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国内外で注目を集める新鋭バンド・水中スピカの挑戦ーー東阪ワンマンツアーを経て、さらなる飛躍の年に

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ギターをタッピングしながらポップなメロディーを歌う千愛(Vo.Gt)を腕利きのメンバー達がバックアップしながら、インストゥルメンタルとロック/ポップスの架け橋になることを目指している4人組マスロックバンド、水中スピカ。2018年の結成から8年。その活動は国内だけにとどまらず、海外にも広がっている。2025年は、ほぼ1年を費やしてアメリカ、アジア、オーストラリアを回り、「MATHRHYTHM」「Soaring」という、ともにチャレンジングなシングルをリリースしたことも含め、水中スピカのキャリアの中で最も実りの多い1年になったようだ。

今回のインタビューでは前掲の2曲におけるチャレンジも含め、2025年の活動を振り返りつつ、3月に東京と大阪で開催する『水中スピカ ONE MAN TOUR 2026 “VISION”』の意気込みと、活動をさらに飛躍させようと考えている2026年の抱負をメンバー4人に語ってもらった。

挑戦を重ねた2025年。バンドのグルーヴを固めたワールドツアー

千愛(Vo.Gt)

千愛(Vo.Gt)

ーー2025年は水中スピカにとって、実りの多い1年だったと思うのですが、改めて振り返ってみていかがですか?

千愛(Vo.Gt):2025年はチャレンジの1年を掲げていたんです。バンド活動ってやっぱり金銭面も含め、リスクを伴うことがすごく多いんです。大きなツアーになるとなおさらなんですけど、そのリスクを恐れずにチャレンジしてみよう、そういう1年にしていこうと活動してきた1年でした。海外のフェスからオファーをいただくことも増えてきたんですけど、中には出演料をもらっても自分達の持ち出しになることもあるんですよ。

野口岳寿(Gt):事務所やレーベルに所属しているわけではなくて、本当にメンバー4人だけでやっているんで。

千愛:でも、そこに出演した時のプロモーションの効果や各国で水中スピカを待ってくれている人達がいることを考えて、チャレンジしてみようという気持ちで、いろいろな国に行かせていただいたのが2025年でした。

ーーオーストラリアにも行かれましたよね?

千愛:行きました。オーストラリアとタイはけっこう迷ったんですよ。費用がけっこう掛かるので、反対意見もたくさん出た中で、「いや、今年はチャレンジの1年だから行こう」と説得して、なんとか、みんな行ってみようと判断をしてくれて。

野口:採算度外視で、とにかくプロモーションの1年ってことでがんばって、いろいろな国に出向いていって、いろいろな関係を作ろうという。とにかくトライばっかりしている1年でした。

ーーそんなハイリスクハイリターンのリターンは、これからいろいろなところに結びついていくものも含めということですよね?

千愛:そうですね。未来の私達に向けて、最初の一歩は大変なこともあるけど、そこは一歩ずつやっていくしかないと思って、がんばった1年でもありました。

ーーでも、大変だった一方で、手応えもあったのではないでしょうか? ライブに対するオーディエンスの反応という意味では。

千愛:それはかなりありました。私達が想像していた以上にたくさんの方が私達を知ってくれていたので、本当に行ってよかったと思える国ばかりで。逆に、どうしてこんなに私達のことを知ってくれてるんだろうと不思議に思うぐらいたくさんの方が来てくれて、本当に実りのあるツアーばかりでした。

野口:オーストラリアの『SXSW Sydney』では、オープニングセレモニーで演奏させてもらったんですけど、たぶん僕らのことを初めて見たと思しきお客さんがすっごい盛り上がってくれて。結果、その年のベストライブアクトを受賞したんです。その時はバンドの可能性はもちろんですけど、音楽ってやっぱりすげえなぁと実感しました。それだけ世界各地を回っていると、最初はどこに行っても、出演者、関係者ともに知らない人達ばかりだったのに、後半はもう知っている人ばかりになってきて、世界規模の繋がりとか友達とか、そういう音楽の関係性っていうのはしっかり作れたのかなという手応えは得られました。

ーーその繋がりが2026年以降生かされるんじゃないか、と?

