ニューミドルマン養成講座第2期スタート決定!記念対談「アーティストが望むニューミドルマン像」山口哲一×☆Taku Takahashi

インタビュー スペシャルインタビュー

左から:山口哲一氏、☆Taku Takahashi氏

インターネットの登場、ハイスピードでの進化により、音楽ビジネスも変化を迎えております。「ニューミドルマン」とは、デジタル化、ソーシャル化が進む音楽ビジネス、エンタテイメント・ビジネスにおいて、ユーザーとクリエイターの間に立ち、新しい技術や仕組みを使いこなすと同時に、エンタテインメントの現場に蓄積した知恵とノウハウを習得し、活躍するスタッフ、関係者像と言えます。「ニューミドルマン養成講座」は、そういった人材を養成する講座として、昨年プレ講座をスタート、本年より、第1期の講座をスタートし、音楽業界のみならず、学生、IT企業、広告など、様々な業種から音楽への熱い気持ちを持った受講生が参加しています。好評につき、5月30日より、第2期のスタートが決定しました。
 今回は、ニューミドルマン講座第一期、4月4日に行われた☆TakuTakahashiさんゲスト回の講座で話された対談を掲載します。受講生の質問も随時、受けながら活気のある講座となりました。

 

山口 哲一(やまぐち・のりかず)
音楽プロデューサー/コンテンツビジネス・エバンジェリスト/(株)バグ・コーポレーション代表取締役


1964年東京生まれ。「デジタルコンテンツ白書」(経産省監修)編集委員。アーティストマネージメントからITビジネスに専門領域を広げ、2011年から著作活動も始める。エンタメ系スターアップを対象としたアワード「START ME UP AWARDS」をオーガナイズ。プロ作曲家育成「山口ゼミ」や「ニューミドルマン養成講座」を主宰するなど次世代の育成にも精力的に取り込んでいる。異業種横断型のプロデューサー。 著書に『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』(ダイヤモンド社)、『世界を変える80年代生まれの起業家』(SPACE SHOWER BOOKs)、『とびきり愛される女性になる。』(ローソンHMVエンタテイメント)『最先端の作曲法・コーライティングの教科書』(リットーミュージック)がある。
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☆Taku Takahashi(たく・たかはし)
DJ、プロデューサー


98年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやRemix制作も行う。「Incoming… TAKU Remix」で “beatport”の『beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS』を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。10年にはアニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックも監修するなど様々なシーンで活躍。ソロ名義“THE SUITBOYS”としてMIX CD「AFTER5 VOL.1」を発表し多種多様な音楽性を存分に発揮。またインターネットラジオ“block.fm”を立ち上げ国内外のTOP DJが最先端の音と情報を発信し、今最も熱いメディアとして注目を集めている。
2012, 13年連続でLOUDの“DJ50/50”の国内の部で1位を獲得するなど、DJとしても益々進化している。2014年3月26日にはNEWアルバム「FUTURE IS WOW」を発表。
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  1. クラブ/ダンスミュージック専門ネットラジオ「blockFM」のスマホアプリ登場!
  2. J-POPの活況はクラブシーンの盛り上がりと比例していた -日本のクラブシーンの現状と課題-
  3. ビジネスと音楽、インディペンデントに活動して思う事-ニューミドルマンに期待すること-

 

クラブ/ダンスミュージック専門ネットラジオ「blockFM」のスマホアプリ登場!

山口:ニューミドルマン養成講座、今日のゲスト講師は☆Taku Takahashiさんです。m-floなどで、音楽家として成功しているだけではなく、blockFMというダンス・ミュージックのインターネットラジオを事業としてやっています。Takuさんのビジネスマンとしての側面のお話を伺い、同時に音楽家としてニューミドルマンに何を望むか語っていただくというのが、今日のテーマです。

☆Taku:blockFMというストリーミングサービスをやっています。まもなくiPhone用のアプリが出ます。いろんなジャンルの音楽や番組が聴けたり、DJ MIXが聴けたりする。いろんなクラブミュージックやダンスミュージックのニュースが読める。音楽誌、ダンスミュージックの専門誌って休刊してるんですよ。休刊したいろんな雑誌が、ネットでニュースを載せていて、それを集めたクラブシーンやダンスミュージックのキュレーションサイト、アプリですね。気に入った曲や、気になる記事を後でチェックできる「クリップ」機能やパーティーやドライブ等、シチュエーションを想定した「シーン・プレイ」もおススメですね。アルゴリズムでの選曲も進化しているんですが、優秀なプロのDJが選んでる。

blockFM

山口:毎日生放送してますよね?

