スマホ電子チケットサービス特集 スマートフォン・チケット「tixee」Live Styles(株) 代表 松田 晋之介氏インタビュー

インタビュー スペシャルインタビュー

松田 晋之介氏
松田 晋之介氏

新しい電子チケットサービスを提供する企業にクローズアップ、第二弾はサービス開始直後にMr.childrenのドームツアーで利用されたりと積極的に展開中のスマートフォン・チケット「tixee」を手がける Live Styles株式会社 Founder & CEO 松田 晋之介氏に話を伺った。(編集部)

[2013年11月]

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——tixeeはどのような経緯で始められたサービスなんでしょうか?

松田:我々は最初、アメリカのソーシャルチケットサービス「Eventbrite」をサービスのベンチマークとしていました。「Eventbrite」は誰でもイベントが簡単に作れて、課金ができて、低手数料でチケットコントロールできるというサービスで、QRコードを読み取って入場させる手軽さがアメリカで受けてたんですね。

我々も最初はQRコードを使ったチケットサービスを構築していたんですが、営業に行って説明すると「QRコードって別に新しくない。しかも入場に時間がかかるし、今まで色々失敗してきたから」と言われるんですね。我々は音楽やスポーツなどで1,000人以上扱うイベントに導入してほしいと思って営業していたんですが、全然導入されず、やはりソーシャルチケットと言えども、ベースのチケットとしての役割がしっかり果たされないものは相手にされないと実感しました。そこで我々がたどり着いたのが、チケットをビリっともぎって入場するというスタイルで、そのほうがお客さんも慣れていますし、運営側も今まで通りで簡単なんです。それをそのままスマートフォンの中に完全再現したのが弊社の入場システム「電子もぎり」で、現在、特許を取得してサービス展開しています。

——その「電子もぎり」の開発はどれぐらいかかったんですか?

松田:試作品も含めると3か月ぐらいかかりました。僕らがQRコードで営業を始めたのが2012年3月頃で、始めて1か月半ぐらいで「もうQRコードは駄目だ」と(笑)。それで悩んで悩んでできたのが「電子もぎり」の形で、踏ん切りがついたのは7月ぐらいですかね。そのときに「僕らが何をやったらトガれないか」というのをとりあえず挙げていったんですよ。まずプレイガイドと同様にコンビニ発券したらトガれない、紙のチケットの時点でトガれない、そしてPCベースでもトガれないと考えたときに、我々がトガれるのはスマホしかなかったんです。

——tixeeが「ソーシャルチケッティング」ではなく「スマートフォン・チケット」と言っているのは、そういう理由なんですね。

松田:ええ。今、マーケット全体で完売イベントって全体の3〜5%と言われているんですね。ということは95〜97%はポテンシャル市場なわけです。主催者さんたちが口を揃えて言う言葉があって、それは「10代、20代のお客さんをもっと呼びたい」ということなんですね。それは音楽だけじゃなくてスポーツも、劇場も同じことをおっしゃいます。ですから、10代、20代も接触しやすいメディアで情報を伝えるべきではと思い、我々はスマートフォンに振り切ってるんです。

——実際にtixeeがサービスを開始したのはいつですか?

松田:2012年の9月末ぐらいですね。本当に恵まれていたことが1つあって、それは烏龍舎のご担当の方がtixeeの可能性を瞬時に理解してくれた事。その出会いがあって10月には12月のMr.childrenのドームツアーに導入が決まったり、予想よりも早く大規模な依頼が来たのは嬉しかったです。その方には自分は常に感謝しています。

——今までtixeeを利用して行われたイベント数はどのくらいなんですか?

松田:イベント数で言うと今までで、だいたい4千ぐらいですね。

——規模的に言うとどのくらいのイベントが一番多くなりますか?

松田:1千人から5千人の間ですね。そこがソーシャルチケットと違いますね。

——他のソーシャルチケットサービスは街コンとか、友達とやるライブとかに使われているみたいですね。

松田:そうですね。去年は街コンが売り上げに占める割合が半分越えていたときもあったんですが、ソーシャル的なお客様と興行としてのお客様も急増し、今は我々の売り上げの割合も大きく変動をしてきました。

——イベント主催者の属性で言うとやっぱり音楽が一番多いんですか?

松田:今は音楽が一番多いです。その後にスポーツ、最近はJリーグさんやFリーグであったりとか、あとはプロ野球ですね。ファイターズさんやジャイアンツさんとかとお取引させていただいているので、そこがうちの強みかもしれません。

——ワークショップやカンファレンスとかというよりも、もう少し規模が大きく、エンターテイメント性が強いイベントが多いんでしょうか?