野口:そうなったらベストですね。

野口岳寿(Gt)

野口岳寿(Gt)

ーーそんなワールドツアーの中でハイライトと思える瞬間が、それぞれにあったんじゃないかと思うのですが、ひとりずつ教えていただけますか?

野口:4月、5月と中国をワンマンで回ったんですけど、それは2025年のみならず、自分のバンド人生の中で一番のハイライトでした。全公演ワンマンってことに加え、2週間ちょっとで12都市を回ったんです。だから、オフの日もその中で2〜3日なので、日程としては本当に過酷で。各会場1,000人ぐらいのところでやったんですけど、これまで日本で活動してきて、その規模感でやったことがなかったから、考えることがたくさんあった分、バンドマンとしてすごく勉強にもなったし、僕の中で得られるものはめちゃくちゃでかかったんです。

ーー中国12都市ってけっこう多いですよね。

千愛:チェンチョウとか、チンタオとか、日本人のアーティストが普段、なかなか行かないような都市まで行かせてもらったんですけど、そこにも私達のファンがいてくれて。結局、追加公演も出て、15公演ぐらいになったんですよ。

野口:苦しかったけど、めちゃくちゃ楽しかったね。

千愛:(石川)栞が入ったばかりだったから、そこでみんなのグルーヴが固まったというか、ライブしまくる感じだったので、演奏と日常生活の両方のグルーヴを上げられたんだと思います。

ーー石川さんは加入していきなりそんな過酷なツアーを体験することになったわけですね。

石川栞(Dr):そうなんですよ。バンドに入ったのが2024年の12月で、2025年の2月に日本でワンマンライブして、その後すぐ3月からアメリカと韓国に続けて行って、4月は中国ツアーっていう怒涛の日々でした。それまでそんなに連続して、それだけたくさんライブする機会ってなかったので、自分自身の成長にも繋がったことも含め、水中スピカに入ってから、貴重な体験をできてると思います。すごく楽しかったです。

石川 栞(Dr)

石川 栞(Dr)

ーーグルーヴが固まったというお話が出ましたけど、石川さんからしたら、それがあったからバンドに溶け込むこともできたというところもあるのでは?

石川:それはすごくあると思います。元々、ジャンルの近いバンドをやっていたので、音楽的にはやりやすかったですけど、やっぱり私以外の3人はもう5年ぐらいずっと一緒にやってきた仲間だから、そこに突然入るってことになって、人として合うかなとか、今までやってきた曲をうまく合わせられるかなとか… …。グルーヴの感じはやっぱり前のドラマーさんと全然違うところもあったと思うから、心配は大きかったんですけど、連続で12日間、ライブしたらだいぶグルーヴも回ってきたとように思いました。中国ツアーがあったからこそ、早く馴染めたっていうのはめっちゃあるかなと。

ーー野口さん以外の方もハイライトを教えてください。

千愛:私はやっぱりベストライブアクトのトロフィーいただいたオーストラリアの『SXSW』ですね。過去に、おとぼけビ〜バ〜さんが受賞されているんですよ。300組以上のアーティストが出ている大きいフェスでベストライブアクトに選ばれるのは1組。そこに選んでもらえるなんて、本当に光栄だし、自分達の自信にも繋がるし。自分達のバンドの評価をどこですればいいのかってやっぱりわからないんです。本当に私達のバンドっていいのかなとか、これから先やって行けるのかなとか、みんながどう思っているのか評価されることってなかなかないんですけど、そういう賞という形で、しかもトロフィーという物体としてもらえたことがすごく自信に繋がって、次のモチベーションにもすごいなったし。これからも自信を持って、続けていこうって思える1個の賞だったので、やっぱりそれが私の中での2025年のハイライトですね。潤ちゃんは?

