【DAWN】新しいスタイルのライブエンターテインメント業界をリードするプロフェッショナルたちが語る、これからのライブエンターテインメント<前半>

インタビュー スペシャルインタビュー

DAWN Live Entertainment Summit 2017」第2部 業界をリードするプロフェッショナルたちが語る、これからのライブエンターテインメント
 

<スピーカー>
大田高彰氏 株式会社インターグルーヴプロダクションズ 代表取締役
福田浩士氏 株式会社meleap CEO
前田裕二氏 SHOWROOM株式会社 代表取締役社長
<モデレーター>
鈴木おさむ氏 放送作家

ライブエンターテインメントに特化したカンファレンス「DAWN Live Entertainment Summit 2017」の第2部としてイベント業界を牽引するトップクリエイターによるトークセッションが開催された。業界をリードするプロフェッショナルたちが語るこれからのライブエンターテインメントや、昨今人気を集める新しいスタイルのライブエンターテインメントの数々、その先の未来に何があるのか語られた。

SHOWROOM、SEKAI NO OWARI「Tarkus」、HADO

 

鈴木おさむ(以下、鈴木):最初に自己紹介も兼ねて、みなさんが今取り組まれている事業について教えてください。

前田SHOWROOMという生配信サービスをやっています。生配信サービスって古くはUstreamがあり、そこからニコニコ生放送やツイキャスなど、色々変遷があったんですが、SHOWROOMは視聴者の方が感動したら、感動の対価としてバーチャルギフトを飛ばして、収益の一部が演者に還元される仕組みになっているのが、今までのライブ配信との大きな違いです。今は10日間で1500万とか売り上げているような人もいるので、いわゆるYouTuberみたいな感じで、ひとつの現象になっているかなと思っています。

鈴木:大学生とか可愛い子とかが配信して、すごく売り上げたりしているんですよね。

前田:いわゆる事務所に所属してレーベルから曲を出して、そこにパッケージのアーティスト印税バンバン入ってみたいなことではない、新しいビジネスモデルを確立できたのかなと思っています。

鈴木:SHOWROOMを使ってオーディションとかもやっていますよね。

前田:多いときは月300くらいオーディションをやっていますね。日本でオーディションのプラットフォームとしても最大になっているのかなと思います。

鈴木:SHOWROOMは始まって何年ですか?

前田:今月末で丸4年ですね。

鈴木:この1年の加速はすごかったんじゃないですか?

前田:この1年で、日本の動画配信アプリの中では売上1位になっています。立ち上げ2年ぐらいは水面下で頑張っていたんですが、この1年ぐらいで一気にバーッと伸びた感じですね。

 

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鈴木:僕もSHOWROOMを色々なテレビの職場で見せたりしているんですよ。名前は知っているけど見たことないはない人が結構多くて。それでこの画面を見せると、みんな衝撃を受けますね。

前田:そうですよね。今回のカンファレンスで呼ばれている「ライブ」という文脈だと、オフラインのリアルのライブの話が多く出ると思うんですが、僕らがこの場に呼ばれている理由って、リアルのライブ空間をバーチャル上に再現したからだと思っています。いわゆる売上が単価×キャパシティだとすると、リアルはキャパシティのところにどうしても限界がありますが、ネット上だとキャパシティが無限にあるので、永遠にスケールしていくというモデルが作れたのかなと思います。

鈴木:やっぱりこういうものができてくると、代理店とかメディアとか、今まで必要とされていたものをすっ飛ばしちゃいますよね。ある人はスターになっていたり、人気者になるという点において、今まで必要だったはずのものが必要じゃなくなってくるのがすごいんですよね。

