【14th TIMM】Hi Five社CEO Maggie Zhou「中国著作権&ライブビジネス事情・現状と可能性」

インタビュー スペシャルインタビュー

第14回 東京国際ミュージック・マーケット(14th TIMM)ビジネスセミナー

中国音楽コピーライト最前線で活躍するHi Five社のMaggie Zhou氏と、近年多くの日本人アーティスト系イベントを中国で成功させているアミューズ上海の山内学氏の両名が最新の中国ライブ及び音楽著作権ビジネス事情に関してプレゼンテーションを行った。 

<スピーカー> 
Maggie Zhou 氏(Hi Five Entertainment CEO)
 

中国の経済成長と共に急務となった知的財産の保護
 

 

私が所属しているHi Five Entertainmentは、テクノロジーやインターネットを使っての版権管理と、アーティストのプロモーションを行っています。グループには300人以上の社員がおり、中国だけでなくアメリカ、日本、それから台湾のスタッフも働いています。なぜなら会社は中国ですが、よりグローバルなマーケットで活動したいと思っていますし、海外の質の高い音楽を中国に持ってきたいと思っているからです。

本日は3つの観点からお話させて頂きます。まず市場全体について。それから配信ルートの紹介。そして最後に我々Hi Fiveが用意しているツールについてお話します。

IFPIの年次レポートによりますと、中国の音楽マーケットは大きく成長しています。中国は2015年、経済大国としても世界2位となり、知的財産の保護に関して、特にインターネットの音楽に関して、中国政府はいくつか法律を成立させました。経済の発展と共に、文化への影響も考えなければなりませんし、アーティストのクリエイション能力を守らなければなりません。そのためにアーティストは自身のプロダクトからお金を得る方法が必ず必要となります。

中国映画の興行収入は386億ドルに達しており、これは世界シェアの17%になります。また、中国のゲーム・アニメ市場は300億ドル規模になっています。音楽を見てみますと、2015年の版権市場は世界で250億ドルで、中国はその17%およそ50億ドルになります。ですから世界でも一番大きな市場になってきたと言えるかと思います。

 

中国ローカルのインターネット会社が入り乱れるデジタルチャンネル

 

次に中国における音楽の配信ルート、みなさんの関心が非常に高いデジタルチャンネルについてお話したいと思います。2016年時点で、すでに中国には約7.1億人のインターネットユーザーがいました。これはヨーロッパの全人口に匹敵しています。その中で5億人がインターネットを使って音楽を聴いています。それから昨年、中国のデジタル音楽市場は30%成長しました。世界的な成長率は17%ですから、そのほぼ倍になります。一方、例えばSpotify、Facebook、Twitter、YouTubeは中国国内では使用できません。ですが同時に中国ローカルのインターネット会社が非常に活発で、既に91社の上場会社があります。

まず、ストリーミングサービスですとQQTeam、ネットストリーム、アリババが大手です。それからファン・イン、エコ・フェイス。この2つは小さな会社なんですが、具体的なニーズを持っています。例えば、ジャンルですね。EDMやアニメ、ヒップホップなどに特化したチャンネルになっています。ですから中国でプロモーションをしたい場合は、こういったチャンネルにも注目して欲しいですね。

次にオペレーション・サービス・プロバイダー。これはネットワーキングサービスを提供するもので、チャイナモバイル、チャイナユニコム、チャイナテレコム。この3社は中国が有している企業になります。そして、それぞれが音楽ストアを持ち、リングバックトーンも発売しています。

また、中国の携帯会社もあります。iPhoneは中国で3位になりましたが、トップ5のうち4つは中国ローカルの携帯になります。東京に行くとき、シンガポールに行くとき、それからタイに行くとき、特にアジアの国に行くときは中国ローカルの携帯会社の広告をよく目にされるかと思います。そしてミュージックストアも、アップルのiTunesと同等のものがそれぞれの会社に存在し、Hi Fiveはそれぞれに関与しています。

加えて動画サイトですね。特に音楽のビデオ、コンサートのビデオ、それからアーティストのインタビューが見られるようなもの。こういったビデオはこのチャンネルから配信しています。また、オンライン・ストリーミングを忘れてはいけません。これはコンテンツのライブ・ストリーミングだけではなくて、日常の生活をライブストリームしたり、SNSで動画を流したりする人たちもこの中に含まれています。

現在、プラットフォームの85%で、ユーザーが無償で音楽をダウンロードして聞くことができ、残りの15%はサブスクリプションになります。よく「このチャンネルからどのようにして利益を上げるんですか?」と聞かれるんですが、3つの方法があります。まず広告。もし音楽配信が無料であれば、そのシェアによって広告の費用が入ってきます。それからメンバーシップ、サブスクリプションです。

中国におけるサブスクリプションは新しい分野で、現在、ルールを作っているところです。まだカタログが小さく、そこからお金を得るのは難しい状態ですが、他のレーベルとのタイアップ、それからパートナーシップをすることによってプラットフォームからの利益が上げられるのではないかと思います。

 

2次使用のライセンスに関する取り組み
 

 