潤(Ba):すみません、僕も『SXSW』なんですけど、僕の場合は長いツアーをずっとやってきて、それがやっと終わったっていう達成感と解放感という意味合いが強いかな。正直、完走できないんじゃないかって不安になる瞬間もあったんですけど、だからこそ、やりきったぞという達成感もあったし、終わったぞっていう解放感もあったし、無事やり遂げられてよかったってほっとした気持ちもあったし、そこからのリラックスっていうのもあったし、そういった意味でハイライトだと思います。

潤(Ba)

潤(Ba)

ーーツアー中はハプニングもあったんじゃないかと思うのですが。

千愛:小さなハプニングしかなかったんですよ。

野口:そんなに大きなものはなかったです。残念ながら(笑)。ロストバゲージもなかったし。

千愛:ちっちゃいやつはいっぱいあるんですけど、記事にならないようなしょうもないものしかない。

野口:飛行機の中でカップ麺ぶちまけたりとか。

ーーえーっ。

野口:他に何かあったかな。そうだ、中国ツアー中に1か所、そのライブハウスの建物の電圧か何かがたぶんおかしかったのか、僕のギターアンプから火花が散っちゃって、これ、ライブ中に感電するんじゃないかみたいなことはありました。ライブの前って、普通、セトリの打ち合わせとか、今日はこんな感じで演奏しようとかって話をすると思うんですけど、その時だけ僕が感電したとき、どうしようかみたいな(笑)。

ーーそれは大変ですね。

千愛:とりあえずアースを取らないといけないから、ビリビリビリってなった瞬間に蹴って、アースを落とす作戦を立てて。

野口:感電すると、人って動けなくなるんですよね。で、その人に触ってしまうと、その人も感電しちゃうから、ホントなのかどうかわからないけど、飛び蹴りしたらいいらしいです。それで、誰が飛び蹴りするか、その話し合いをライブ前にするという(笑)。結局、感電はしなかったですけど。

ーーよかった。

野口:でも、そのライブハウス、僕らがライブして確か1、2週間後に潰れたんですよ。

ーー誰か感電する事故が起きたんですかね。

千愛:騒音が問題になったらしいです。そのライブハウス、ビルの中にあって、できたばかりだったんですけど、私達のライブ、轟音でけっこう音がでかいから、クレームが来ちゃったらしくて。その後、すぐ潰れたっていうから、私達のせいなのかなって。そういうちっちゃなトラブルは、山ほどあるんですけど。

ーーいや、もう大丈夫です(笑)。おもしろいけど、これ以上聞いたら、今回のインタビュー、それだけになっちゃうんで、このへんで石川さんのハイライトを聞かせてもらってもいいでしょうか?

千愛:そっか。そうだった。

石川:私、まだ喋ってなかったです。でも、私も同じになっちゃうな。やっぱり中国ツアーかな。中国以外の海外のライブは、他のバンドさんと一緒だったりとか、フェスだったりとかがほとんどで、ワンマンで、連続でライブしたのは中国だけだったんですけど、やっぱり大変でしたね。ワンマンだから、1時間半ぐらい演奏しっぱなしで、それを4日やって、1日休んで、また4日やってみたいなスケジュールの中で、自分の体力のなさとか、メンタルとか、いろいろ壁に当たることが多くて、3回ぐらい泣きましたけど、お陰で自分がすごく強くなりました。

野口:もはや合宿ですよね。

石川:でしたね。バンドをやっていて、こんな経験ができるなんてなかなかないし、体力的にもメンタル的にも、あと、演奏面でも本当に成長できたと思うし。そういう意味で、中国ツアーがハイライトだと思います。

バンドを進化させる、新たなライブ定番曲「MATHRHYTHM」

「MATHRHYTHM」(2025年)

ーーそんなふうにワールドツアーを続けながら、10月には「MATHRHYTHM」という新曲をリリースしましたが、ツアー中、曲作りもしていたということですよね?

千愛:そうです。DAWと小型インターフェイスを持っていって、打ち込みながら作りました。

ーーつまり、ツアー中に曲を作ろうと考えていたわけですね?

千愛:そうです。

ーーなぜ、そんな大変なツアー中に曲を作ろうと?

