ヤマハ、新興国での器楽教育普及活動7か国目となるエジプトにて日本の器楽教育を導入

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エジプト・日本学校での授業の様子(写真提供:EJS 10th of Ramadan校)

ヤマハは、11月よりエジプト国(以下、エジプト)の公立学校「エジプト・日本学校(EJS)」9校にてリコーダーを使った器楽教育を開始した。

同社は、これまで総合楽器メーカーとして、楽器を実際に演奏して学ぶ「器楽教育」のメリットを世界各地の音楽教育現場に広めてきた。その中でも2015年より新興国を中心に展開している「スクールプロジェクト」は、楽器に触れる機会に恵まれなかった子どもたちにも演奏する楽しさを知ってもらえるよう支援する取り組みで、これまでに6か国累計71万人の子どもたちに器楽学習の機会を提供し、楽器演奏を楽しむ環境づくりを支援してきた。

今回、器楽教育を導入するエジプトは、マレーシア、インドネシア、ベトナム、インド、ブラジル、アラブ首長国連邦に続き7か国目の展開国となる。

同社は、国際協力機構(JICA)との「中小企業・SDGsビジネス支援事業」における、「初等教育への日本型器楽教育導入案件化調査」(エジプト)の業務委託契約の下、2021年6月より活動を実施してきた。エジプトでは、教育関係者の間で社会性・協調性および規律性といった非認知能力の発達を課題として挙げる声があったため、現在は豊かな人間性をはぐくむ教育への転換として新カリキュラムでの教育を推進している。

その一環として、特別活動(特活)をはじめとする「日本式教育」の特徴を取り入れた公立学校「エジプト・日本学校(EJS)」を設置し、日本人の校長経験者をスーパーバイザーとするなど、非認知能力を育む日本の教育に非常に高い関心が寄せられている。今後、東京学芸大こども未来研究所とともに器楽教育を通した非認知能力の測定手法検討を経て、エジプト・日本学校全48校への展開を目指すとしている。

本活動では、持続可能な開発目標(SDGs)の目標4「質の高い教育をみんなに」と目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」への貢献とともに、器楽教育を通した子どもたちの非認知能力の育成、そしてエジプトの教育事情に寄り添った音楽の普及活動におけるビジネスモデルの策定を目指す。

JICA専門家 中島基恵氏コメント

エジプトのEJSにおいて、音楽/体育/図工といった情操教育分野の指導は、同校が実践する日本式教育の特徴の一つと捉えられています。特に音楽は、エジプトの新しいカリキュラムにおいて、4年生以上の必修科目とされたこともあり、今後高まるニーズにどのように応えていくかが、エジプト全体の大きな教育課題として認識されています。今回のヤマハ株式会社による、リコーダーを利用した器楽教育の実践は、非常に時宜を得たものとして歓迎されています。シンプルな楽器を通じて音楽に触れることは、EJSの児童にとってこれまでにない自己表現の機会でもあり、豊かな人間性を育む取り組みとして、EJSのみならず国内の教育関係者からも高い期待が寄せられています。

EJSスーパーバイザー 大辻晶子氏コメント

本事業の立ち上げでは、エジプト国の先生方の新しいものを取り入れていこうとする意欲に感銘を受けました。研修や授業を通して、文化や宗教などの違いにより、同じ音を聞いても受け止め方や感じ方が異なることが分かり、音楽の表現方法には正解が1つではないということを改めて感じました。国や環境、文化によって、人の考え方や受け止め方が違うことにも通じると思うので、様々な価値観があることへの理解を深め、お互いに認め合い尊重し合えるような教育を日本での教育でも活かしていきたいと思います。

Faisal, Suez EJS講師 Mohamed氏コメント

私にとって、リコーダーを学んだこと、演奏したこと、児童たちに教えたことは、全て初めての経験でした。しかしヤマハスタッフの研修のお陰でリコーダーを演奏することができるようになり、またリコーダーを使った授業もできるようになりました。本当に感謝しています。

小学3年児童 Ali Ibrahim Algoharyさんコメント

リコーダーの音が美しく、鳥の鳴き声に似ていて面白いです。リコーダーを演奏したり、音楽を聴いたりしながら、音楽の授業を楽しんでいます。

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