☆Taku:毎晩放送しています。ただ、最近は生放送よりオンデマンドで聴く人が増えている。すごく肌で感じているのが、震災直後はみんな繋がりたがっていた。それでTwitterメインっていう発想だったんですけど、それがだんだん面倒くさくなった。でも繋がりたい。で、Facebookにシフトしていったのかなと思った。だから、人とは繋がりたいけど、自分の時間もコントロールしたい、自分の都合のいいタイミングで人と繋がりたい時代になってるのが、生放送リスナーより、オンデマンドにシフトしている傾向かなと。

山口:なるほど。面白い分析ですね。そこでスマートフォン向けのアプリと。

☆Taku:BlockFMで流れる曲って、実験的でマニアックなものも多いけど、そうでないものもいっぱいあります。最近EDMっていうキーワードが広って、何を聴いたらいいかわからないっていうユーザーも多いので、音楽を紹介するキュレーション記事を書くことで、役に立てたら。聞きたい曲を探している人にとって使いやすいものにするというのが、アプリを作った理由ですね。

それから、アプリのいい面は課金のシステムがプラットフォームとしてあることです。基本は無料で楽しめるけれど、課金対象にするのはオフライン再生。「クリップ」の数を無制限。そこでしか読めないオリジナル記事も用意します。

山口:なるほど。いわゆるフリーミアムのモデルですね。無料で使ってもらって、「クリップ」しておきたい記事が増えたり、オフラインでも音楽を聞きたいとか、BlockFMの価値をわかってくれた人には、有料で使ってもらうということですね。

ただ、ユーザーがサービスにお金を払う時って、機能も大切ですけれど、「お布施」的な意味もあると思います。BlockFMには、そういうBlockFM頑張ってほしい、応援したいという気落ちでお金を払おうとする人が結構いると思う。僕は有料会員になりますよ(笑)。

☆Taku:ありがとうございます(笑)。

山口:ダンスミュージックをアップデートにチェックするのに便利そうだし、それ以上に、数年前からblockFMという日本の音楽シーンのために価値がある事業に取り組んでいることへのリスペクトをしています。でも、ビジネスを実際にやると大変でしょう?

☆Taku:何事もやってみないとわからない。何か新しい事をやると、いろんな事を経験してきたつもりだけど、それでも、新しい発見があると思う。お金のために始めた事じゃないけど、やりたいことをやろうとすればするほど、お金って大事ですね、ってことを学びましたね。アーティストとしては、CDバブルの時期で、ある意味で恵まれていました。やりたいことに集中して、ある程度成功できたと思うけど、その頃は気づかなかった事ですね。何かをしたい、続けたい、好きなことやるのにお金が必要だというのを実感しています。

 

J-POPの活況はクラブシーンの盛り上がりと比例していた -日本のクラブシーンの現状と課題-

ニューミドルマン養成講 山口哲一、☆Taku Takahashi

受講生から質問:日本のクラブシーンの規模はどのくらだと思われますか?海外と比べてクラブ人口の比率は少ないのでしょうか?

☆Taku:日本のクラブ人口についてはわからないけど、世界的に見て、パーセンテージは低いと思うし少なくなっていると思います。7〜8年前の方がDJたちも集客しやすかったです。クラブには、「音箱」と「ディスコ箱」の二種類に分ける呼び方があるのですが、音箱はクリエイターたちがDJをやってる場所で、テクノとかEDMでもBillboardと繋がってない曲もかかったりする。ディスコ箱はよりポップスがかかる。ディスコ箱は結構客入ってたりするんですよね。ここは雇われているDJがいたりして、クリエイターDJはあまり呼ばれなかったりするんですけど。おおまかに言うと、ディスコ箱には客が入っていて、音箱は苦戦気味。隣の韓国とか台湾は、日本と違って週末にオシャレして出かけたり、カップルで遊びに行ったり、音箱が賑わっています。