前田:根本的には、才能のあるクリエイターがきちんとちゃんと食べられるようにしていきたいという思いがあって、なぜ、そのクリエイターが食べられない状況にあるかというと、感動を与えるクリエイターと、感動を受けるオーディエンスの間にあまりにも人が介在し過ぎているんですよね。プロダクションやレーベル、流通と、中間にいるステークホルダーが多く、クリエイター本人の取り分があまりにも少ない。だから、そこには夢がないことになってしまっている現状と、もう1つは一定以上のパッケージ売上を実現できるような人でないと、そもそもデビューできないという現状があるので、それを上手く効率化して、色々な才能を拾っていけるようなプラットフォームになったらいいなと思っています。

鈴木:ありがとうございます。次に大田さんお願いします。

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大田高彰(以下、大田):僕の会社は基本的に前田さんがおっしゃったのとはまったく逆というか、リアルなコンサート制作の仕事をしております。僕自身は、もともとサマーソニックに出る海外のアーティストを呼んで、パフォーマンスをしてもらうための交渉や、現場でステージを作ったり、楽屋を用意したりとか、いろんなことをやっていました。その後、独立しまして、ULTRA JAPANのステージを作ったり、基本的に日々やっていることは非常にわかりやすいかと思います。アーティストで言いますとSEKAI NO OWARI、Perfume、flumpool、高橋優、来年以降からサザンオールスターズや星野源といった方々とのお仕事になります。

鈴木:僕は今年、SEKAI NO OWARIのツアーを手伝わせてもらいました。Fukaseが作った物語があるですが、それを脚本状態にしてくれないかと。Tarkus(タルカス)という国にまつわる逸話をFukaseが書いて、それを僕が脚本にしてステージにしていきました。ステージには4体のキャラクターの動物がいて、最近は何でも映像で処理するところを、わざわざ巨大な動物を作って、その動物たちに会話をさせているんですね。今はデジタル的な面も発達していますけど、あえてお金もかかるアナログ的な面にこだわってやっているのが、すごいなと思いましたね。

大田:おそらく彼らの世代、35よりもっと若いと思うんですが、今までやってきたことを、どう無視して新しいことをするかというか、簡単に言うと小生意気な人たちが次のことをやろうとしているんですよね。僕は昔からあるコンサートという、非常に現場的な、ステレオタイプの、悪く言うと固まった業界の中でどう戦っていくかなんですが、やっぱりアーティストが新しくなってきているように感じます。

特にSEKAI NO OWARIなんかはもう、やったことのないことをちゃんとやりたいと。そういった中で、ひとつの物語があって、例えば、それをここで僕が今話したらみなさん全員に伝わると思うんですが、これが5万人相手となりますと勝手が違います。音も反響するわ、何言っているかわからない、伝えられないといったところで、鈴木おさむさんに脚本を書いていただいて、これはおさむさんのアイデアだったと思うんですが、「1人の長老が話すんじゃなくて、オカマの鹿がしゃべったらどう?」と。そういう面白いキャラクターを4体立ててやったらどうか?というアイデアにはすごく助けられました。それを形にして「じゃあ5万人にどう見せようか?」というのは僕らの方で考えて、ステージ化したわけです。

鈴木:そうそう。2千人くらいのキャパだったらあれですけど、5万人の人たちに動物の会話を聞かせるという、ある意味ものすごくシュールなものを、ライブと一緒に見せていくのはなかなか大変ですよね。Perfumeのライブもそうだと思いますが、誰かが言った無茶を形にしていくのはすごいと思います。

大田:PerfumeはRhizomatiks(ライゾマティクス)さんと一緒にコンサートを作っていくんですが、彼らの思い描くビジュアルというのが、ライブでは普通できないんですけども、それを何とか作っていこうと試行錯誤しております。Perfume3人の動きに関してMIKIKOさんが入って、その動きをどういう風に具現化したら、何万人の前で同じことが見せられるかとか、最終的に映像としてどういうことができるかということを作っています。

鈴木:ステージの上で踊る、歌うっていうことにまだこんなに新しい可能性があるんだという。本当にすごいですよね。さて、次は福田さんお願いします。

福田浩士(以下、福田):僕らはARを使ったHADOというスポーツを作っています。頭にゴーグルをかけて、腕にセンサーをつけて、エナジーボールを撃ち合って戦うというスポーツなんですね。元々は「かめはめ波を撃ちたい」というところから始まりまして、「どうやったら撃てるんだろう?」と考えていたんですが、ウェアラブルとかセンサーの技術など色々進化してきているので、「これを使ったら何かできるんじゃないかな?」と4年ぐらい前に考え始めました。

