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【全文掲載】サブスクの次に来るビジネスモデル、スーパーファン、スーパーリスナーとは【榎本幹朗のMusicman大学#5】

ビジネス 音楽業界

MC Tama: 今回のテーマなんですけども、「スーパーファン」「Weverse」「スーパーリスナー」「Stationhead」「サブスクの次に来るビジネス」こちらの5つをお話ししたいと思います。榎本先生、もう音楽のサブスク業界限界じゃないですか?

榎本: 今のを皆さんに説明すると、音楽サブスクってもうどんどん成長が落ちてきちゃってるんですよ。2022年は成長率、売り上げ日本だと19%ぐらいあったんだけど、今年の1月から3月はもう成長率は5%ぐらいまで落ちてきちゃってて。これ日本に限った話じゃなくて、他の先進国でも起こってて、サブスクだけじゃもう限界だぞと。実はライブももう限界にきつつあって、まあ日本はちょっと別の課題があったのでまだまだライブは伸びそうなんですけど。

榎本: じゃあどうしよう。ところでTamaさんって推しのアーティストっていらっしゃるんですか?

MC Tama: Mr.Childrenさんでしょ?BTSさんでしょ?Vaundyさんでしょ?マカロニえんぴつさんでしょ?昔からサザンオールスターズさんとかたくさんいます。

MC Tama: だけどこういったアーティストさんのCDの売り上げが落ちてきて、サブスクも頭打ち。こんな話を前回聞いて、私どうやったらその推したちをどんどん助けてあげられるんだろうって悩んだんですけど、教えてください。

榎本: はい、お答えしましょう。そのキーワードになるのが最初の「スーパーファン」ですね。スーパーファンっていうのは、例えばライブにいつも行ってあげる、CDも買ってあげる、ライブ行ったら物販も買ってあげる、ファンクラブにも入っている。こういうのをスーパーファンって言います。

今新しく出てるのはこのスーパーファン用のアプリ、スーパーファンプラットフォームって呼ばれてるんですけど、これがサブスクの次に来るんじゃないかということで、去年の1月ぐらいから世界のメジャーレーベルが進めていこうということでやってるところです。

スーパーファンプラットフォーム、何言ってんだろうと思ったと思うんですけど、その中でみんながもう注目しているアプリがあって、それが「Weverse」って言います。

MC Tama: 初めて聞きました。

榎本: はい、Weverseっていうのは簡単に言うとファンクラブってあるじゃないですか。昔だったらその月額1万円とか払ったら会報が来て、先行チケットの応募をはがきにしてってやってたんですけど、今はもうスマホの時代ですから、それをアプリでやっちゃおうと簡単に言うとね。

今だったら例えばライブ配信、あるいはその曲ができたらちょっと先にみんなに聞いてもらうっていうファンクラブ限定での先行配信、それとかチャットをみんなと楽しむ。イベントで最近人気の機能っていうのが、ファンがチャットをポストしてきますよね。それに対するリプライをボイスでつけてあげるっていう。これ皆さん喜んでくださってるんですけど、こういうのをアプリで楽しめるっていうのがウィバースです。

BTS、ENPHYPENとかBLACKPINK、 NewJeansとか、IVE、aespa、K-POP陣が先陣切ったんで多いんですけど、日本だとXG、香取慎吾さん、YOASOBI、Mrs. GREEN APPLEもWeverseを使うことになってて。これからこんなビッグネームがなると、どんどん他のアーティストさんもWeverse使ってスーパーファンを、自分のスーパーファンっていうのに、そこに課金してもらうっていう流れになっていくと思います。

大体月間のアクティブユーザーが今1000万人ぐらい。アプリのダウンロード数が1億5000万DLぐらいかな。それくらいになります。まだまだ伸びます。

例えばSpotifyっていうのは今有料会員の数が2億6800万人ぐらいなんですけど、それ考えたらまだまだ伸びるだろうと。Spotifyの次に来るビジネスモデルとして考えたら来るんじゃないかなって思ってます。

MC Tama: じゃあこのWeverseって結構覚えておいた方がいいですね。これから推し活するんだったら。

榎本: そういうWeverseでアプリでファンクラブに入るみたいな感じで、多分月額500円ぐらいなんじゃないかなと僕は予想してますけど、そういう感じで自分が推したいアーティストのところに入っておくと、ライブ以外でもちゃんとサポートしてあげられる。たとえCDがどんどん落ちていっても、そういうことができるようになる。