山口:そういう話を聞くと危機感を持ちます。このままだといよいよ、日本の音楽シーンはピンチだなと。J-POPが面白かった時期って、東京のクラブが面白かった時期とリンクしてるじゃないですか?アジアの大都市にもアンダーグランドを含んた都市カルチャーは必ずあるけど、東京に比べれば幅が狭かったし、層が薄かった。最近は、追いつかれていると。さらに風営法を警察が厳格に適用して、クラブが摘発されるという、行政が日本を弱くする動きをやっているのはまずいですね。日本のクラブカルチャーが微妙になってる中、ソウルが盛り上がってる話を聞くと、心配です。

☆Taku:文化の違いは感じます。日本にはダンスミュージックがまだ根付いていないなと。中学校でのダンス必修化も良いことですが、僕らが言ってるダンスと違うんですよ。音にあわせて、自由に体動かすのがダンス。学校でやるのは。振りや型、ステップを覚える。正しいダンスなんて無いはずなのにね。極論ですが、学校で教えたせいで、ダンス嫌いになったらどうしよう?って思います。自分で自由に踊りを編み出して遊ぶみたいなものとカルチャーを日本に根づかせていきたいですね。

山口:若い人を中心に日本にもEDMブームが広がっていて、去年のULTRAに続いて、他にもクラブ系フェスが上陸しますよね。この分野も韓国が先行しているようですが、TAKUさんは、どうとらえていますか?

☆Taku:あれは一種の黒船って思ってるんですよ。ULTRAっていうレーベルが始めたイベントなんですけど。韓国では4〜5年前から始まったのかな。世界の音楽のビッグビジネスの方法論が日本には入ってきてなかったんだけど、それが入ってきた感はありますね。そういう意味では、去年は日本でのEDM元年だったかもしれないですね。色々あるんですけど、ノウハウを学ぶチャンスじゃないかなと思ってるんですよ。向こうの人の上手さ、見せ方の上手さとか。見えるところはメチャクチャ綺麗なんですよ。見えないところは汚い(笑)。日本人は、見えないところもきれい。それは素晴らしいけど、今の世界のスピードには、向こうが合ってるのかもしれない。

あと、こういうデカいフェスを成功させるだけでなく、クラブにお客さんが来るようにしたいですよね。サッカーでいう日本代表だけでなく、Jリーグにお客さんを、というのと似ている。でも、強い代表を育てる国は国内リーグも強い。きちんとマネタイズされている。

山口:そのサッカーの喩えは当たっていますね。サッカーで、日本代表が強くなったのは、Jリーグを作って、当時の川淵三郎さんが「100年構想」とぶちあげて、サッカー文化を日本に根づかせる、地元に根づいてユース機関を持ったチームしかJリーグに入れないと言って、そういう成果だと思います。

☆Taku:そうですね。クラブって実験場なんですよ。クリエイターやDJが曲を作って、そこで新曲をリリースして、オーディエンスの反応を見る。特にダンスミュージックはそういう作り方をする。体感音楽なので、そういう実験場が常に必要。若手の育つ場でもあるし。

海外のポップス、K-POPもBillnoardもダンス音楽と精通しているんですよね。アーティストがクラブに遊びに行って、実験的に作られたダンス音楽を「カッコいいから」って次のシングルに取り入れて、それがまたヒットしていくっていう構造があって、韓国でもヒットしてるのがダンスミュージック的なものが多い。日本はポップスとクラブでかかるものが離れているのも、ダンスミュージック、クラブカルチャーの割合が少ない理由の一つかなと思います。

 

ビジネスと音楽、インディペンデントに活動して思う事-ニューミドルマンに期待すること-

山口:音楽家として、サウンドプロデューサーとして、これからのスタッフ(ニューミドルマン)、音楽ビジネスに携わる人に、特に次世代の人に期待する事、言いたいことはありますか?