松田:そうですね。最初、我々はチケットマーケットを規模の大小だけを軸に見ていたんです。でも、そこには入場スピードが求められるものと求められないものがあることが分かって、その軸を加えることによって全体が見えるようになったんですね。

そこで、大手プレイガイドさんが取り扱ってるのはどこなんだろう? と考えたときに、大規模で入場スピードを求められる領域だったんですよ。そして、C to Cのマーケット、ソーシャルイベントは、小規模で入場スピードをあまり求められていない領域で、そこはQRやプリントアウトチケットでも良い。今後このマーケットが大きくなるだろうと考えてますが、いつ大きくなるか分からないですし、今どれだけ使用規模があるのかもまだよくわかっていないんですね。

もっと言うと、この領域は主催者さんがイベントでご飯食べてるわけじゃないので、たとえ素晴らしいイベントをやっていても、明日止めてしまう可能性があります。だったら、まず中〜大規模で入場スピードを求められる領域でうちを使って頂くことで、社会的認知度を上げ、同時にプロと一緒に仕事ができるので、プロダクトのブラッシュアップをしていこうと考えています。ただ、C to Cのマーケットを扱わないということでは全然なくて、そこにも窓口を広げつつ、営業上の戦略としては、まず中〜大規模で入場スピードを求められる領域を開拓していこうということです。

——ちなみに海外で導入されている事例はありますか?

松田:まだないです。海外はこれからです。ただ、日本のフェスに来る海外からのお客様はかなりご活用頂いているので、例えば、先週終わったトーキョー・デザイナーズ・ウィーク(TDW)もやらせて頂いていたんですが、TDWも海外のお客様が50%以上使って頂いたりしました。

——さきほど「予想よりも早く大規模な依頼が来た」とおっしゃっていましたが、eチケットもだいぶ受け入れられるようになってきたんでしょうか?

松田:そうですね。チケット業界全体が、eチケットに対して苦手意識を持たなくなってきた感じはあります。それでもeチケットに対して皆さん最初は懐疑的ですね。最初からウェルカムされたことはないです。

——でも、メリットは色々ありますよね。

松田:はい。メリットって段階的にあるじゃないですか。まず、話の入口でどこを見て、感じてくださるか。それを突破した後にまたメリットがあって、最後にメリットがあると「よしやろう」と言ってくださいます。提案型のチケット会社って今まであまりなかったみたいで、我々は常に主催者の一つ先、二つ先ぐらいの提案をできるように心がけています。

また、弊社はイベントの顧客データを開示しているので、管理画面からお客様にアプローチいただいて、また次のイベントに来ていただくようになったり、新しい記事やプロモーションがあった際にアプローチしていただければいいと思いますし、そういったことって、今まであまりされてこなかったんですよね。

——マーケティングとしても使えると。

松田:例えば、横浜FCの試合で、チケットをもぎったあとに横浜駅近くのアイリッシュパブのファーストドリンク無料券を出したら、50〜60%利用されたという事例もありますし、うちは1購入に対して複数チケットを出すということもできるので、例えば、入場券とお土産付きチケットを出すとか色々できます。

——お土産付きチケットがどれだけ使われたかとか、実際に数字が出ると、その後のイベント時にも参考になりますよね。

松田:そうですね。私は前職でデータベースマーケティングをやっていたんです。具体的にはお客様の過去履歴を集めて、お客様の未来に最適な情報を送る仕事をしていたんですが、でも、過去から未来を最適化するのではなく、確実に起こるであろう未来から未来へアプローチした方がより正確なんじゃないか? とあるときに思ったんですね。

私にとってそれがチケットだったんですよ。なぜかというとチケットはお金を払って購入した時点で、その時間に、その会場に同じ趣向の人たちが行きますよ、と約束するようなものじゃないですか。ですから、その会場の周りのクーポンだったり、待ち合わせに使うかもしれないカフェだったり、未来から未来を最適化できるんですね。ユーザーさんにとって、それも付加価値となりますし。

——tixeeは「電子もぎり」の仕組みや、支払いも口座名義だけで楽ですし、すごくシンプルで使いやすいですよね。

松田:ありがとうございます。もっともっとシンプルにしていきたいんですけどね。やれることは最大化して、追加することは最小化したいです。また、チケットの役割そのものを今後も追求していかなくてはいけないと思っています。情報の拡散やクーポンの発行などはあくまでも付随するサービスであって、チケット自体から目をそらしてしまうと見失ってしまうものも多いですから。

——チケットというところにすごく重きをおいてる?

松田:はい。そこからは絶対目をそらさないようにしたいです。

——tixeeの今後の課題は何だとお考えですか?

松田:認知度にも業界内認知度と社会内認知度の2つあると思っていまして、業界内の認知度はMr.childrenのドームツアーをやらせて頂いたり、大きめのイベントでお取り扱い頂いているので、少しずつ上がってきているとは思うんですが、ユーザーさんには全く知られていないので、今の一番の課題はその社会的認知度を上げていくことですね。ただ、tixeeのことを自信を持ってみなさんにお伝えできないと、認知度って上げられないじゃないですか? ですから、まずはプロダクトの完成度をいち早く上げて、大きい声で「『tixee』出たよ!」と言えるようにしたいですね。

tixee松田晋之介

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