を汲みながら、様々なジャンルを取り入れて自分たちの音楽に昇華する新世代アーティストたちを目撃できた、スペシャルな1日となった。
そしてこの後、来場者投票によって7月19日(土)・20日(日)に大阪・万博記念公園で行われる『ジャイガ』本編にAooo、jo0ji、TOOBOE、TRACK15、トンボコープ、NELKE、Lavtらが出演決定した。万博記念公園では初開催となる『ジャイガ』のチケットは、2Daysチケットがソールドアウト。各日券のみ発売中なので要チェック!
取材・文=久保田瑛理 写真=オフィシャル提供
広告・取材掲載