で、かめはめ波が撃ち合えるようになったんですが、撃ち合えるようになったら「これってスポーツになるな」と思って、スポーツとして成長させていこう。このARとか色々な技術を使った新しいスポーツ市場を僕らはテクノスポーツと名付けました。このテクノスポーツって、今まであるアナログスポーツとはちょっと違うと。スマートデバイスや色々なIT技術、通信技術とかを使って、やっと実現できるような世界なんですね。これってモータースポーツが自動車によって生まれてきたのと同じような動きができるんじゃないか?と思っています。ですからアナログスポーツ、モータースポーツ、それに続くテクノスポーツっていう市場を作っていきたいのが、僕らが目指しているビジョンですね。

まだ市場を立ち上げ始めたばかりなんですが、これをしっかり文化として根付かせていって、子供たちにも憧れの存在として育てていきたいんですよ。小中学校の義務教育に、こういったスポーツを入れると。HADOだったら、HADO部っていうのがあってですね、日々練習する人たちが必要なんですね。で、憧れの場としてはプロリーグができていて、野球選手、サッカー選手と同じように高い給料をもらって、世界で活躍するようなプロ選手を育てていこう、という風に思っていますし、HADOの世界大会を去年から始めていまして、今年も12月3日にやります。

弾き語りの経験がヒントになったSHOWROOM〜「人に対してお金を払う価値観」への変化

鈴木:はい。そんなお三方に、改めて今のビジネスに取り組もうと思った理由をお伺いしたいんですが、SHOWROOMはなぜ取り組もうと思われたんですか?

前田:ひとつは、僕自身が駅前で弾き語りのミュージシャンをやっていたのが大きいです。そのときにギターケースを目の前において、歌を歌ってお金を入れてもらうということをやっていたんですが、それがエンターテインメントのマネタイズのひとつの形として面白いと思っていたからというのがありますね。

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鈴木:すごく疑問なんですが、例えば、自分がこのビジネスをもし始めようとしたら、歌を歌っている人に対して投げ銭をする気持ちってなんだろうなと考えると思うんですよ。頑張ってねとか、ちょっとお義理の気持ちもあったりとか、本当に好きになったりとか、色々な理由があると思うんですが、最初はファンじゃない人に対して投げ銭をするって、俺だったら「やんないんじゃないかな」って思っちゃうんですよ。「投げ銭する、それ?」って。

前田:なるほど。昔からすごく感じていたことなんですが、人が何に対してお金を使うか?という観点、いわゆるクオリティという言葉の定義が変わってきていると思っていまして、この会場にいるみなさんとか、我々が旧来の認識でいうとエンターテインメントにおけるクオリティって例えば歌が上手いとか、舞台がすごく豪華であるとか、洗練されていることがクオリティの定義のひとつだったと思うんですが、それって「物に対してお金を払う時代の価値観」だと思っていまして、物に対してお金を払うところから、「人に対してお金を払う価値観」に変わってきているって感じるんですね。

ある種、SHOWROOMでお金を払っている人たちというのは、どんなに変な、下手な歌を歌われても、その人が歌う歌であればお金を払い続けたいと思うような状況になっている。だからその人の歌が好きだということじゃなくて、その前にその人自身が好きだという状況になっているんです。人が人を好きになる大前提ってコミュニケーションですが、コミュニケーションが起こるというのが大事で、リアルで僕が弾き語りやっていたときも、どんなに上手く歌っても特にお金って入れてもらえるものではなくて、まずは自分がコミュニケーションできる範囲に入ってきてもらって、話をして、「なぜここで弾き語りをやっているのか?」知ってもらうことがすごく大事だったんですね。