千愛:やっぱりリリースしつづけないと忘れられちゃうと言うか、注目していた人達が離れちゃう怖さもあるんですよ。だから、常に動き続けているところを見せていかないと。特に海外にずっといる時こそ、それをやらないと。だから、SNSもちゃんと動かしたいし、新曲も届けたいしっていうのもあって、ツアーがあっても作曲活動は止められない。がんばって作ってました。

野口:海外をツアーしていると、活動がどうしてもずっとライブになっちゃうんで、Xとかインスタとかで、ライブの様子とか、こんなふうにツアーしてるよっていうのは見せられるんです。けど、バンドの進化だったり、こういう発展をしていくよという見せ方って、やっぱりリリースしかバンドの表現としてないと思うんです。ライブはどうしても既存曲を、その範囲の中で発展させるとか、ライブなりの良さを出すことになるから、未知の部分をお客さんに見せるとなると、やっぱりリリースしかないので、そこはもうがんばって、同時進行で進めようってやってました。

ーー2025年はチャレンジの1年とおっしゃっていましたが、「MATHRHYTHM」ももちろん、チャレンジングな曲だったわけですよね?

千愛:もちろんです。栞が入ってから初めてのリリースということもあって、曲を作るとき、すごい変拍子の曲にしてやろうと思ってました。せっかく入ったんだし、栞が変拍子を得意としていることを知ってたので、せっかくだからポリリズムの要素を入れつつ。でも、やりすぎると、リスナーを置いてきぼりにしちゃうので、そうならないようなわかりやすさも入れつつってできたのが「MATHRHYTHM」ですね。

野口:前のドラマーがいたとき、千愛は原案の時点で、割と変拍子を含め、ちょっと予想のつかない展開を繰り出してきて、我々3人はそこをちょっと整えていくみたいな作り方をしてたんですけど、栞に代わってからは、栞も割と千愛の側の人なんで、千愛がすごい原案を持ってきたら、さらにぶっこんでくるんですよ。こんなヤバいリズムはどうですかみたいに。だから、過去に比べて。

千愛:奇抜さは出たかもしれない。

野口:奇抜さというか、なんていうんだろう? よくわからんことになってます(笑)。より難しくなってると思います。かなり複雑になったというか。

千愛:ただ、その代わりに歌でわかりやすさを出せたらいいかなというところで、「MATHRHYTHM」を含め、最近の曲は、歌はけっこうわかりやすさ重視でつけてます。

野口:「MATHRHYTHM」のリズムは、うちらの中でもちょっとやりすぎですよね。

石川:私もそもそも変拍子とかマスロックとかがすごく好きなので、水中スピカに入って、1曲目に5拍子の曲が来たから、もううれしくて、すごい曲を作ってやろうと思って、気合を入れてやったら、ちょっとやりすぎちゃって(笑)。でも、好きな人は、すごく好きって言ってくれるんですよ。

野口:おかげでライブでやるのがすっごい難しい。

石川:そうなんですよ。5拍子で始まるから。

ーーライブでやることを想定せずに曲は作るんですか?

千愛:両パターンあるんですよ。ライブでみんなが盛り上がる曲を作ろうと思って作る時もあれば、そういうことは全然考えずに、もう我が道を行くで作っちゃう時もあって。ライブの回数を重ねるごとに、こういう展開がお客さんは好きなんだっていうのが段々わかってきたせいか、最近はそれを意識しながら作ることが増えてきました。昔はほんとにわけのわからない、耳に残りづらいメロディーやリフにしちゃうことがあったんですけど、そういうのがちょっと減ってきたっていう感じはあります。

ーー「MATHRHYTHM」は、すでにライブでやっているんですよね?

千愛:やってます。やってますけど、こんなにライブでやるのが難しいとは思わなかった。ちょっと想定外でした。

ーーお客さんの反応はいかがですか?

野口:どうなんだろう? 僕はまだ、「MATHRHYTHM」を演奏しているとき必死すぎて、お客さんの反応まで見られてない。どう?

