JASRAC、生成AIと著作権の問題に関する基本的な考え方を発表

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日本音楽著作権協会(JASRAC)

日本音楽著作権協会(JASRAC)は、7月5日の理事会での決議に基づき、「生成AIと著作権の問題に関する基本的な考え方」をまとめ発表した。

JASRACは、クリエイターが安心して創作に専念できるよう、創造のサイクルとの調和が取れたAI利活用の枠組みの実現に向けて検討や提言を行っていくとしている。

生成AIと著作権の問題に関する基本的な考え方

1.人間の創造性を尊重し、創造のサイクルとの調和を図ることが必要

生成AIの開発・利用は、創造のサイクルとの調和の取れたものであれば、クリエイターにとっても、文化の発展にとっても有益なものとなり得る。

しかし、クリエイターの生み出した文化的所産である著作物が生成AIによって人間とは桁違いの規模・スピードで際限なく学習利用され、その結果として著作物に代替し得るAI生成物が大量に流通することになれば、創造のサイクルが破壊され、文化芸術の持続的発展を阻害することが懸念される。

2.フリーライドが容認されるとすればフェアではない

著作権法第30条の4の規定によって、営利目的の生成AI開発に伴う著作物利用についてまで原則として自由に行うことが認められるとすれば、多くのクリエイターの努力と才能と労力へのフリーライド(ただ乗り)を容認するものにほかならず、フェアではない。

そのようなAI開発事業者によるフリーライドが日本においては容認されるとする見解が散見されるため、大きな懸念を抱かざるを得ない。

3.AIには国境がないので、国際的な調和を確保すべき

政府のAI戦略会議がいうとおり、「AIには国境はなく、国際的な流通が容易であり世界中に影響を及ぼ」すので、「国際的に共通の大きな考え方・ルールの整合性」を確保していく必要がある。G7広島首脳コミュニケで掲げられた「責任あるAIの推進」「透明性の促進」といった観点から様々な課題に対処すべき。

生成AIの学習に伴う著作物の利用について、「著作物に表現された思想又は感情」の享受の目的がないという整理の下に著作権を制限する法的枠組みを持つ国はG7の中で日本だけであり、調和の観点から大きな懸念がある。

4.クリエイターの声を聴き、懸念の解消を図るべき

上記1から3までのとおり、現状では、多くのクリエイターが生成AIについて懸念を抱いている。国内の議論を充実させ、国際的な調和を図るためには、クリエイターの意見を広く丁寧に聴くことが欠かせない。

そして、世界中のクリエイターが安心して創作活動に打ち込むことができるよう、その懸念の解消を図ることが文化芸術及びコンテンツビジネスの持続的発展のために必要である。

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