弾き語りは小6で始めたので、小学生のときには「なんで弾き語りやっているの?」みたいな話になって、そこで会話をしていくうちに、僕が歌う歌自体じゃなくて、僕がそこで歌を歌っている文脈にすごく価値を感じてくれて、共感し、お金を使うというモデルなんです。しかも、それってリアルよりもネットの方が起きやすいというか、1回駅前で弾き語りしてみるとわかるんですが、本当に人が寄ってこないんですよね。怖いから。

鈴木:確かにちょっと怖いから、気持ち避けちゃいますよね。

前田:そうなんです。あとCDとか置いてあるじゃないですか。それで「CD買ってくれませんか」って言われるとか、ちょっと立ち止まって30秒聴いていたら、「『今聴いていたよね』って感じで、『お金』とか言われるのがイヤだから」とかいろんな理由でみんな近づいてこないんです。だから一番重要なことは、コミュニケーションが自然に成立する範囲に人を呼び込むことなんですが、リアルでそれってすごく難しいんですね。だから僕がやっていたのは、小学生の僕にツッコミどころをたくさん作るということをやっていたんです。吉幾三を歌ってみたりとか、小学生なのに南こうせつずっと歌っていると、「どうしたの?」みたいなことを言ってくるので、そこで会話が成立してという。

鈴木:引っかかりを作るってやつですね。

前田:ネットのいいところって、それを考えなくていいんですよ。もうバーチャルアイデンティティだから、いきなり話しかけてくるんですよね、みんな。で、コミュニケーションが起こって、そのコミュニケーションを前提にして関係性がどんどんできてくる。関係性ができると、人が人に対してお金を払うというモデルが成り立ちやすくなります。

あと理由のもうひとつが、ライブ配信のモデルがもともと中国で爆発していたんですよね。市場規模でいうと5000億円ぐらいで、日本のソーシャルゲームが大体9000億ですから、それに近づいています。マンスリーで今ライブ配信に関わっているというか、使っているユーザーの数も4億人とか5億人近くいっているということなので、すごく大きな市場になっているというのが2011年ぐらいだったんですが、自分の中で何か「やられちゃったな」というか。直接支援の市場って、自分が一番やりたいと思っていたところなのに、中国がグローバルでもう先に行ってしまっているっていうのが悔しかったのがもうひとつのきっかけです。

鈴木:色々な国で当たっているものを、ビジネスモデルにして始める人もたくさんいると思いますが、日本向けに改良しなくてはいけないじゃないですか? 日本人特有の感覚というか。そこって何か気をつけていますか?

前田:一番は、お金に対する表現の感覚ですね。中国ってユーザーに「財力」というステータスがあったりするんですね。すごくないですか? サービスを使うと自分に「財力」というステータスがあるっていう(笑)。

鈴木:ははは(笑)、すごいですね。

前田:今までサービスにどのくらいお金を投じてきたかによって、「財力」にランキングがついていて、高いと「王様」みたいになっているんです。そして「王様」としてサービスに入ると、特別なエフェクトがブワーっと出てきて、「王様が来たぞ!」みたいになるという。

鈴木:へえー!

前田:それをそっくりそのまま日本でやったら絶対、嫌儲文化っていうか、投げ銭という言葉自体も直接的な表現で、あんまり前向きに思ってない方も多いと思うんですが、そこですね。お金を稼ぐための場所ということでは必ずしもないという場にしたのが大きいかもしれないですね。

鈴木:例えば、投げ銭とかマッチングアプリのマッチングというものに対しての感覚って、ある世代からまったく違いますよね。

前田:まったく違います。世代間の違いがあります。

鈴木:マッチングっていうと、「えー出会い系?」みたいな感じとか、投げ銭だと「えーお金取るんでしょ?」みたいな。でも、ある程度下の世代からは、もうそれがエンターテインメントの感覚として成り立っているじゃないですか。そこですよね。