千愛:サビに入ると、普通に大丈夫そう。サビになると、みんなちょっと表情が柔らかくなる。

:あと、アウトロになった瞬間、がーって音圧を上げると、みんな、うわーってなるから、ああいうところは「MIYAKO」でやってた盛り上がり方が曲作りに反映されてるのかなって思う。

野口:そっか。お客さんウケは、じゃあ大丈夫そうだね。

千愛:ギリギリ(笑)。<12345>という歌詞があるんですけど、それを気に入ってくれてる方がけっこう多いなという印象はあります。なので、これからもライブでやり続けたいですね。

「私達も高く飛んでいきたい」という思いを込めた「Soaring」

「Spica」(2024年)

ーーそうなると、12月にリリースした「Soaring」は、さらにチャレンジングな曲なのではないでしょうか?

野口:これまであまりなかった曲かもしれない。曲のスタートがちょっと違うんですよ。

千愛:ベースのタッピングから始まるっていう。

野口:いや、曲のスタートというのは、曲作りの話。今までは最初から最後までずっとギターリフが鳴っているところに歌を乗せたものを、千愛が持ってきて、そこにリズム隊がそれぞれにアレンジしてという作り方だったんですけど、「Soaring」は、千愛はそんなにリフを弾いてなくて、空間的な音を鳴らしてるだけなんですよ。ほわーんって。で、あとは自由につけてみたいな作り方だったんです。もちろん、リフがあるところはあるんですけど、そこがちょっと違うというか、千愛の頭の中にイメージはあるけど、それがデモではそこまではっきりとはわからなかった。

千愛:ギターがリフを弾く曲がこれまですごく多かったから、ギターリフはいったんお休みしたくて、代わりにイントロはリズム隊で埋めたかったんです。そこはもう、うちらは空間の音だけを表現するから、ベードラで何か作ってっていう。それでリズムはこんな感じでっていうことだけを伝えて、作ったのがベースのタッピングから始まるイントロです。確かに、そういう曲の作り方は新しかったかもしれないです。

野口:いつもはデモの段階で、なんとなくこんな感じの曲かなってわかるんですけど、「Soaring」はどんな曲になるか、完成するまでわからなかった。

石川:ギターがふぁ~って鳴ってるデモだけだったから。

野口:これ、どうやって曲にするのみたいな。

千愛:拍だけは決めてたんですよ。それも変拍子なんですけど、潤ちゃんと栞ならできるなと思ってました。

ーーその時点で、どんな曲なのかヒントになるような、たとえば曲のテーマとか、歌詞とかは伝えていたんですか?

千愛:全然伝えてなかったです。歌詞もコーラスもまだつけていない状態だったから。ただ、ちょっと重めの曲を作りたいっていう。それぐらいのイメージしかなくて、歌詞が付いてようやく全体像が見えてきて、やっとイメージが湧いてきた曲なんです。「MATHRHYTHM」は最初に四則演算、数字というコンセプトがあって、そこから作った曲なんですけど、「Soariing」は全然違って、中間段階も、私がぺらぺらって軽く弾いたリフがそのまま曲になってるんです。「MATHRHYTHM」が作り込んだ曲だとしたら、感性のまま作っていった曲なんで、作り方は対照的でしたね。

ーーセルフライナーノーツには、「インストを主軸に作成をし、歌に頼らず楽器に歌わせることで、みなさんの想像力の可能性にも挑戦しています」とありましたが、じゃあ作りながら自然にそういう曲になっていった?

千愛:いえ、リフを弾きながら歌うっていうのは水中スピカのコンセプトとして、1つあるんですけど、ポップになりすぎたり、歌に寄りすぎたりしないようにインストの部分を大切にしたいっていうのがやっぱり根底にはあるんですよ。楽器だけの美しさみたいなのも見せていきたいっていう。ただ、ここのところ割と歌もの、私らの中では歌ものと言える、しっかり歌っている曲が続いていたので、いやいや、私達はインストでもイケるんですっていう。そういう部分もしっかり見せられる、その要素をしっかりと含んだ曲のリリースっていうのもやっぱりしたかったので、「Soariing」を作る時はインストを主軸にっていうのは最初から考えてました。だから、歌はちょろっとだけ。

ーーなるほど。その中で、みなさんそれぞれにどんなふうにアプローチしていったんでしょうか。各パートの聴きどころを教えていただけないでしょうか?