MC Tama: 私にもできることがあってよかった。ぜひいろんなアーティストが入ってくると思うので、推しのアーティストさんが来たら使ってあげていただければと思います。次なんですけど榎本先生、「スーパーリスナー」っていうことを聞きたいと思ったんですけども、今出てきたスーパーファンとどう違うのかっていうのがちょっとわからないんですけど。

榎本: お答えしましょう。スーパーファンって今出てきたBTSとかNewJeansとかBIGBANGとかaespaとか、グループ、いわゆる推し活動をしている皆さんの対象ってグループの方々が多いと思うんですよ。

で、さっきファンクラブ的なコンテンツとしてライブ配信とかトークイベント、オンラインのとか、そのチャットを返してあげるとか、結構コミュニケーションの能力が求められる。だけどアーティストさんって必ずしもそういうタイプだけじゃないですよね。あるいは音楽ファンってそういう風に熱烈に推すって言っても、そういう推し方だけじゃないじゃないですか。

例えば僕、ジョン・メイヤーさんとか、どっかで喋ったんですけど大好きなんですけど、別にそのジョン・メイヤーの日常についてインスタで上げた写真見たいとか、オンラインでメッセージもらいたいとか、もちろんすごい嬉しいですよ。嬉しいけど、そういうタイプのファンじゃないっていうか。大ファンなんだけど音楽でコミュニケーションを取りたい。アーティストさんもそういうタイプもいますよね。音楽で関わっていきたいファン。

こういう人たちはスーパーファンって言葉じゃカバーできないんじゃないかと。で新しく出てきてるのがその「スーパーリスナー」、熱心なリスナーさんですよね。その人の音楽をすごく聞きたい。新しい音楽出たら聞きたいし、音楽について語っていただくんだったら、それすごく聞いてみたい。そういうのを今みたいにその月額500円とかでデモを聞かせてくれるとか、新譜をちょっと2週間とか1ヶ月とか早めに聞かせてくれるとか。そんだったらちょっと払って。

MC Tama: それやばいですね、ファンとしては。

榎本: それは多分グループのファン以外、いわゆる音楽ファンもカバーできるし。あと大事なのがコミュニケーションなんですけど、Tamaさんはラジオでやってらしたからあれですけど、ミュージシャンの方、いろんなタイプの人がいらっしゃいますよね。トークも上手な人いますし、でも俺よく感じるんですけど、ものすごい不思議な回答っていうか、言葉のキャッチボールがすんごいところにボールが行くみたいな、そういう人いらっしゃいませんでした?

MC Tama: 独特の世界がありますからね、皆さんね。

榎本: いろいろと。それを裁くって結構Tamaさんみたいなプロがいて初めて成り立ってるっていうのもあるかもしれないけど、つまりそういう人はトークがしたくてアーティストになったわけじゃない。SNSでコミュニケーションを取るのが上手だからそういうファンになった、アーティストになったわけでもない。そういう人は音楽でやっぱりコミュニケーションを取りたいんで、表現ですよね。

そういう人もやりやすいのが「ステーションヘッド」っていうアプリがあって、これが今来てるんですね。

MC Tama: 榎本先生、今「Stationhead」っていう言葉が出てきたんですけど、これまた初めてのワードで何だろうと思ったんですが。

榎本: これアプリですね。どんなアプリかっていうと一言で言うとリスニングパーティーが開けるアプリです。

MC Tama: リスニングパーティー?

榎本: ビリー・アイリッシュとかテイラー・スウィフトとか、これを使ってリスニングパーティー開いてそれで火がついたんですけど、新しいアルバムができました、じゃあみんなで聴きましょうと。解禁の瞬間にファンで集まって、オンラインでライブ配信で聴いてくださいって。

今までのYouTubeとかインスタでライブ配信だと、そこに音楽つけられないんですよ。ラジオみたいに。なぜかっていうと、これややこしい話なんですけど契約上できないんです。

MC Tama: なるほど。

榎本: だからポッドキャストとかも音楽ついてないでしょ。

MC Tama: そうですね、トークだけですよね。

榎本: あれって物足りなくないですか?

