スウェーデン音楽著作権管理団体STIM、「世界初の音楽向けAIライセンス」発表

スウェーデンの音楽著作権管理団体STIMは9月9日、音楽著作権管理団体とAI企業との間で交わされた世界初のライセンス契約を締結したと発表した。
同団体は、AI企業が著作権のある音楽を合法的にシステムに学習させ、著作権使用料が作曲家に還元される新たな枠組みを開発したと説明。第三者のアトリビューション技術の使用を義務付け、ライセンスを通じて、AIモデルの訓練と生成された音楽の消費の両方で使用料が支払われる仕組みだ。
新ライセンスのもとで最初に事業を展開する企業は、ファンとクリエイターが合法的にAI楽曲を制作できるサービスを手がける同国の新興企業Songfox。同社は米Sureelのアトリビューション技術を活用し、AI出力を元の人間が作成した作品まで遡及追跡する。これにより、収益がリアルタイムで監査可能となり、AI音楽における最大の信頼性の欠如に数えられる「使用されるデータの透明性」と「クリエイターへの報酬の支払い方法」に対処する。
STIMは、最初のライセンス契約を「管理された環境下での枠組みのストレステスト」と位置付けており、明示的に参加を承諾したSTIM会員による限定された作品のみを対象としている。
(文:坂本 泉)
榎本編集長「世界初、音楽著作権管理団体とAI企業でライセンス提携。国はSpotifyの誕生したスウェーデンで、同国のSTIM(日本のJASRACに相当)とSongfox社で締結された。これまで「インターネット全体」を学習材料にしてAIは急成長してきたが、そこには当然、海賊版の著作物が含まれている。この形は確かにAIの成長を最速にしたが、学習材料となった著作物のクリエイターには還元されないブラックボックスが核になっているという弱点があった。記事にあるとおり、Songfox社の技術は学習元となった作品を遡及追跡できる、いわば「AIの透明化」を実現するものだ。現時点ではマニアックなニュースかもしれないが後世、振り返った時、AIとクリエイターが共存・反映してゆく未来への大切な転換点になる可能性がある。現状、テスト段階だが今後をウォッチしていきたい」
ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)
フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。
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