前田:本当に下の世代だけをターゲットにするのであれば、もう中国と同じようなモデルをトレースしてもいいかなと思ったんですが、もう少し色々な世代に汎用的に通用するプラットフォームにしたかったので、中国の、いわゆるお金に対するダイレクトな表現の色を消すっていうことと、日本独特の温かい雰囲気と言うか、共感を促すようなものを目指しました。

鈴木:共感して繋がるってやつですね。

前田:ええ。甲子園をみんなで応援して、負けたチームが、負けたからこそ、そこにドラマが生まれるみたいなのが好きじゃないですか。で、砂を持って帰る、みたいな話が日本人は好きなので、あの感じをネット上に再現することにすごく注力しましたね。

世界中のバンドを日本の人たちに見せたい

 

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鈴木:さあ続いて大田さんはどうでしょう?

大田:もともと10代でバンドをやっていたんですが、うまくいかなくて、21歳ぐらいのときに1回ニューヨーク行って、1カ月ぐらいそこで弾き語りをしていたんです。

鈴木:みんなやっていたんだね(笑)。

大田:(笑)。とりあえず英語も片言で、その当時流行っていたDef Techとかをやればウケんじゃないの?みたいな感じで行ったらある程度ウケたんですが、世界中のバンドが集まってくるライブハウスに行ったり、あとミュージカルが気軽に観られるので、そういうのを観て「あ、完全に無理だ」と。そもそも自分が目指しているものが、他人が作ったものに乗っかろうとしているだけだったので、「全然違うな」とあっという間に諦めました。

その代わりに、今見たこの感動を日本でどうやったら見せることができるんだろう。イコール、海外のアーティストが日本に来てライブ見せるのと一緒なんですが、そういう仕事したいなと思っていたら、ちょうどサマーソニックのようなフェスが開催されるようになり、色々なアーティストが見られる状況になってきたので、ストレートなんですけど、サマーソニックの仕事させてもらってというのがすべての入り口です。

鈴木:僕は今45歳で、もろCD世代なんですよ。それこそ90年代はCDがバカ売れしていたわけですが、当時はCDで儲けて、ライブでは別にそんな儲けなくていいみたいな時代があったんですよね。でも今、逆じゃないですか。CDも売れないから、逆にアーティストがライブ回帰というか、ライブをやっていく時代になっていますよね。

大田:そうですね。やはり収益を考えると今はライブがスタートで、物販があったり、いろんなものが派生していくというのがビジネスとしてすごく大きくなってきています。また、お客さんの見方も、若い世代はだいぶ変わってきているのかなと思っていて、その楽しみ方というか、ライブに来てアーティストに会えて嬉しい、しかも知っている曲が聴けて楽しいだけじゃない感じなんですよね。

我々は事業としてライブを中心にしているので、来た人間にどうやったらもっと楽しんでもらえるか、どういったことをアピールしていけるかというのは常に考えてはいるんですが、来る方々も「単にライブに行くだけじゃ…」と感じているのかなと思っているんです。おそらく前の方の席の人たちは、ライブに来たい、前の席に座りたい、知っている曲をなるべく聴きたいというのがメインなんですが、若い方がそれだけではない付加価値を求めているのかなと感じています。

鈴木:今、フェスってすごく増えているじゃないですか。日本でこんなにフェスが増えている理由って何ですか?

大田:非常に悪く言うと、アーティストが何か主導でやるようなイベントじゃなくて「とにかくイベントをやろう」みたいな、そんな人たちが増えてきているのは現状としてあります。それに関して僕は危惧していて、簡単に言うと当たるイベントと当たらないイベントが真っ二つに去年、今年から分かれていて、なぜお客さんが来るのか、来て何を楽しみたいのかということを考えずにやっているイベントが多いのかなとは思っているんです。

もちろんアーティストをとりあえず集めてライブやろうというものだけじゃなくて、地域の経済が活性化するようなイベントに、音楽が乗っかっているような、いい形のものも増えてきているのかなと思っています。ですから、イベントがあること自体が悪くは思ってはないんですが、いい形に淘汰されて、いろんな形が増えてきたらいいなとは思っています。