:重めの曲って、さっき千愛が言ってましたけど、メタル的な感じでってニュアンスだったんで、いつもの指弾きをピック弾きに変えたりとか、音色も硬めにしたりとかして。逆に、その前のセクションでは音を軽くして、その後のジャーンって重さを引き立てる工夫をしましたけど、イントロはワンコードで変拍子を投げられただけだったから、何したらいいんだろうってほんと苦戦しました。あれこれ考えても、そうじゃないって言われて。

千愛:あれはオーストラリアだったっけ?

:いや、タイだった。タイでフェスに出たんですけど、千愛に楽屋に来てもらって、とにかくいろいろ弾いてみるから、ちょっとでもこれだっていうのがあったら言ってって、ずっとやりながら、ある瞬間、タッピングしたら、それだって言うから、じゃあタッピングしようってなったんですよ。あのイントロはそんなふうにできました。

千愛:潤ちゃん、その後、ぎっくり腰になっちゃったんです。

:海外でぎっくり腰ってほんとに怖かったですよ。

野口:空港で歩くの超遅かったもんね。このままじゃ飛行機に乗り遅れる。ヤバいヤバいって。

ーーそれぐらい苦労して、作ったベースアレンジだったんですね。

野口:がんばったね。栞は?

石川:今までの曲がそうだったし、マスロックってジャンルが棹隊とユニゾンして、ドラムはそこに追従するようなフレーズが多いと思うんです。けど、この曲はギターが空間を鳴らしているだけなんで、それを振られたとき、私、ギターのフレーズにドラムを付けるのすごい得意なんですけど、何してもいいよって言われて、逆にどうしようってすごく困惑しました。そういう作り方をすることが初めてで、そういう意味でも挑戦だったと思います。イントロから1分半ぐらいドラムは同じビートを刻んでるんですけど、そういうプレイに挑戦したとき、細かくいろいろ入れるのではなく、同じビートをずっと叩く中で、ドラムが作る波を感じながら作れたっていうのが自分としてはちょっと新しかったかな。あとは、イントロの次のセクションでバンって行くところがあるんですけど、潤さんがメタルって言ってたように、そこで重い感じにって言われたので、他ではあまり聴いたことがないタムのフィルを入れて、ちょっと不思議なリズムにしたので、そのフレーズは耳を傾けて、ぜひ聴いてみてほしいです。

ーー野口さんは?

野口:さっきもお話したように水中スピカはデモの段階で、いつも解像度がけっこう高めなんですけど、「Soaring」はかなり解像度が低めのところからスターとしているんですよね。それこそ何をしたらいいかわからなかったので、千愛に何したらいいのって聞いて、ここは空気の音を鳴らしてと言われたら、オッケー、ここは空気の音で。ここは私のギターに絡んでほしいって言われたら、それを考えてみたいな感じで、その都度、指示を仰ぎながら作って、全体像ができたあと、ダイナミクスを考えていきました。最初はコードをあんまり入れてなかったから、ここはコードを重ねて、どんっと行ったほうがいいなとか、逆にここはコードを減らして、軽めにしようとか考えて、そこから自分のリフをそのダイナミクスに揃えていきましたね。

千愛:タンブラーを使ったのはおもしろかったね。オウギワシが曲のコンセプトなんですけど、オウギワシが力強く飛ぶ姿をギターで表現したいと思ってたら、たまたまスタジオにタンブーラがあって。それでビヨビヨーンってやったらすごくよくて。

野口:スライドギターみたいに。

千愛:あの音、すごく好きだから、ぜひ聴いてほしいです。ライブでも再現したいんだけど、コーラスもしてるからちょっと難しいよね。

野口:そもそも、フレーズで聴かせるというよりかは、それぞれのダイナミクスの空気感で曲の構成を見せるみたいな曲なので、まだ今のところ、ライブでの正解も見つけられていないと言うか、これから成長していくんじゃないかなって感じはあります。