MC Tama: 物足りないです。

榎本: やっぱり音楽を聞いてほしいっていうかアーティスト側としてはそうですし、ファンとしても聞きたい。どんな曲ができたんだろうとかありますよね。それが可能にしたのがステーションヘッド。

MC Tama: なんかこの、Apple MusicとSpotifyが提携してなんかステーションヘッドで音楽が聴けるようになったっていうのをちょっと小耳に挟んだんですけど当たってますか?

榎本: テイラー・スウィフトがじゃあ今から新しいアルバムの1曲目聴いてねって言って配信すると、ライブ配信で繋がってるファンがステーションヘッドを開いたまま。そのまんま、その裏側で連携してたApple Music、またはその人がSpotify使ってんだったらSpotifyで音楽が流れるんですよ。同時にみんなでバーっと。まあ10万人とか聞いてると思うんですけどね、テイラー・スウィフトぐらいだと。それ聞いて「どうだった」っていう風にテイラー・スウィフトのトークにもう一回戻っていけるっていうそういう仕組み。シンプルだけどすごく今までなかったんでできなかったんで、それができるようになっちゃったっていう。

MC Tama: ちなみに日本ではどんなアーティストが利用してるんですか?

榎本: あいみょんさんと星野源さんとNiziUさん、BE:FIRST、JO1、Hey! Say! JUMPなど。なかなか強力ですよね。これはアーティストさんが出ているのもあるし、あとこれ面白いのは、ファンの人たちが勝手にリスニングパーティーを開くっていうこともできるんで、「自分たちで開きます」って言ってファンが集まって、それでリスニングパーティーって開けるっていう。

MC Tama: すごく楽しそうですね。

榎本: 楽しいです。それこそ本当に推し活が充実してきますね。そこでみんなで「おめでとう」って感じでギフティング、投げ銭って言われますが、そういう風にしてアーティストさんにお礼というか気持ちを渡すこともできるっていう。

MC Tama: すごい、私たちファンにとってはすごく貢献できてるって感じがして。

榎本: そうですね。そういうのYouTubeとかインスタもあったんですけど、それでちょっとミュージシャンには使い勝手が悪かったんで。そもそも音楽かけられないっていうところで。だけどこれだと自然な形でそういうことができる。あとだからそのリスニングパーティー、限定の物販とか通販でやるってこともできるし、さっき言ったような月額500円のStationheadの中でデジタルのファンクラブというかチャンネルというかに入っていける。そういうのもなっていくんじゃないかなと思って。

MC Tama: このStationheadなんですけど、今全世界でどれくらいの人が利用されているんでしょうか?

榎本: 2000万ユーザーかな。まだ始まったばっかり。ファンダムの数1000組くらいかな、それくらいなんで、これから本当に伸びてくるかなという感じですね。

MC Tama: どんな影響がこれからあると思いますか?

榎本: これってなんで音楽サブスクの次のものとして大事かと。さっき言ったように音楽サブスク自体が普及が終わりつつあって頭打ちになってしまった。音楽サブスクってそもそも月額1080円ぐらい払ったら以上で終わっちゃうじゃないですか。他に推すとしたらCDとかライブとか物販だったんですけど、これってリアルですよね。ものというか体験というか。

デジタルというかソフトの部分で、CDやサブスクの上に足せるものって何かっていうときに、このスーパーファンアプリのWeverse、あるいはスーパーリスナー向けのアプリのStationheadっていうのが来てくるんですね。

どういうことかっていうと、Weverseは月額500円、年間6000円ぐらいでアーティスト単位でいわばサブスク契約するわけですよ。月額いくらっていう、アーティストさんにはそのファンが1人500円毎月払ってくれるようになるわけですよ。

音楽サブスクって1回再生されたらレコード会社にだいたい0.6円から1円ぐらい入ってくるんですね。ぐらいしか入んないんですよ。それかける印税っていうか印税契約アーティストさんと結んでるんで、かける何パーセントしかアーティストさんに入んない。なかなかしんどいんですよ、アーティストさんからすると。だけどこれはファンが直接500円払ってくれただけですごく大きいでしょ。

