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英国、「レーベル主導」でセッション・ミュージシャンに最大40%賃上げ

ビジネス 海外

英国政府は7月22日、1年以上にわたる業界関係者との会合を経て、レガシー・アーティスト、ソングライター、セッション・ミュージシャンの報酬を改善するための「レーベル主導」の新たなイニシアチブを発表した。

核となるのは、英国レコード産業協会(BPI)が同日に発表した一連の原則で、インディペンデント音楽協会(AIM)もこれを支持。この原則は、同国の全レーベルに「推奨」されており、世界3大メジャーレコード会社の現地法人は実行を約束している。

<原則の要点>
・2000年以前の契約について前渡金の未回収分を免除(レガシー・アーティストの音楽ストリーミングからの印税受け取りを可能にする)
・ディープ・カタログ(10年以上前にリリースされた楽曲)の音源をデジタル化し、積極的にマーケティングすることで、ストリーミングプラットフォームでの発見性を高める
・古くなった契約について、より明確で迅速な再交渉の道を提供する(再交渉の問い合わせには60日以内に返信する)
・レーベル主催のライティング・キャンプへの旅費、日当、経費の払い戻しにより、新進のソングライターを支援する
・セッション・ミュージシャンに対する15〜40%の賃上げ

(文:坂本 泉)

榎本編集長「イギリスでセッション・ミュージシャンの報酬を15%〜40%上げることがBPI(日本のレコ協に相当)主導で決まった。背景には「若者のミュージシャン離れ」の深刻化。いちセッションあたりのギャラの平均で£140と最低賃金の55%増しぐらいだ。日本の最低賃金の55%増しが14,000円程度だが、毎日あるわけではないセッションの仕事がそれくらいで、セッションのない日は日雇いのバイトをやる日々では夢も希望もないからだろう。原因としてはストリーミング、DTMの普及、バンドサウンドの衰退でセッションの需要が減ったところにコロナ禍で仕事がカットされ、コロナ禍終焉以降も仕事が戻らなかったということらしい。事態を重く観た英音楽産業は組織的に賃上げを決定。ユニバ、ソニー、ワーナーなど三大メジャーの英国法人もこれに従う意向だ。他にもソングライターの支援やレガシー・カタログの潤滑なデジタル化なども決まったが詳細は記事を参照されたい」

ライター:坂本 泉(Izumi Sakamoto)

フリーランスのライター/エディター。立教大学を卒業後、国外(ロンドン/シドニー/トロント)で日系メディアやPR会社に勤務した後、帰国。イベントレポートやインタビューを中心に、カルチャーから経済まで幅広い分野の取材や執筆、編集、撮影などを行う。