千愛:ライブはまだ2回しかやってないんですけど。

野口:今までとスタイルが違いすぎて、非常に難しい。

千愛:何の印もないところで、みんなで合わせなきゃいけないところが割とある曲なんですよ。クリックを聴いてたら全然合わせれるんですけど、クリックを聴かずにみんなの中にあるリズムを想像しながら、合わせなきゃいけないから、すっごい難しくて。でも、私らならできるんじゃないって言って、スタジオで初めてやったらできたんです。その時、すごい! 合わせれるんだ。これまでやってきただけのことはあるなって思ったんですけど、ライブで合わせるとなるとやっぱり難しくて。もしかしたら、お客さんは気づいてないかもしれないですけど。

野口:クリックの上に乗ってないフリーなところが多いし、BPMも曲中、めっちゃ変わるんですよ。だから、よけいライブでは難しい。でも、クリックをそろそろ導入したいけどね。クリックを入れたら、だいぶ変わるよね。楽にはなる。

千愛:あれだけグルーヴの話してたのに(笑)。

ーーでも、クリックを入れちゃうと。

千愛:そうなんですよ。型にハマっちゃうと言うか、毎回、同じライブになっちゃう。

野口:きれいになりすぎちゃうみたいなのはあるからね。クリックを入れつつ、グルーブってところは今までどおりに表現できたら最高だなと思うんですけどね。

石川:まだやったことがないから。

野口:そう。どうなるのか、やりながら掴んでいきたいですね。

ーー千愛さんはご自分のギタープレイに関しては、そんなに悩むことはなく?

千愛:そうですね。基本、イメージがいつもあるから、悩むことなくそのままボーンって演奏しているんで、「Soaring」も作りながら、このエフェクトは絶対踏みたいとか、こういう音を出したいとかっていうのをそのまま形にしていきました。

ーー他の3人に比べて、ちょっとずるいような(笑)。

千愛:すみません。意外と一番適当かもしれない。

野口:作曲者はそれでいいんですよ。ちょっと抽象的な感じでモヤモヤってしてるんだけど、他のメンバーが解像度を上げて、バンドの曲にしていくっていうのがいいと思います。

ーーなるほど。じゃあ、今回のような作り方が曲作りの方法論として、新たに加わったという感覚もあるんですか?

野口:でも、もうやりたくないよね?(笑)

:ちょっときついよね。楽しかった?

石川:はい。大変でしたけど。

千愛:潤ちゃんと野口はもうやりたくないんだ?

野口:やりたくなくはないけど、次またこれだったらきついな(笑)。

石川:でも、スピカの新たな面を見せられた気がして。

野口:確かに雰囲気はだいぶ変わるもんね。

石川:今まで曲の作り方はずっと一緒だったと思うんですけど、そこを変えてみるっていうのは良かったかな。

野口:確かにな。曲の雰囲気が変わるのは、いいっちゃいいよね。

ーーオウギワシというモチーフはどこで見つけたんですか?

千愛:最初は、とりあえず強い鳥をイメージして、強い鳥って誰がいるんだろうってなったとき、いろいろいるんですけど、やっぱりワシでしたね。羽根を広げると、すっごいでかいんですよ。2メートルぐらいになる。飛ぶのもめっちゃ速いし、どんな環境でも飛んでいけるしってわかったとき、これだと思いました。だから歌詞を書く時は、オウギワシの強さをそのまま文字に起こしました。私、オウギワシに憧れちゃって、めっちゃ強いし、空を飛べるし、私もオウギワシになりたいなと思って、そこに人間の持つ能力も絡めながら、歌詞にしていきました。

ーー<弱さと書いた雲を裂き>という歌詞がありますが、そう思う瞬間があったんですか?

千愛:水中スピカのリスナーって、辛い時期だったりとか、悲しい記憶だったりとかを持ちながら、強く生きようとがんばっている人がすごく多いんです。そういう人達の支えになりたいって思うことが最近すごく多くて。だから、オウギワシになろうっていう思いを持てば強くなれるんだよ。弱いところがあっても、オウギワシになれば、それを割いて強くなっていけるんだよっていう歌詞を書いてみました。

ーータイトルの「Soaring」という言葉には、高く舞い上がるという意味もありますが、バンドの願望もそこには込められているんでしょうか?