☆Taku:僕はインディペンデントでやってるけど、インディペンデントになればなるほど思ったのは、スタッフって大事だなと感じるんですよ。最近、若いアーティストがメジャーレーベルのオファーを断ったりするんですよ。俺らの若い頃、大手のメジャー契約とか速攻やりましたけど。

山口:何でだと思います?条件悪いから?同人音楽で成功していると、メジャーデビューして年収半分になるとか言いますね。

☆Taku:それはありますよね。あと、新しい音楽を売るノウハウを持っていないことがある。古い体質のレコード会社だと、レコードを売るのが仕事っすよね、ってなっちゃうでしょ。iTunesでもいいし。自分らのカタログを売ることが仕事になってる。それが間違ってると思う。今どうあがいてもセールスは落ちていく。止められない。レコード売ることだけを考える体制ではなく、他に売り上げを上げることをやるべきだと思う。

山口:音楽業界での実績はないけど、音楽の仕事をしたい。その一人一人はどうしたらいいと思う?どういうマインドセットで、どういう道筋で考えればいいと思いますか?以前だったら、新卒でレコード会社に入るという選択肢もありましたけれど。

☆Taku:すごくいい部署に入れて、面白いA&Rがいるところで働けるならいいけど、なかなか難しいですよね。今は、個人がデカいところと戦える時代になってきている時代かなと。もちろん簡単ではないけど。そんな簡単なら、みんな大金持ちになっているだろうし。

一番大事なのは、自分が好きでいられる事だと思いますよ。好きだからガマンできるっていう事はすごく大事だと思います。好きでなんとか、みんなに知ってもらいたい、だったら徹夜でもするよと思える事。そういうモチベーションに繋がる自分の好きな事をやる。無いなら探す。で、そこでインディペンデントに、どうやったら人がバズってくれるのか考えて、マスメディアを使わない方法論で大衆的じゃない、特殊なもの、少数を集めたもので成功させたりするのがいいんじゃないですか。

山口:若い人の感性を活かすチャンスは広がっていますよね。例えばソーシャルメディアや新しい技術を活用するというのは、過去の蓄積が必要ないから、ベテランのスタッフに経験のない人が勝てる可能性がある。時代の追い風はあると思います。

☆Taku:そうですね。スキルとしては、特にネットの検索能力、海外で起こってることからアイディアを得る。海外の成功事例が日本でそのまま当てはまるとは限らないけど、マンネリを脱したり、ヒントになる。だから、向こうに旅行して、遊んだり、ネットで写真を見たり、動画を見たりでもいいですし、英語わからなくても、見るだけでもいいじゃないですか。十数年前だったら、日本だけで自給自足出来てたけど、今は世界とどう繋がっていくかが大事だと思う。そういうインプットを集める。そして、自分の持ってるものとしっかり照らし合わせて、どうやってバズらせるか、それをどうやって収入にしていくかという事だと思います。

受講生から質問:アーティストと経営者どっちが本業ですか?

☆Taku:経営は経営で楽しいですが、やりたいからやってるわけではなくて、自分のやりたいことをやるために、そういう選択肢が一番だと思ったから。もしやらなくていいなら、やらないと思う。勉強にはなるし、事業も楽しくやっていますけれど。それに、今の時代、自分から発信していかなきゃいけないし、情報の出され方がパーソナルになってきてるし、アーティストもある程度自分でやっていかなきゃいけないと思ってますね。

山口:インディペンデントとセルフプロデュース。これからの音楽家に必要なキーワードですね。

受講生からの質問:blockFMは海外での展開も考えていますか?

☆Taku:はい。考えてます。もっとアジアを意識してもいいと思ってます。日本のコンパイル能力、セレクト能力は世界に通用すると思うので、そこをうまくアジアに持っていきたい。

山口:アジアを視野に入れた時に、日本人には、まだまだチャンスが残っていますよね。ダンスミュージックは、ポップミュージックを牽引する役割もあるので、期待します。

☆Taku:アジア進出っていうより、それぞれの国と繋がりたいです。パートナーシップを組んでお互い成功できる形を作りたい。進出なのかもしれないけど、感覚的には共同ビジネスをしていきたい。

山口:賛成です。いつも話していて思うけれど、TAKUさんの識見は素晴らしいですね。感覚と論理のバランスがとてもよい人だなと感心します。ニューミドルマン養成講座は、勉強するだけじゃなく、実際にプロジェクトも立ち上げていきたいので、引き続き、関わってください。こちらからもTAKUさんに提案できるようにしたいです。

☆Taku:素晴らしいですね。ぜひ、よろしくお願いします。今日は、ありがとうございました。

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