鈴木:だから昔より日本人はイベントにお金を使っていますよね。

大田:なんか「チケット代いくら? じゃあ行こう」という感覚よりも、行って何か楽しみたい気持ちの方が強いんですよね。ご飯だったり物を買ったり、さらにその中にアミューズメントがあって、そこにお金を払うとか、そういったものは結構当たり前になっています。入り口さえ越えてしまえば、行ったら面白いというのが非常にあるので。この間のULTRA JAPANとか特にそうなんですが、行ってからの方がお金使う。あそこはお酒が飲めるので。パーティ会場入り口のお金を払うだけで、入ってからいかにバカ騒ぎして楽しんだかというのが彼らの思い出になるというか、行った価値になるので。そこをひっくるめて行こうというハードルは良くも悪くも下がって、行く人が増えていっているのが今の状態です。

鈴木:そうですね。フェスもそうですし、この3〜4年の、日本の2.5次元の舞台ビジネスもすごいですよね。

大田:多いですね。

鈴木:やっぱりただ見に行くだけじゃなくて、行って物を買ったりする人がすごく増えていますよね。あと音楽で言うと、テレビの音楽番組が少なくなったのでイベントに出る。またはSHOWROOMみたいなところに出て、お金をもらうとか、音楽ってエンターテインメントの中で一番最初に変わってきましたよね。

「かめはめ波を撃ちたい」から立ち上げたHADO

 

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鈴木:福田さんはどうでしょうか。

福田:始めたきっかけは、先ほどもお話したように、「かめはめ波を撃ちたい」というとこなんですけど(笑)。僕は新卒でリクルートに入ったんですよ。それで営業をやっていまして。

鈴木:営業やっていたんですか!?

福田:そうなんですよ。しばらく営業やっていて楽しかったんですが、「人生で何をやりたいんだっけ?」と改めて考えたときに、やっぱりこう「魔法を使いたい」「かめはめ波を撃ちたい」というところだったんですね。で、それをやりたいので会社辞めますって言って起業したんですけど…。

前田:その、いつから思っていたんですか?「かめはめ波を撃ちたい」っていうのは。

福田:小学生の頃からずっと練習するじゃないですか。気功の使い方みたいな本を読みながら練習するんですけど、やっぱ撃てないわけですよ。

鈴木:そりゃそうですよ!(笑)小学生がかめはめ波を撃ちたいって言うのはわかりますが、二十歳越えたいい大人がかめはめ波を撃ちたいって、ちょっと危ないところあるじゃないですか。

福田:あの…諦められなかったんですよね。

鈴木:そんなに撃ちたかったんですか!

福田:呼吸法とか学びましたし、本当に色々やったんですよね。

前田:諦めてなかったんですね。

鈴木:本当に撃とうと思ったんですか!?

福田:はい。色々チャレンジして、できなかったんで。でもこれだったらできるんじゃないか、っていうのがARの技術だったんですよね。きっかけは先ほど申し上げたような、Perfumeのステージを見てですね。身体に伴って映像が変わるじゃないですか。こういう技術って今後どんどん進化してくるだろうなと思って。その当時はKinect(キネクト)を使っていたと思うんですが、新しい技術で今までできなかった夢を実現できるところに可能性を感じてやろうと思いましたね。

鈴木:すごいなと思ったのが、技術があってかめはめ波をやるんじゃなくて、かめはめ波を撃ちたくて技術を使ったと。どうやって仲間を集めていったんですか?

福田:最初は色々なハッカソンやアプリコンテストに出しながら、稚拙なプロトタイプを出して夢を語り続けると。次第に仲間が集まってきてくれて、それで会社としてできあがってきたんですけど。今、世界各国にも出しているんですが、かめはめ波とか波動拳って世界中の人たちが知っているんですよ。ですから見れば、やればすぐに共感してもらえるというのは、すごくありがたいところですね。

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▼後半は12月22日公開

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