千愛:はい。私達も高く飛んでいきたいという思いを込めています。低空飛行ではなくて、強く舞い上がって、でも、それはふわっとしているのではなく、高いところでぐんってオウギワシのような力強い羽根で飛んでいきたいんです。もちろん、それは揺るぎない信念を持ちながらというか、インストとポップを結ぶ架け橋になりたいってずっと言ってるんですけど、その根底が揺るがない、強い意志をちゃんと持ったまま、水中スピカの世界観をどんな環境になったとしても崩さずに強く生きたい、このスタイルで行きたいという考えは変えずにっていうのが大切なんですけど。

野口:歌詞が決まった後、タイトルが決まったんだよね。

千愛:「Soaring」はそうでしたね。

野口:タイトルを決める会議を、車の中でめっちゃしたんですけど、曲のイメージとか、歌詞とかから、「Soaring」以外ないんじゃないかなって全員しっくり来たんです。

千愛:最初は「オウギワシ」だったんです。でも、そのまますぎるってなって。

野口:僕ら、「Shoebill」って曲があるんですけど、ハシビロコウって意味なんです。だから、これで「オウギワシ」にしちゃと、鳥の名前の曲が2曲になって、めっちゃ鳥好きやんっていう(笑)。

千愛:でも、確かに鳥って、それぞれにいろいろな特性や性格を持ってるから。

野口:実際、鳥好きだよね?(笑)

千愛:「Shoebill」は「Shoebill」で、やっぱりいいなと思うところがあって、揺るがずにそこにずっと黙ったまま立っている姿に信念を感じるんですよ。

いよいよ開催、東大阪ワンマンツアーへ。
2026年は「さらなる出会いを増やしたい」

ーーチャレンジングな1年だった2025年の最後にリリースした「Soaring」は、これまでで最もチャレンジングな曲だったわけですが、そんな2025年を2026年はさらに飛躍させていこうと考えていらっしゃると思います。2026年はどんなふうに活動していこうと考えているんですか?

千愛:現在は3月の東阪ワンマンツアーと、2月にリリースするシングルに向けて走っています。そのシングルはさらにまた挑戦した曲になっていて。

野口:千愛がギターを弾いていないという。

千愛:そうなんです。ピアノを弾いているんです。水中スピカらしさはありつつ、新たな挑戦をしているので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。

ーー最後に、2026年の抱負を聞かせてください。

:2026年は日本での活躍の場を広げていきたいです。2025年は海外でいろいろな経験をさせてもらいましたけど、そこで培ったものを、まだ日本ではあまり見せられていないので、まずは3月のワンマンツアーから日本のお客さんに2025年の成長を見せたいというのが1つ。それともう1つ、うちらのことを知らない日本の音楽ファンに向けて、いろいろなフェスに出て、うちらの存在をアピールできたらなと思っています。

石川:私は曲作りの面で、今作っているピアノ曲とか、「Soaring」もそうですけど、もっといろいろな切り口から、スピカの可能性を広げていきたいなって思ってます。その根底にあるスピカのスタイルを貫きつつ、本当にいろいろなことをやりながら、もっとスピカの魅力をたくさん出していけたらいいなと思っています。

野口:僕も2026年は制作をがんばりたいと思ってます。もちろん、ライブ活動もがんばりつつですけど。2025年はどちらかと言うと、制作と言うよりかはライブだったので、2026年は制作で新しい姿を見せていけたらと思って、気合を入れていきます。

ーーでは、千愛さん、最後にお願いします。

千愛:みんなの言う通りだと思うんですけど、制作という意味では、私の中で、こういう曲を作りたいというのが何個かあるので、それを形にしたいです。やっぱりツアーしていると、じっくり作曲できる時間ってなかなかなかったりするので、今、自分が思い描いてる、作りたい曲を形にすることと、2026年はさらなる出会いを増やしたいと思っています。2025年は、今まで水中スピカのこと知らなかったけど、めっちゃいいじゃんって声をすごく耳にしたんですよ。だったら、そんなふうに知ってもらうキッカケを工夫して作っていこうと。2025年は現地に行って、ライブをやって、聴いてもらってましたけど、2026年は日本にいながら、頭を使ったプロモーションをもっとやっていけたらいいかな。そういう1年にしたいですね。

取材・文=山口智男 撮影=大橋祐希

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