次に2次使用の市場について見ていきたいと思います。なぜ2次使用についてお話するかというと、これはインターネット・ビジネスと共に発展しているからです。今、オンラインの2次使用の市場は151億ドルの規模になっています。またオンラインの動画広告は51億ドルの規模となっています。

PWC出版のレポートではアーティストやミュージシャンが受け取るロイヤリティはラジオ産業の売り上げのわずか2%しかありません。この2%を前提とすると2次使用の市場というのは実際には10.4億ドル規模であるということがわかります。これがどう重要かというと、現在、95%の企業はお金を払わないで音楽を使い続けているんです。では、どのようにすれば企業からお金を取り戻すことができるのでしょうか。

オンラインのモニタリングという方法があります。すべてのウェブサイトの監視を行い、そこからレポートを提供します。ウェブのオーナーは誰か、何回楽曲が使われているか、またそのビデオの中でどういった音源が使われ、それがどのくらいの期間、何秒ぐらい使われているかといった詳細な情報を提供します。このレポートを見ることによって各社が、「うちの音楽を使っていますが使用料を払っていませんよね」と、使用料の請求をすることができます。

また、ユーザーに対しても音楽の使用許諾を得られるようにしなければいけません。音源を使いたいと思っていても、どこに問い合わせればいいのか、どこからライセンスを買うことができるのか、ということがわからない人たちがほとんどです。そこで私たちは「AGM」というオンラインライセンスサイトを作りました。そして、私たちはSony/ATVとEMIのプロダクションミュージックの中国独占運営をしています。このプラットフォームでは4つのステップによって、ライセンスを購入することができます。
 

AGM版権取引サイト

1つ目は検索です。様々なテキストで楽曲を検索して、自分が求めている曲を簡単に探し出すことができます。2つ目はオンラインライセンスです。著作権の情報が記載されていて、例えばどのようなテーマでとか、どれくらいの期間とか、そういった情報を入力します。また使用許諾はすべて公式の証明書となっており、誰もがネットで閲覧し、確認することができるようになっています。そして著作権の保有者に対しては、その人が持っている曲がどのように使われて、そこからどれだけの使用料が得られるのか報告書が提出されます。

このウェブサイトは6月から運用開始し、これまでに100万曲以上の対応が完了し、すでに登録者は3000人を越えています。アメリカのレーベルであったり、個人のアーティスト、ミュージシャンとも連絡を取っており、彼らの楽曲をこちらに登録するように進めています。これが2次使用のライセンスに関する我々の取り組みです。

 

ライブ・ストリーミングの需要拡大と中国でのライブツアーへの施策
 

 

また、ライブ・ストリーミングに関しても取り組んでいます。中国では3億人がライブ・ストリーミングを閲覧しています。これは音楽だけではなくて、ゲームのストリーミングなどもあります。ライブ・コンサートの配信は、アーティストにとって人気を得たり、また新人アーティストを売り込むためには大変役立ちます。新人アーティストであればより認知度を高める機会となりますし、そこからすぐにオーディエンスのレスポンスが得られることも良い点です。

配信に関して2つのケースがあります。まず日本のイベントを中国に生配信する。これは日本のアーティストの協力を得てテストを行いまして、視聴者のレスポンスは大変良かったです。2つ目は中国でライブツアーを行うときに、その生配信、ライブ・ストリーミングを行う際に私どもがお手伝いします。

配信に関する売り上げですが、収入源は3つあります。1つは配信をすることで使用料を請求すること。2つ目はそのパフォーマンスに対する使用料。そしてオンラインのスポンサーシップや広告です。そういった3つの方法で配信によって収益を上げていくことができます。

最後に中国のライブツアーに関してお話したいと思います。中国におけるそのアーティストの市場価値に関しては、色々な観点から調べることができるかと思います。音楽のプラットフォームからは、そこでミュージシャンがどれだけ売れているかわかります。もしかしたら中国の公式な販売数というのは見られないかもしれませんが、どのぐらい再生され、どのようなプレイリストの中に自分の曲が含まれているか、そういったことも確認できます。そして、ソーシャルメディアでのフォロワー数やBBSでの反応、また、グーグルでサーチをかけることによって、どのぐらいの数が出てくるかということも指標になります。

しかし、中国では様々なサイトがありますから、すべてを把握することはできません。1つ1つどう検索をかけているのか、どのようなヒットがあるのかということも、なかなか見ることができません。そういったことをシンプルにまとめたのが「Hi Five Dashboard」で、音楽プラットフォームごとのランキングリストや、ファン層の細かい分析データなどを提供しています。

こういった私たちのサービスなどを活用していただき、中国のビジネスを上手く進めていただければと思います。また今年は中国で初めて任天堂がSWITCHを投入します。ゲーム会社が公式に中国市場に参入したことはまだありませんので、初めての機会となります。それと共に多くの音楽会社が中国市場に参入いただいて、私どもHi Fiveがお手伝いさせて頂ければと思います。ありがとうございました。

 

Maggie Zhou 氏(Hi Five Entertainment CEO)

 

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