これはさっきのBTSさんとかYOASOBIさんとか、あとMrs. GREEN APPLEさんとか、そういった方々が日本ではそうですね、そういった方々のファンがいわゆるアーティストさんのWeverseのチャンネルというかコンテンツに月額500円とかちょっと値段まだわかんないんですけど、入っていただける。

そういう感じで直接課金できる。Stationheadだったらリスニングパーティーした時にギフティングしたり、その物販、その限定の物販を買っていただけるとか、そういう形で推していただける。

音楽全体に払う音楽サブスクの上に、アーティスト単位で払うWeverseのような月額のサブスクリプション・年額のサブスクリプションがあって、さらにステーションヘッドのような都度払いというか都度課金ですかね。その投げ銭あるいはギフティングと呼ばれている形でこう推していける。こういう風にピラミッドが作れるんです。

MC Tama: なるほど。

榎本: これが実は僕が10年以上前に「こういうふうに進みます」と言ってた未来像ですね。ようやくそれが実現しつつあるという感じですね。

MC Tama: 今日もすごい興味深い話、いろいろありがとうございます。

榎本: ありがとうございます。

MC Tama: なんか話聞いてて、私このStationheadすっごい興味持ちました。

榎本: そうですか。

MC Tama: うん。なんかこのリスニングパーティーっていうのを使って、ミュージックマンでも私のラジオ番組ができちゃうじゃんってちょっと思っちゃったんですけど。

榎本: やろうと思えばできるんですよね。

MC Tama: ですよね。だって好きな曲をかけてトークできて、みんなを巻き込むことができる。ラジオみたいなことがようやくできるようになるんですね。

榎本: これから僕も音楽メディア出身なんで、こういうのずっと出てきてほしいなと思ってたから。ぜひこういうのが出てきて田間さんみたいな方が活躍してくれたらなと思います。

MC Tama: 結局今までみたいにコミュニティFMとかそういうのを作らなくても、本当自分発信のFM番組が作れてしまう。すごいアプリですよね。

榎本: Spotifyもね、今となっちゃうもうみんなこういうもんだって分かってるんですけど、俺がその13年前に「これからSpotifyっていうものが来ます」よって時には、みんな「俺何言ってんのこいつ、何喋ってるかさっぱり分からん」みたいな、もうそんな状態だったんだけど、もう使ってみれば「こういうことね」ってなったじゃないですか。

同じようにWeverseとかStationheadみたいな、あるいはそういうのに近いアプリっていろいろ出てくると思うんですけど、使ったらわかる、すごい楽しいし。

MC Tama: これ今でももう使えるんですよね?

榎本: もう使えます。買うっていうか無料なんで、ダウンロードはもちろん無料で。ステーションヘッドは基本無料です。投げ銭やるときは有料とか、あとステーションヘッドプラスっていうのがあって、まだ日本では有料やってないんですけど、3ドルぐらい月額払うと、ちょっとさらにお楽しみコンテンツがつくみたいな。

Weverseの場合は年額とか月額でファンクラブ入るみたいな感じで入会するんですけど、とは言っても無料でダウンロードできるので、ぜひちょっと皆さん試してみていただいたらなと思います。

MC Tama: 第5回目の配信、いろいろありがとうございました。

榎本: こちらこそどうもありがとうございました。

プロフィール

榎本幹朗(えのもと・みきろう)

1974年東京生。Musicman編集長・作家・音楽産業を専門とするコンサルタント。上智大学に在学中から仕事を始め、草創期のライヴ・ストリーミング番組のディレクターとなる。ぴあに転職後、音楽配信の専門家として独立。2017年まで京都精華大学講師。寄稿先はWIRED、文藝春秋、週刊ダイヤモンド、プレジデントなど。朝日新聞、ブルームバーグに取材協力。NHK、テレビ朝日、日本テレビにゲスト出演。著書に「音楽が未来を連れてくる」「THE NEXT BIG THING スティーブ・ジョブズと日本の環太平洋創作戦記」(DU BOOKS)。『新潮』にて「AIが音楽を変える日」を連載。

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「Musicman大学」は世界の音楽業界の最新トピックスを解説。講師は『音楽が未来を連れてくる』の著者、Musicman編集長・榎本幹朗。「Talk&Songs」は月間500組ものアーティストニュースを担当するKentaが選ぶ、今聴くべき楽曲と業界人必聴のバズった曲を解説。

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